#1990 突如イベント発生!時間制限付き守護型ボス戦
「カイリ、エリアボスはどこにいる感じだ?」
「それが反応無いんだよね……」
ここに到着するまでの道中、俺たちは各階層でエリアボスとエンカウントした。
一部〈フルート〉で呼んで逃がさないようにしたような気がしなくもなかったが、とりあえず6層から9層まで4体のエリアボスを撃破している。
なら10層でも? と思うのは不思議ではないだろう。
ここは守護型ボスがいる階層のため、〈エリアボス参戦現象〉が起きてからでは少し厄介だ。ということで先にエリアボスを倒しておくのは5層毎のセオリー。
しかし、カイリの『エリアボス探知』に引っかからないという。
だが、俺たちには奥の手があるのだ。
「〈超ボス探知アンテナ〉を使ってみるよ! 『エリアボス探知』!」
そう、カイリが頭に装着したアホ毛だ!
カイリが頭に着けてスキルを使えば光り、ビビンと伸びてボス的な何かを受信する。
見た目が大変良き! この形でOKした俺の目に狂いは無かった。(クルクルしてます)
これで隠れているエリアボスの居場所も丸裸である。
「あ、みっけ! これは、地中に埋まってるね」
「お?」
カイリのスキルが〈竜の箱庭〉に反映され、三次元的な地図に投影された。
するとそこには10メートル級のキノコが傘だけ地表に出して身体は地面に埋まっているという、どこかの〈サボッテンダー〉を思わせる形態で身を潜めるエリアボスがいたんだ。
「これは、遭遇型かな? 動けないみたいだけど?」
「ということは、そのまま守護型に挑んでも問題ないということですわね」
エリアボスには色々タイプがある。プレイヤーの気配を感じて遠くからでも襲い掛かってくる襲撃型や、普通にフィールドを跋扈していて遭遇したときのみ戦闘になる遭遇型などだ。
遭遇型は襲い掛かるタイプじゃないので〈エリアボス参戦現象〉は比較的起こりづらいとすでに分かっている。しかも跋扈しないタイプなら尚のこと〈エリアボス参戦現象〉は起こらないので、エリアボスを撃破してない状態で守護型ボスに挑んでも大丈夫だ。
「結構奥の方にいますわね。――ゼフィルスさん、今回はスルーしようと思うのですがいかがでしょうか?」
「リーナたちに任せるよ」
エリアボスが居るのは洞窟のかなり奥の方で、階層門のある方とはかなり距離がある。こういう時はスルーするのが〈エデン〉流だ。
よしよし、良い感じだな。こりゃイベントが起きるぞ。
「では、方針も決定しましたし、守護型ボスのいる階層門まで一直線で行きますわよ!」
「「「おおー!」」」
方針を決める間にも何戦かして、ちょうど最上級の状態異常がどの程度掛かりやすいかなどの情報も仕入れられたのでここでの検証は終了。出発することとなった。
「も~、ここのモンスター、みんな『状態異常貫通』持ちだったんだけど!?」
「『猛毒耐性』に加え『状態異常耐性』の2つを持っていても、稀に掛かる。結構厄介だったぞ」
「完全に防ぐには『状態異常貫通耐性』か『状態異常貫通大耐性』がいるな。最上級のレジェンド防具シリーズに大体このスキルが付いているのは、モンスターからの『状態異常貫通』に対するものだったというわけか」
ラナは『病魔払いの大加護』をたまに貫通されてご立腹だ。
結構防げるんだが、たまに『状態異常貫通』で〈毒〉になるのが厄介過ぎるらしい。
リカなんかタンクなのにたまに状態異常に掛かってたからな。まあ、その時は『明鏡止水』を使ってリカバリーしていたが。
メルトの考察は、まさにその通り。
『状態異常貫通耐性』系は『状態異常貫通』スキルの対抗スキルだ。とはいえこれでも万全ではなく、万全を期すのなら『状態異常貫通大耐性』を付けると良き。
ちなみに『状態異常貫通大耐性』は専用装備のスキル系に分類されている。例えば『「猫人」状態異常貫通大耐性LV10』みたいな感じだな。
このような専用スキル系は、普通の汎用スキルと違って効果が高いのが特徴だ。
俺たちはそのまま守護型ボスへと向かう。途中から一本道となったその先。
そこにいたのは、20メートル級の巨大なキノコの戦士だった。いやキノコかな?
「――――」
ズーンとそこに待ち構えていたのは全身鎧に巨大なキノコ傘の大盾に細長~~いキノコの槍を持った、人型の戦士。
「あれ!? キノコ要素どこよ!」
「ぐはっ!」
ラナの的確なツッコミが俺の腹筋に突き刺さったんだ。
ほら、あのキノコ傘と槍の部分だよ。
「このボスは、もしかして〈ビッグマッシュ〉の最終進化系ですの? 持っている武具に覚えがありますわ!」
さすがはリーナ。まさにその通り、こいつは〈毒茸の岩洞ダンジョン〉のレアボス〈ビッグマッシュ〉の最終進化系の1つ。
「『看破』! このボスは――〈ソルジャースキノコスター・オーバーマッシュ〉というそうです!」
「どこら辺がマッシュなんですか?」
「ふぐっ!?」
エステルの『看破』に即座に疑問の声を上げたシズの的確な言葉にまたも腹筋がやられ掛ける。しかも。
「アイ・アム・キノコ」
「へ?」
「アイ・アム・キノコ!」
「しゃべった!?」
「自分はキノコだって主張してるですのー!」
「さっきの疑問が気に入らなかったのかな!?」
「ぐぶはっ!?」
サーシャとカグヤのツッコミがマジ的確でパナイ……!
そう、〈ソルジャースキノコスター・オーバーマッシュ〉、通称〈オバキノコ〉の鳴き声は、まさかの「アイ・アム・キノコ」なんだ……!
もう完全に開発陣がプレイヤーの腹筋を狙いに来ている! そう、思われていたんだが、それはとあることを隠すためのフェイクだったんだ。
「! ええ!? この反応、『エリアボス探知』! さっきの動かなかったエリアボスが動いてる! しかも、こっちに真っ直ぐ向かってくるよ!」
「なんですって!」
まずカイリが気が付いた。
そう、ここで〈オバキノコ〉にツッコミを入れていたら見逃してしまうのだ。
ここのエリアボスは、なんと〈オバキノコ〉との接触をキーとして突如動き出す、まるでロボキノコ。しかもなぜか道中のキノコを従え軍勢を率いて接近してくるのである。
すぐにリーナが〈竜の箱庭〉で確認したところ、かなりの数のキノコが集まって続々とこっちに迫ってくる様子が映っていたのだ。
しかし、その動きはとてもゆっくりだった。俺たちの場所に到着するには、15分から20分くらいは掛かりそうな勢いである。
「これは……?」
「こいつは、制限時間かもしれないな」
「制限時間、ですの?」
「もしかして、それまでに10層の扉を開け、的な感じかい勇者君?」
俺の呟きから正解へたどり着いたのはニーコだった。まさにその通り。
実はここ、エリアボスを先に撃破してないと強制イベントが発生し、大軍勢を率いたエリアボスが守護型ボスのいる階層門へなだれ込んでくるのである。
つまり、挟撃だ!
ここに到着する前に守護型ボスを倒し、階層門を突破せよという、ドキドキの時間制限イベントだった。
ちなみに、別にイベント中も移動できるので引き返すのは有りだったりするし、その場から動けない守護型ボスを放置してまずエリアボスのみと対峙してもいいので完全に初見殺しなんだけどな。知ってれば回避できる。なんなら〈転移水晶〉を使っても良い。
「アイ・アム・キノコ!」
「わ!」
「キノコの兵隊がいっぱい出ました!」
「鳴き声がちょっと可笑しいよ~!」
「大丈夫かクイナダ先輩!?」
くっ、鳴き声1つでクイナダが……。戦うのはなかなかに厳しいか?
見れば現在4班、6班、9班が戦闘中だった。10層の守護型ボスは3パーティ推奨だ。
「あたしが前に出るでやがります! さあ、続くでやがりますよ!」
そんな中前に出たのはモニカ。
さすがは元Aランクギルドのギルドマスター。とても力強く、頼りになる掛け声。
「あちらはモニカさんたちに任せましょう。――ゼフィルスさん、わたくしたちはこっちのエリアボス部隊を叩きますわ!」
「だな。よし、残りの7パーティは俺に続けー! これから大軍勢キノコを倒しに行くぞー!」
「デブブの時みたいなやつね!」
「いえ、どちらかというと〈聖界ダン〉の時のあれに近いかもしれませんよ?」
挟まれているのに俺たちに気負いは無い。
こんなイベント、今までも結構こなしていたからな。
「来ましたわ!」
「ソノマンマー!」
「『看破』! あれは〈ソノマンマー・クイーン・マママッシュ〉、と言うそうです!」
「よーし、あっちは〈ママキノコ〉と呼称する! さあ、やるぞー!」
「「「「おおー!」」」」
こっちは鳴き声がそのまんま、〈マザーマッシュ〉の進化系というのが一目で分かる太めの体格のキノコだった。〈オバキノコ〉を助けに来た〈ママキノコ〉だ。
なんとなく、絆を感じるよね。だが、ここでハプニングが発生する。
「〈オバキノコ〉、撃破しました!」
「ん?」
〈ママキノコ〉が動き出して13分。もうすぐ到着というところで4班のシェリアから報告が届いたのだ。
おやっと思ってみんなが振り返ると、そこには片膝を突いてエフェクトの海に沈んでいく〈オバキノコ〉が見える。
……どうやら、イベントは終了してしまったようだ。
ここからは普通に総力戦だな!




