#1991 10層エリアボス〈ママキノコ〉総力戦。
「うわ~、すごくすごく〈毒〉を撒き散らしながらやって来てるっす!」
「毒々しい毒軍団」
ナキキとミジュが形容するように、エリアボス〈ソノマンマー・クイーン・マママッシュ〉、通称〈ママキノコ〉は大量の〈アルティメットポイズンマッシュ〉を始めとするこの階層に出現するモンスターたちを連れて現れた。
なんだか毒々しいオーラみたいなものを発しながら向かってくるその進行は、追い詰めて追い詰めて挟撃で倒す! という作戦をこれでもかと物語っていたんだ。
でもその挟撃の相方、もうやられちゃってますけど!?
チラッと見れば〈金箱〉が2つ現れていたんだ。
俺はフッと笑ってグーしておいた。
「さあ〈エデン〉お得意の総力戦の時間だ! エリアボスは3パーティ推奨! 1班、2班、3班でやる! 他の班は周りのモンスターたちを頼むぜ!」
「いいわ、あれだと周りからの攻撃の圧力も相当なものでしょう。ゼフィルスたちは私が守るわ」
シエラがかっこいい! 広いとはいえここは洞窟。大量のモンスターに攻められればエリアボス討伐部隊にも少なくない影響があるだろう。その全てをシエラが防ぐと言っているのだ。俺たちは安心してエリアボスに挑める。安心感が違う!
「それなら私が〈毒〉を防ぐわ!」
「いや、それはシュミネにやってもらうから大丈夫だ」
「なぁ!」
「私ですか?」
「おう。頼むぜシュミネ。ここを楽園に変えてくれ!」
「……はい!」
シエラだけに負担は掛けないとラナが大変ヒーラー的なことを提案してくるが、すまん。今回〈毒〉に対処するのはシュミネの役目だ。
シュミネが新たな武器、まだ〈能玉〉がセットされてない〈サーテントマナライトの杖〉を掲げると、その先端のクリスタルを輝かせてユニークスキルと魔法を発動する。
「いきます――『世界樹召喚』! そして――『ハイエルフの楽園』!」
シュミネのユニークスキル『世界樹召喚』が発動すると、文字通り洞窟内に世界樹が現れる。洞窟内なのでちょっと窮屈そうだ。
自ら発光する世界樹は、発光するキノコよりも神聖で清らかな光で洞窟内を照らす。そこに発動するのが『ハイエルフの楽園』。洞窟内に幻であり発光する木々が次々と生え、周囲をハイエルフの住む楽園へと変えてくれる。
この環境下に居れば『状態異常無効』が付与されるのだ。
とはいえ、もちろんこれは環境魔法なので移動不可。
今までラナの『病魔払いの大加護』を使ってきたのは、移動中だったからだな。
足を止めての勝負ならば環境魔法で無効にしちゃうのが最善。というわけでラナにはヒーラーを――。
「『大聖光の無限宝剣』!」
「「「「「ソノマンマー!?」」」」」
「つまり私はこっち担当ね!」
「ああ、うん。そうだな! ラナは臨機応変に頼むぜ!」
「任せなさい!」
「ということで、ミサトだけが頼りだ!」
「たは!」
なにも問題は無い!
「「「「「ソノマンマー!」」」」」
「来ますわね! 『全軍一斉攻撃ですわ』!」
「みんなにバフ掛けちゃうよ~♪ 『プリンセスアイドルライブ』♪」
「露払いは任せてもらおう」
「だな。ゼフィルスさんたちの道を空けるぞ!」
「「「おおー!」」」
5班のリカとラウが前に出て宣言すると、一気に5班、7班、8班が飛び出して行く。10班はリーナやカイリ、ノエルなどの後方サポート班なので、他の3パーティが前に出て向かった形。
「先陣を切る――『必殺の太刀・六閃華』!」
「ボスには攻撃を当てないよう気をつけろよ! ――『エンペラーバスター』!」
「ん――『スターソニック・レインエッジ』!」
「『ファーストドロー』! 範囲攻撃はダメってことだね」
先陣を切るのは5班。
リカやラウ、カルアが飛び込み、遠距離からはニーコが早撃ちの二丁拳銃ガンマンで援護していた。かっこいい!
「タンクは7班に任せてください――『吸属封印盾』!」
「うんうん。7班は鉄壁のタンクが2人も居るもんね~『絶対ガブリエル頑強盾』!」
「アタッカーも多いの~『サンダーバスター』!」
「でも範囲攻撃は気をつけないといけませんの! 『フリーズドバスター』!」
「『セット・シールダー・プロミス・モミジ』! 『セット・ヒーラー・プロミス・カンザシ』! 守りと回復、両方こなしてサポート全開だよー!」
7班はキキョウとトモヨという強力な受けタンクが2人もいる贅沢なパーティだ。
アタッカーはアリスとサーシャで、基本はタンクを前に置き、遠距離攻撃で仕留めるスタイル。ヒーラーはカグヤで、召喚体のモミジとカンザシをアタッカーを守るように配置する、超強固なパーティだな。
「タンク助かります――『ミカエルラッシュ』!」
「『スリーピング・シンドローム』! 『MP大睡吸』! 『夢楽園』! なんか私の楽園、シュミネちゃんのハイエルフの楽園に呑まれてない!?」
「おっと、右翼側が流れてきたよ! 『神宝剣・テンペルトソニックブレイド』!」
「今度はそっちだねー! 『神本・フルバースト』!」
「これで道が開けるよ――『神弓・ピンポイントボルト』!」
8班はフィナ、エリサ、サチ、エミ、ユウカのパーティだ。
フィナはタンク役を7班に任せることでアタッカーに回っているな。
エリサはなにを嘆いているのか。シュミネとエリサの楽園が合体し、森に小動物が溢れるという相乗効果を生み出していたんだ。ちなみに効果に変化は無い模様。
世界樹と夢の楽園がキノコたちを即死させまくってるのですが?
そしてサチ、エミ、ユウカは3人行動しているはずなのに連携が完璧。まさに三位一体だ。
そうしてついに〈ママキノコ〉までの道が開ける。
「「「「ソノマンマー!」」」」
「そのまんまではないさ! いくぜ全体攻撃――『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
「おーっほっほっほ! 周りのそのまんまキノコ産とやらも調理して差し上げますわ! 『レボリューションセンチュリー』!」
「お嬢様、なんかイントネーションがおかしかったですよ。それだと食材です!」
「ソノマンマー!」
俺とノーアの攻撃はついに〈ママキノコ〉まで届き、1班、2班、3班がエリアボスと戦闘中に組み込まれる。ちなみに3班はラナの『大聖光の無限宝剣』が初手で突き刺さっているのですでに組み込み済みだ。
これで他の班も、エリアボスに攻撃が当たってしまってもノーダメージになるため大技が使いたい放題になる。
「ソノマンマー!」
「意外に素早い!」
「『グラビティフィールド』!」
〈ママキノコ〉は3パーティと戦闘になるとその本領を発揮して腕を燃え上がらせ、2本足で駆けてくる。絶対走るとかできなさそうなあの太めの〈ママキノコ〉が駆ける姿は、ビジュアル的に呑まれそうだ。あと燃えるあの腕、〈マザーマッシュ〉を思い起こさせるぜ……!
しかし、その真後ろにメルトが重力の固まりを発生させて引き寄せ、行動を阻害すると、前に出たのはエステルとパメラ。
「ここです――『スラストゲイルサイクロン』!」
「いっくデース! 『くノ一流・桜雨』!」
「マンマ――!?」
まさに一瞬の出来事。
エステルは〈足特装型戦車〉を身に着け、パメラは『大忍法・影渡り』で瞬間移動で接近していたな。
〈ママキノコ〉は燃える腕を振るおうとしたが間に合わずに直撃をくらい、構わず振るうも空ぶった。
「あ、あれは強いっすね。まずは転ばしてやるっす!」
しかし空ぶったもののそのパンチ力に目を見張ったのはナキキだ。
良い目をしているな。〈ママキノコ〉はあのキノコたちの大将。そのパンチ力はかなり威力が高い。
「倒す――『クマンパンチ・ストレート』!」
「ソノマンマー!」
「ミジュ、下がって!」
〈ママキノコ〉が対処してきた。大量の胞子を撒き散らし、洞窟の壁からニョキニョキとミニサイズの〈アルティメットポイズンマッシュ〉が生まれてくる。
君、そんな生まれ方してたんだ! と何人かが驚いてたな。
眷属を増やし、戦力を増強する。それが〈ママキノコ〉の戦い方。伊達に〈ママ〉と呼ばれてはいないんだぜ。
「「「「「ソノマンマー!」」」」」
「そのまんまーがそのまんま増えてもな! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「「「「「ソノマンマー!」」」」」
「ちょ!? 数が多いっすよ!?」
「私に任せて。――『守陣形四聖盾』! 『クイーンオブカバー』!」
増える増える、キノコが増える。
蹴散らしても蹴散らしても増える姿はなかなかに壮観だ。
これで10層のエリアボスだというのだから凄まじい。
さすがに5班、7班、8班だけでは抑えきれず、ミニサイズの〈アルティメットポイズンマッシュ〉が抜けてくるが、それを防ぐのはシエラだ。
永続カバー。
シエラの自在盾が目にも止まらぬ速さで動き次々と襲い来る〈アルティメットポイズンマッシュ〉たちを弾いて吹き飛ばしていくんだ。
ミニサイズの〈アルティメットポイズンマッシュ〉も負けじとスキルを使って突っ込んでくるが、シエラには通じず。
シエラの小盾はこの間新調したばかりの〈真・天聖盾〉。これが4つ揃っているのだ。
〈アルティメットポイズンマッシュ〉では、この盾を突破することはできない。
「『ハイヒール』! たははは~、シエラさんは本当に全然ダメージ受けないんだから~」
「小盾で防ぐとダメージのフィードバックがほとんど無いのよ」
シエラが強い!
「おーい! 援護にきたぜ!」
「おまたせー! いっくよーーー!! 『必殺・牙浪大斬閃』!!」
「おお!」
ここで守護型ボスと戦っていたメンバーが補給を済ませて援護に来た。
先陣を切るのはゼルレカとクイナダ。さすがのスピードだ。
そしてクイナダは、そのレジェンド級の大剣を振りかぶると、武器スキルを発動する。放たれたのは巨大な範囲攻撃の斬撃。シンプルに強力な斬撃の一撃だ。
巻き込まれたミニサイズの〈アルティメットポイズンマッシュ〉たちが一瞬で光に還る。
「あたいも負けてらんねぇな! 『ライフフォース・アトミック』!」
ゼルレカも負けじと〈六ツリ〉の大技、自分のHPに大ダメージを与える代わりに相手に特大ダメージを与える強力なスキルを発動。
ゼルレカの防具は、文字通りHPお化けにしてある。
そのHPを大量に消費して放つ攻撃が弱いはずもなく、一気に光が量産されたんだ。
「最高だ! これ使っても全然HPに余裕がある! この防具、マジ最高だ!」
「私の防具だって凄いよ! 特にSTRとAGIの値が高すぎてバッタバッタだよー!」
「おおすっげ!」
防具更新組のお出ましだ。
真の最強装備に身を包むゼルレカとクイナダが乱入したところは光だらけになってしまう。ミニサイズの〈アルティメットポイズンマッシュ〉が次々襲い掛かるが、あの防具の前には全く以て歯が立たない様子だ。ちょっとゼルレカに攻撃が掠った瞬間、反撃の炎が相手を包み、大ダメージを与えてしまうのだからたまらないな。
「ゼニス、小型のままですが、いけますね?」
「クワァ!」
洞窟内で派手に飛ぶことができないゼニスだが、10メートル級まで『小型化』すれば行動は可能だ。アイギスはいつの間にか〈ママキノコ〉の後ろを取っており、〈ママキノコ〉に付いてくる大サイズの〈アルティメットポイズンマッシュ〉たちを射程に収めていた。そして。
「みなさん、開けてください――『竜心同体』! 『神竜の業火・ファイナルエクシードブレス』!」
「クワァアアアアアアアアアアアア!!」
「「「マ!?」」」
ズドーンと衝撃。
アイギスの上級ユニークスキル『竜心同体』はバフスキル。
アイギスのステータスとゼニスのステータスを合わせてさらに強化してしまうとんでもないスキルだ。
ゼニスはまだレベルが低いとはいえ、最強の最終形態。
アイギスは防具の効果でSTRステータス増し増しだ。
そんな2人のステータスが混じってさらに強化もされたらとんでもない。
加えて発射されたのはアイギス最強のスキルにしてゼニス最強のドラゴンブレスだ。
〈ママキノコ〉に集められた兵隊さんたちは、みんな光にされてしまったのだった。




