#1997 〈万界ダン〉11層は〈楠玉の遺跡ダンジョン〉
「ではここでよく知る人たちに聞いてみよう! 〈楠玉の遺跡ダンジョン〉とはいったいどういうダンジョンなのか!? はい、そこのラウ!」
「俺か? そうだな。特徴はなんと言ってもこのクス玉だろう。遺跡であるのにクス玉が至る所にあって、これが開くとランダムに何かが落ちてくる。それはモンスターだったり、罠だったり、毒だったりと様々だ」
「良い説明だ! このダンジョンの特徴をしっかり捉えているな!」
俺が急にラウに振れば、ラウはちょっと戸惑った様子なれどしっかりと分かりやすく説明してくれた。さすがは年長者。
俺の視界の端でエリサとフィナはささっと誰かの後ろに隠れた気がしたが、俺はそれには気が付かないのだった。
「ラウの言う通りだ。つまりだ、ここはトラップ型のダンジョンなんだ。モンスターも徘徊しているが比較的少なくて、クス玉の中から登場するモンスターで帳尻を合わせているイメージ。【罠師】、『罠突破』や『罠破壊』、『罠解除』を持っていると特効で、かなり攻略がしやすいというダンジョンだな」
「あ、ああ! もしかして私、ここの攻略のためにスカウトされたのかな?」
「それもあるな。もちろんメインは上級や最上級だったが」
カイリがトラップダンジョンと聞いてハッとしていた。つまりここは斥候が輝くダンジョン。中級を攻略していたときあまり出番の無かったカイリだったが、こういうダンジョンを攻略していればしっかり輝いていたはずだったんだ。
ゲームとは違って人がいっぱいいすぎてトラップがほとんど獲り尽くされているという……コンセプトどこに消えた? というダンジョンに変貌していなければ、カイリはここで大活躍していただろう。
そう、なぜ中級下位の〈楠玉の遺跡ダンジョン〉が学生に大人気だったのか?
それは――トラップ無しのトラップダンジョンだったからなんだ!!
なにそれ悲しすぎる。
そうみんなにも伝えた。
「ということは、ここは他に人なんて入ってないから」
「罠がたくさんある、ってこと、です!」
ノエルとラクリッテが辺りを見渡してちょっと警戒したような声を出していた。
そのとおり、ここはトラップが獲り尽くされているということもないので、トラップ増し増しの、いや通常状態のダンジョンだな。うむ。
「中級下位なら数少ないトラップも目視で見えるものだからそこには近づかず、あとで〈罠外課〉の学生が回収にくるが、最上級ではそんなこともない、か」
ラウが遠い目をしているな。
どうやら中級下位の〈楠玉の遺跡ダンジョン〉では学生間の暗黙のルールやら思い出が、色々あった模様だ。
今度聞かせてもらおうっと!
「ちなみに中級下位で一番難易度が低いとみなされているのはそれだけじゃないぞ?」
「なに?」
それだったら〈万界ダン〉の11層、つまりは中級下位の追想のトップバッターで出てくる訳ないし。
つまり素の状態でも中級下位で一番難易度が低いと設定されているのだ。その理由だが、報酬にある。
「〈楠玉の遺跡ダンジョン〉の〈クス玉〉は別名くすりだまの〈薬玉〉とも呼ばれていてな。その名の通り実はここ、トラップだけじゃなくて薬、つまり〈ポーション〉類も入っていることがあるんだよ」
「え?」
「なに?」
「はい?」
俺の言葉はそれなりに多くのメンバーが初耳だったようで唖然としていたんだ。
「クス玉の中身な、トラップも多いが、たまに〈ポーション〉類が入っていてそれも良い収入になるんだ。つまり、クス玉はランダム要素の高い宝箱という見方ができるわけだ」
「「「「…………」」」」
それを聞いたところでみんな一斉に黙り込み、そして〈楠玉の遺跡ダンジョン〉を攻略したことのある面々が一斉に集まって騒ぎ出した。
「あの〈罠外課〉の先輩、知ってやがったんだな!」
「私たちに『罠の解除は俺たちに任せてくれ、キラッ!』とか言っていたのに!」
「〈ポーション〉のことを話すと〈罠外課〉の収入源であるここのトラップに、他の学生たちが一斉にハマりにいってしまうのでしょうけれど、恩着せがましいにもほどがありますね」
「な、なんだか損した気分になったぜ……!」
ラウ、エリサ、フィナ、ゼルレカなど、〈楠玉の遺跡ダンジョン〉で〈罠外課〉と連携し、トラップを譲ったメンバーは多いらしい。
そのトラップが実は宝箱だったかも。と言われれば憤る気持ちも分からんではないな。
つまり本来は、たまにポーションが出て回復できるので、比較的攻略のしやすいダンジョンだったわけだ。中級下位の〈楠玉の遺跡ダンジョン〉は。
「なんでそんな裏情報知ってるのよ?」
「勇者だからな!」
「…………」
おっと、久しぶりに語りたい勇者症候群が出てしまったようだ。
シエラがジト目だ! やったー!
語るの、とても楽しいです!
「それじゃあまずは私たちが行くわ!」
「よ、それでこそ姉さまです。結界を掛けておきますから心置きなくどうぞ――『ミカエルの聖法』!」
「フィナちゃんも行くのよ!」
自らクス玉に引っかかりに行くことを決意するメンバーズがいるな。引っかかってもまあ防御スキルがあるから大丈夫だろう。
「きゃー!」
「姉さま~」
早速クス玉がパンパカパーン(幻聴)と開き、降ってきた爆弾トラップによってフィナの結界に守られたエリサが爆撃されてるな。しかし、フィナのセリフが緩いんだぜ。
もちろんエリサは無傷だった。
「あーもうびっくりしたわ!」
「姉さま、次はあれです」
「フィナちゃんお姉ちゃんに厳しくない!?」
こうして何人かで手当たり次第にクス玉を発動させまくる。
当たれば最上級ポーションが手に入る可能性があると聞いてやる気なメンバーも多いな。
「出たわー!」
「『解析』です。これ、〈熱聖アルティメットエリクシール〉ですよ姉さま」
「ああ! HP回復と〈毒〉〈火傷〉に対する耐性を得られる〈アルティメットエリクシール〉じゃない! ハズレだわ!」
「お?」
早速出たな。
最上級のHP回復アイテムである〈アルティメットエリクシール〉に〈毒〉と〈火傷〉に対する耐性付与をプラスした効果を持つ、〈熱聖アルティメットエリクシール〉だ。ハンナブランドで作れてしまうな。当然ハンナ作製の方が効果が高い。
その後もじゃんじゃんツモっていったが、残念ながらどれもレシピをゲット済みの薬だった。ならば、ハンナブランドの方が優秀である。
「おかしいわね。フィールドの10分の1のトラップにわざと掛かったのに、有用なものが無かったわ」
「ここのダンジョンは殲滅ですね」
あんなに爆撃されたのにと黄昏れるエリサに、姉さまをこんなに危険にさらすダンジョンなんて許せない、と言わんばかりに憤るフィナ。おかしいな、フィナが行かせたような気がしたが、気のせいだっただろうか?
その時である。
「マーリモーーーーーーーーー!!」
「『エリアボス探知』! エリアボス、来るよ!」
「ボスが大量のクス玉を持ってきたぞー!」
「『看破』! これは――希少ボス〈くす玉売りの爆砕者・クスクスジバックン〉です!」
「名前が物騒だよ!?」
「爆砕で自爆してるですの!?」
ここでエリアボスの登場だ。
早速カグヤとサーシャのツッコミが冴える。
姿を現したそいつは、身体に大量のクス玉をくっつけた、10メートルを超えるマリモみたいな丸い植物型モンスターである。
「気をつけろ! こいつはおそらく元〈楠玉の遺跡ダンジョン〉のレアボス、〈クスクスジバックン〉、通称〈クス爆〉の最終進化系だ! 身体に着いているクス玉に宝箱要素はない。全て爆発するぞ!」
「攻撃したら爆発するってこと!?」
「迂闊に近寄れないです!?」
まるでダイナマイトを身に着けたどこぞの映画のようなボスだ。
しかもこのクス玉を普通に発射してくるし、自分で生み出すのでなくならないというおまけ付きである。
「大丈夫よ。近づいたら危ないなら、近づかなければ良いのよ! 『大聖女の祈りは癒しの力』! 『大聖光の無限宝剣』!」
「「「あ」」」
「マーリモーーーーーーー!?!?!?」
先制攻撃、ラナの超超遠距離砲。
いつの間にか〈白の玉座〉に座ったラナが、大量の宝剣を放って沈めていたんだ。
遠くで起こる大爆発。
きっとクス玉に命中してしまったのだろう。
俺は、なぜかそれに敬礼したくなった。
「マーリモーーーーーーーーー!!」
「あ、生きてたわ!」
「しぶといですね。いきますよ!」
「私たちの出番だね!」
「8班、いっきまーす!」
「遠距離攻撃なら任せてね」
3パーティ推奨ボスだったのでラナの3班の他に8班のエリサ、フィナ、サチ、エミ、ユウカが参加。
加えてキキョウ、アリス、サーシャ、カグヤ、トモヨの7班も参加して一気に遠距離攻撃でボスを圧倒していたよ。
なんか、ほとんどラナが無双していたな。
宝箱は希少ボスなので〈金箱〉!
中身は――爆弾系レシピが2つも当たったよ! これはレンカ先輩のお土産にしよう。
この蹴ったら爆発するマリモ爆弾を量産するのだ!
「さあ、ポーションもしょぼいしここにはもう用は無いわ! 12層にいきましょう!」
「さらばだ〈楠玉の遺跡ダンジョン〉の追想!」
俺は静かに敬礼して、11層を後にした。
次に待ち受ける12層は――〈三本の木橋ダンジョン〉だ。落ちてもHPが仕事するので大丈夫な橋のダンジョンである。




