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第11話 とある遠足にて

「これより1年次の遠足を執り行う!」


講堂に集められた1年生に向かってマーフィーは声を張り上げた。

遠足。それは主に生徒同士の交流を目的として校外へ出かける日帰り旅行のこと。その多くは遊園地や水族館、バーベキューといった楽しいものであるが、ライデンカレッジでは大きく意味が異なる。

各学年の最初に行われるこの遠足は、魔法の技術だけではなく精神力や体力、知力と言ったものが試されるれっきとした課題である。学年が上がるごとにその難易度も上がり、危険度も増す。

普段授業に出席せず問題ばかり起こしているライデン生が卒業後においてエリートでいられるのはこの遠足と学年末試験のおかげと言ってもいい。


とはいえ負傷者の多いこの行事はPTAやらメディアやらなんやら批判が多いが、教師陣は「生徒の能力を飛躍的に上げる効果がある」とどんな問題を起こしても毎年しっかり開催されている。

ちなみにこれらの映像を見ながら教師たちが酒を酌み交わしていることは上級生には周知の事実である。

しかし生徒を成長させるのも本当で、一学年違うだけでもこの行事の影響で実践においては大きな差が生まれている。


「ロボットぶっ倒すやつだろ?」

「ノルマは1人10体だっけ?」

「破壊魔法使えば楽勝じゃん」


恒例の行事ともなれば先輩から情報が流れてくるのは当然で、上級生の中には攻略法を書いて売りさばいている者も存在する。

しかし、OBである教師たちにはそんな生徒の考えはお見通しなわけで。


「例年はな。今年から内容を一新する!」


マーフィーは勝ち誇った表情で叫んだ。


「は?なんで?」

「いらんとこでやる気出すなよ」

「性格悪、絶対あいつらすぐ女に逃げられてる」


困惑と不満を浮かべる生徒たちに向かってマーフィーをはじめとした教師陣はご機嫌だ。


「なぜなら去年けが人も脱落者もゼロになったからな!」

「あいつら遠足知らないんじゃない?」

「わかる、絶対いじめられて参加してないわ」

「けが人ゼロで変更する遠足ってなに」


安全に追われたのならそれでいいではないか。

理不尽な理由に生徒たちは声を上げるが彼らには全く届いていない。


「ルールはシンプル。今からお前たちをある屋敷に転送する。制限時間内に出口を見つけてここまで戻ってこい。ちなみにこれは必修単位なので、クリアできなかった者に関しては後日2万字のレポートを提出するように」


幸運を祈る


有無を言わせる間もなく、教師たちは杖を振って生徒たちを転送した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「すごいおっきい家ー」


アドラーはきょろきょろと周囲を見回した。

全員が転送されたのは大広間。中央の柱は砂時計になっている。説明は無かったがおそらくこれが制限時間を示しているのだろう。

生徒たちはそれぞれグループや個人に分かれて屋敷を探索し始めた。

我先にと大広間からはどんどんと人がいなくなり、残ったのは4人だけ。


「さて、仕事しましょうか」

「そうだな」

「それにしても本当に鏡だらけだな」


大広間をでるとそこは鏡が大量に並んだ空間。

ミラーハウス。

ライデンカレッジ100期生ミラー・ボイスがこの遠足のために設計した屋敷。彼は在学時春の副寮長を務め、現在では映画の演出をする傍ら超有名建築家として名を馳せている。一体学園はいくら積んだのか。

鏡には異界に繋がる魔法が掛かっており、1000以上の異界に行くことが出来る。またそれは現実の場所であったり、完全にミラーが作り上げた場所であったりと現実と非現実が入り混じっているらしい。


「おそらく出口は大広間の奥の大扉でしょうね」

「見た感じあれは呪文で開くタイプだな。この屋敷の中でヒントを頼りに呪文を見つけて脱出するってことか」

「試されてるのは異空間と現実を見分ける観察眼と判断能力、あとは単純に謎解き能力ってとこかしら」

「よくこの時間でそこまで分かるな」


シャーロットとレイモンドの推察にルカは感心する。

少なくとも自分たちがもらっていた情報なんて微々たるものだったというのに。


「1年生の課題ならそんなものでしょ?」


シャーロットはそう言いながら一つ目の鏡に足を踏み入れた。


「そんなテキトーに選んでいいわけ?」


アドラーの疑問にシャーロットが答える。


「間取りすら教えてもらえてないんだからとりあえず行ってみるしかないでしょ?」


シャーロットに続いてレイモンドとルカ、そしてアドラーも鏡の中に足を踏み入れた。


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