第17話 とある選抜にて
マジカルサバイバル。
各校の代表者30名が創造されたフィールド内で行うサバイバルゲーム。魔力や体力はそのままにプレイヤーは異空間の中、魔法によってつくられた自分の分身で意識だけを持って戦う。そのためどれだけ危険な攻撃をしてもけがをするリスクがなく、試合続行不可能な攻撃を受けたり魔力切れを起こしたりするとゲームオーバーとなり現実世界に戻される。使用不可な魔法も武器もない。他校の守る旗を取るか全滅させて生き残った学校が勝利する。
この異様な競技にライデンは歓喜し、あとの2校は唖然とした。
他の2校がいつもお行儀よく机に座って勉強している間、ライデンの生徒は常に禁術や殺傷レベルSの魔法をこっそり習得している。なけなしの倫理観と親に怒られるという理性から人に向けたり公共の場で展開したりする者はいないが、彼らはなんたって思春期真っ只中。本当はその魔法を見せびらかして女の子に褒められたいし、周りから自分は天才だと認めさせてやりたい。絶対に口には出さないけれど。
この競技はそんなライデン生にとって渡りに船であった。ものすごく高度な魔法を決めて周りを驚かせてやりたい。その上で自分はすました顔で、「普通じゃね?」と言うのだ。
見に来る聖騎士や企業へのアピールの場だから、という建前の下多くの生徒がそう夢見ていた。実にしょーもない。けれどそれでいいのだ。だって彼らはまだただのティーンの男の子なのだから。
しかし、現実は甘くない。各校30人と言う定員がある以上、出場できるのは選ばれし実力者だけ。皆その30人に入るべく、選抜試験に向けて特訓を積んだ。それはもう真面目に。
教師たちはこの期間、問題を起こす生徒が居なさ過ぎてストレスのはけ口がないと嘆いていた。
「今日も精が出るわね」
「当たり前じゃん。兄貴たちも見に来るし」
「2人は練習しないのか?」
「あぁ。俺たちは選抜試験も受けないしな」
「え、なんで?」
「魔法は苦手だって言ったでしょ?」
特訓に付き合うくらいはしてあげるから、とシャーロットはレイモンドが魔法で出した椅子に腰かけた。髪色から察するにシャーロットはともかくレイモンドが出ない理由が分からないと心の中でため息をつきながらも2人は早速練習を始める。
マジカルサバイバルのメンバーに選ばれるためには自分たちよりはるかに魔法の研鑽を積んできた上級生たちよりも自分が優れていることを証明しなければならない。より高度な魔法をより広範囲に。演習場に強力な防護魔法が使われているのをいいことに2人は有名な大魔法を片っ端から試していく。
「……それじゃあ無理だと思うぞ」
防護魔法のおかげで被害こそ出ていないものの、一向に成功する気配はなくとても選抜試験では使えない出来の魔法を見てついにレイモンドが口を挟んだ。
「じゃあどうしろって言うのさ」
「大魔法って言うのはね、緻密なコントロールとそれに見合う魔素量、そして想像力の強さが揃って初めて成功するものなの。基礎が出来ていないのに成功するなんて奇跡は起こらないわ」
「苦手な割には随分言うな。是非ご教授願いたいくらい」
「任せて?教えるのは得意なの」
ルカの皮肉を諸共せずシャーロットが取り出したのは手のひらサイズの小さなカラーコーンだった。赤色のそれは数十個が5つに分けて重ねられている。
「これを魔法で1列に並べて頂戴?」
「これを?」
「出来ないの?」
魔法の中でも基本中の基本である浮遊魔法を今更使えと言うシャーロットにアドラーは不満そうに溢した。バカにしているのかと言わんばかりにルカは黙って杖を振りカラーコーンを並べた。
「これでいいか?」
「10点」
「……は?」
「これでもかなり甘い方よ。カラーコーン同士の間隔はバラバラ。それに最初のコーンの位置と最後のコーンまでに間のコーンがズレてはみ出してる。全然真っ直ぐじゃない。」
シャーロットは右手を軽く上げてレイモンドに指示を出す。それを受けたレイモンドは杖をかざしアドラーの並べたコーンを並べなおした。
「いくつのコーンを何センチの間隔で何メートルの範囲にわたって配置するのか。真っ直ぐ並べるためにどこを基準に揃えるのか。そういうことを自分で決めてそうなるように魔力の縄をコーンに向けて掛けるイメージで魔法を掛ける」
等間隔で美しく並べられたコーンを前にルカとアドラーは驚嘆の声を上げた。
「これが正しい想像力と魔法の使い方よ」
「これだけ出来て苦手とかよく言うよ」
「俺は別に苦手じゃないぞ。興味がないからエントリーはしないけど」
「そっちの方がムカつくわ」




