第15話 とある寮長会議にて
1年生が入学して早1ヶ月。ようやくルカたちの寮出入り禁止令が解かれ、2人は第2寮へと戻った。入学当初は揉め事や事件が多かったライデンもやっと落ち着きを見せ始め、それぞれが平穏な学園生活を謳歌していたころ。1つのニュースが学園中を駆け巡った。
「あの2人が寮長会議に乱入したって?」
「あのモノクロコンビが?」
「だってあいつら前頭葉ねーもん」
「どんだけ怖いもの知らずなんだよ」
「あり得ねぇ。俺あの1年怖い」
昼時の食堂ではその話でもちきりだった。
「モノクロコンビってもしかしなくてもシャルとレイのことだよね?」
「だよな。でも流石にそんなことするか?」
食堂でその話の張本人を待っていたアドラーとルカは驚きを隠せなかった。確かにあの二人は変わったところがあるが、あの一件以来問題を起こすことは無く、人当たりも良いため髪の色や寮を見て最初は毛嫌いしていた連中も今では割と好意的だったりする。最も髪色に関して言わなくなったのは、シャーロットの髪色を馬鹿にするとレイモンドが恐ろしく冷たい目をして杖を構えるのが原因でもあるが。
とはいえそんな二人が寮長会議に乱入するなんてことがあり得るのか。
寮長会議と言えば、学園を動かす最高意思決定機関だ。出席者は各寮の寮長副寮長と学園長。この学園は実力主義放置主義なので、寮長は各寮の実力トップ。そして実際に学園を動かす存在でもある。寮長会議で決まったことは絶対。他の寮生が覆すことは許されない。もちろん乱入なんてもっての外。
「お疲れ様ー。席とってくれてありがとう」
「あ、うん」
トレーを持った二人がこちらにやって来る。痛いほどの視線を気にも留めず、二人はそれぞれ彼らの隣に腰掛けた。
「どうかしたか?」
そう尋ねるレイモンドに2人は気まずそうに目を合わせた。
「実は……2人が寮長会議に乱入したって聞いて」
流石に嘘に決まってるよな、とルカは笑った。
「乱入?寮長会議には行ってきたけど」
「「えぇ!?」」
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部屋の中央には大きな円卓。そこに並べられた5つの椅子。向かって正面に座った学園長から順に第1寮から各寮長が座り、その右隣には副寮長が控えていた。そして1つしかない出入り口には各寮から持ち回りで2人が門番として立っている。
「じゃあこれから寮長会議を始めるわね。今回の議題は来月の3校戦についてよ。今年は実行委員がウチだから……」
「競技内容だろ?適当に玉入れとかで良いじゃねぇか」
「異議なし」
「解散だね解散」
寮長とは言え、ライデン生。曲者ぞろいの彼らがまじめに会議を行ったことなどほとんどない。
自分の寮の運営さえできていればそれでよいので。
やる気など欠片もない彼らが席を立とうとしたその時。
「御機嫌よう。寮長の皆さん?」
バンッと開いたドアからは白い髪を靡かせた女が入ってきた。そして黒髪の男が続く。直接話したことこそないがここにいるすべての人間が彼らを認識していた。今年から出来た謎の多い第0寮。そしてそこのたった2人の寮生。
「ここは部外者立ち入り禁止だぞ?」
夏の寮長が落ち着いた声でにこやかに言う。しかしその笑顔の中でも目だけは笑っておらずそれを見た門番は慌てて彼女たちを外へ出そうとする。だが2人は1歩たりとも動くことは無く、堂々とそこに立っていた。
「私たちは第0寮の寮長と副寮長ですよ?部外者どころが呼ばれていないことに驚いているくらい」
「ふーん、一理あるわね」
学園長がそう言うと同時にレイモンドは杖を振り円卓の空いている場所に他と同じような椅子を出した。一度見ただけで細部まで同じものを咄嗟に作り出すにはとても高度な技術と経験を要する。その実力に寮長をはじめとした生徒たちは静かに驚きの声を上げた。
「……で?ただ遊びに来たわけじゃないでしょう?」
腰掛けたシャーロットに学園長が尋ねる。シャーロットは勿論、と長い脚を交差した。
「来月の3校戦についてですよ。その話をしてたんでしょう?魔法魔術学校序列1位のルミナスアカデミー、3位のアンドールアカデミー、そして2位であるこのライデンカレッジの3校で毎年行われる伝統行事。種目は毎年持ち回りで選ばれた学校が決定し、チーム競技でありさえすれば決まりはない。……とはいえ実際は毎年適当。綱引きや大玉転がし、玉入れの繰り返し。そして順位もいつも同じ。私たちはいつも2位。ルミナスには勝てない」
と、聞きました。シャーロットが笑う。
そもそもこの競技会は将来の魔法界を担う若者の交流が目的であり、リスクの高い魔法競技を避けエレメンタリースクールの子供たちがやるようなつまらない競技を繰り返している。
「つまらない上にいつもルミナスに負ける。そんなの時間の無駄でしょう?」
いつもここで負けることがうちが序列2位の所以でもあるのでしょう?
勿論序列が2位なのは、優秀な者と同じくらい犯罪者や退学者が続出していることが大きな原因であるが。そもそも単純な魔法力や偏差値で言えばむしろライデンの方が上である。それなのにいつも3校戦で負けるのは、得意な魔法を使えない競技であることと、そして何より生徒たちに1ミリも協調性がないことが原因であった。
「ルミナスに大きな顔され続けて腹が立ちませんか?……そこで新しい競技を提案しに来ました」




