#1986 さらばバルフ。次のお相手は〈サボッテ――!?
え? 〈バトルウルフ(第二形態)〉の強化版はって?
俺とラナたちの班によって光にされたよ。
〈樹界ダン〉の最奥レイドボス〈バトルウルフ(最終形態)〉の眷属として出てきた〈バトルウルフ(第二形態)〉よりも強かった。ハンディ付きだしね。
いったい〈バトルウルフ〉はどこまで強くなって俺たちを楽しませてくれるのか、まだこの先にも追想が待っているのだ!
「なんだか懐かしくって、とても楽しかったわ!」
「俺も同意だ! 向こうも強くなってたが、こっちはもっと強くなってたからな! それに、こっちは10人だ。さすがに負けないよな!」
「この先にも中級、そして上級のバルフが待ってくれているのかしら?」
「そうだと思うぜ。なにせ最上級ダンジョンは90層。学園ダンジョンは全部で80箇所だからな。含まれている可能性は大いにある!」
「いいわね! 楽しみになってきたわ!」
ラナが本当に楽しみと言わんばかりの笑みでワクワクしているのをしっかり感じる。
〈バトルウルフ〉戦の時は必ず参加するつもりだろう。
俺も参加したい!
「さあ! クジ引きよ!」
「今度こそ当ててやるぜ!」
ドロップしたのは〈金箱〉が2つ。
俺とラナは、〈バトルウルフ〉の〈金箱〉だけは渡せないと、勝負に挑んだのだ。
あれ? むしろ〈バトルウルフ〉戦の時よりも気合い入ってない? いや、きっと気のせいだろう。
そして結果だが、なんと最初に当たりを引いたのは――ラナだった。
「来たわーーー!! 当たりよ! 見てゼフィルス、当たりを引いたわ!」
「な、なんだってーー!? くぅ、おめでとうラナ! 俺もすぐに続くぜ!」
羨ましい! しかし、当たりクジはまだ1本残ってる。〈金箱〉は2つなのだ!
最後の当たりを引くのは俺だ!
そう思っていると、最後のシヅキが引いたクジが――ハズレ。
残った俺の手にあったのは、本当に当たりクジだったんだ。
「おっしゃーー! 俺も当たりクジゲットだーーー!!」
「なによゼフィルス、やったじゃないの!」
「おう! もしかしたら〈バトルウルフ〉が俺たちに〈金箱〉を開けてほしいと授けてくれたのかもしれないな!」
「もうバルフったら、とてもイイコだわ!」(※もちろんそんなことはありません)
ラナとハイタッチでイエーイする。
なんだか〈バトルウルフ〉も影でグーしてくれた気がしたんだ。(※気のせいです)
「なんだか、ゼフィルス先輩とラナ殿下が2人の世界を構築してやがりますね」
「たまにあんな感じになるんだよ~。モニカが入る前の〈バトルウルフ(最終形態)〉戦も、何回かあんな感じのノリだったし」
「あたいにはあの〈バトルウルフ(最終形態)〉、戦う毎になんか、しょんぼりというか、哀愁漂うというか、ビビってたように見えたんだが……。ついでに言うと今回の〈バトルウルフ(第二形態)〉は悲鳴を上げてるように見えたんだぜ……最初隠れてたしな」
ラナと一緒に〈金箱〉の前でテンションを上げていた俺には、せっかくのモニカ、クイナダ、ゼルレカのツッコミは聞こえなかったんだ。
お祈りを済ませて〈金箱〉をオープンする俺とラナ。
すると中身は――〈バトルウルフ(最終形態)〉のドロップよりも一段下の、〈金箱〉級の装備全集と剣のレシピが当たっていたんだ。
「むむ。クイナダのよりもちょっと弱いじゃないのこのレシピ」
「こりゃ〈金箱〉級だな」
「元がレアボスだったからレジェンド級かもしれないと思っていたのだけれど、そういえば〈エンペラーゴブリン〉の時も〈金箱〉級だったわね」
〈バトルウルフ〉の〈金箱〉回。
残念ながら〈エデン〉にとっては当たりとは言えない結果だった。だって〈金箱〉級だもん。
シエラも呟いた通り、〈バトルウルフ(第二形態)〉は元々レアボス。
この最上級ダンジョンでは、最奥のレイドボスを倒すと普通の最奥ボス&レアボスにも挑戦できるようになり、レアボスを倒せばレジェンドレシピがたまにドロップする。
故に元レアボスなのだからもしかしたらレジェンド級が出るのでは? そう期待したメンバーが何人か居たのだが結果は〈金箱〉級。なにせ今の〈バトルウルフ(第二形態)〉のポジションは希少ボス。エリアボスの一種だ。希少ボスは〈金箱〉確定になるが、徘徊型やレアボスのように等級が上がることはない。
「とはいえランク4の最上級ダンジョン〈金箱〉レシピです。普通に上級上位ダンジョン産よりも1段上ですからとても強いですよ?」
「うむ。私の今の装備よりも普通に強いな」
「最強装備が強すぎて、みんな感覚が麻痺しているか」
エステル、リカ、メルトの言う通り、能力値を見れば、上級上位ダンジョンのレアボスなどからドロップするものよりも強かったので、普通に作るのはありだ。
俺たち〈エデン〉からすると繋ぎ装備になっちゃうというだけで、現在上級上位ダンジョンで攻略に勤しんでいるAランクギルドやSランクギルド、そして公式ギルドの方々からすれば、垂涎の装備である。
「ふむ」
これは今後何かに使えるかもしれないな。少なくとも、ハズレではない。なにせ装備全集に剣である。
そう思いつつレシピを仕舞い、出発する。
「次の8層はどこかしら?」
「そうだな。このまま行けば次に待っているのは〈孤島の花畑ダンジョン〉の追想じゃないか?」
「あの〈サボッテンダー〉が居たところね!」
初級ダンジョンは普通の最奥ボスからレアボスまで全部戦ったことがあるのでラナはよく覚えているな。
そう、あのニヤニヤ笑いが憎いあんちくしょう、なんて呼ばれることもある、身体が半分地面に埋まっているボス、〈サボッテンダー〉がいたダンジョンだ。
ちなみにレアボスになるとなぜか〈サボッテンダー〉はカウボーイに進化する。
「道中の花畑が綺麗なダンジョンよね。私も覚えているわ」
「ええ。ちょっと楽しみになってきました」
あ、幽霊ダンジョンからちょっと尾を引いていたシエラが笑顔になった。
ナイスだ花畑!
「階層門が見えてきましたわ!」
「なんでここの〈ウルフ〉ってあんまりエンカウントしないんでやがりましょうかね?」
「うーん、私の『索敵』や『警戒網』にもあまり引っかからないんだよね。まるで私たちから離れているような?」
「その認識で合ってんじゃね?」
なんか7層はボスを倒したあととてもスムーズに進んだ。
一応報告書にも纏めたいという理由で追いかけたが、なぜか〈ウルフ〉が俺たちを見ると逃げに入る件。
逃げるのは格下モンスターの行動だろ!? ゲームじゃここの〈ウルフ〉がそんな行動することなんてなかったぞ!? そう思っても、なんか逃げるんだよここの〈ウルフ〉。……なぜだぜ?
結局あれからもう2戦ほど戦っただけで7層ともバイバイだ。
浅い森で比較的見つけやすかった階層門を潜り、俺たちは8層へと到着する。
「「「「「わぁ!!」」」」」
すると、女性陣の第一声がこれだった。
懐かしき花畑が景色いっぱいに広がるダンジョン。
美しさで言えば、ダンジョンの中でも上位に入ってくる場所だ。
「懐かしいわ!」
「相変わらず、綺麗デース」
「昔はこの綺麗で見事な花畑に足を踏み入れて荒らしてしまうのが心苦しいと、毎回同じことを思っていましたね」
「今は、〈イブキ〉にでも乗ります?」
道の無い花畑いっぱいのダンジョンは、その美しさで俺たちを阻む自然の関門だ。
この花畑でも躊躇なく進める心の強い者だけが、先へ進めるのだ。なんちゃって。
ちなみに過去の俺たちは、普通に進んだような気がするな。
しかし、今の俺たちには〈イブキ〉がある! もう花畑を踏み荒らすなんてこと、しなくていいのだ!
そう思って居たときのことである。
「サボッテナインダーー!」
「「「サボってないんだーー!?」」」
「エ、エリアボスだよ! ごめん、花畑に気を取られて気が付かなかった!」
「あれ、花畑に擬態してるですの!」
エリアボス、突如動き出す。
ちょっと小山になっていた花畑が動き出したのだ。最初から結構近くに居た模様。
そしてこの鳴き声? とっても意味深!
そう、お察しの通り、こいつこそがエリアボス。〈サボッテンダー〉や〈サボテンカウボーイ〉の進化系! その名も。
「『看破』! あれは〈花仙人掌・サボッテナインダー〉というそうです!」
エステルの『看破』で名前判明。〈花仙人掌・サボッテナインダー〉は身体中が棘の代わりに花だらけになったサボテン型(?)のボスモンスター。
景色に同化するように進化しちゃったのか、なんか可愛くなってたんだ。ちなみに顔はハニワのままで、普通に2足歩行で動いてる。身長は10メートルもあり、周りの花畑を踏み潰しながら進むその蛮行に、うちのギルドメンバーが早々に動き出したのだ。
「せっかくの花畑が――ああ!?」
「サボッテナインダーー!!」
「むしろサボってなさいよー!」
「ぶはっ!?」
ラナのツッコミも冴えてる!
サボりを勧めるとはこれ如何に!?
そして結局7班と8班が受け持つことになり。
「『全ては凍り付き溶けることは無い、永久のニブルヘイム』ですの!」
「トドメなの! 『神の雷』なのーーー!!」
「「「「あ!!」」」」
「あ! しまったですのーー!!」
「にゅにゅにゅ~~!?」
最初の花畑への配慮はどこへやら。
通称〈サボッテナインダー〉戦でサーシャとアリスのユニークスキルによって花畑はカチンコチンに加え、雷に打たれて砕け、開けてしまったのだった。
なお、余波で〈サボッテナインダー〉は光になっていたが、それよりも花畑が一部禿げてしまった方がよほど大問題。女性陣の悲鳴がフィールドに響いたんだ。




