#1985 6層無事突破で7層!次はバルフが登場する追想
「さっさと6層を抜けましょう」
〈金箱〉回が終わったところでシエラからゴー次の階層の指示が出たので、俺たちもアイマムーと従って出発だ。
さーて、階層門はどこかな? 俺も初めて来る場所だから分かんないな~。(棒)
これは、この階層を抜けるのも時間が掛かりそうな予感!
「リーナ、階層門はどこ?」
「はい――『階層門発見』ですわ!」
それ使っちゃダメー!?
リーナの裏切りによって一瞬で判明してしまった階層門の位置に、シエラは「行きましょう。向こうよ」とかっこいい指示を出して〈エデン〉を動かし始めたんだ。
ふ、普段は俺を立てて任せてくれるはずのシエラが指揮を! なお、もちろん俺を含むメンバーズは揃ってシエラに従ったよ。
ま、まあカイリのユニークスキルだけまだ思い至ってないようだからセーフかな?
道中で肝試し気分を味わいながら、グレイトな6層を突き進む。そしてついに階層門を見つけてしまったんだ。
「階層門、発見だよー!」
「や、やったー!」
「怖かったけど、なんとか脱出できそうだね」
ちょいとビビっていたサチ、エミ、ユウカを始め、階層門を見てホッと息を吐くメンバーも多いな。
「よし、名残惜――じゃなくて難易度の高かった関門である〈幽霊の洞窟ダンジョン〉の追想も無事突破できそうだな! みんな、あと少しだ!」
「ゼフィルス? 今名残惜しいと言いかけなかったかしら?」
「な、難易度と言おうとして間違えたんだ」
「…………」
危なく心の本音が漏れそうになってしまったが、なんとか誤魔化したのでセーフ。
シエラの目が大変疑わしい者を見るジト目になってしまったが、きっと気のせいだろう! だがここでテンション高くなっちゃうとヤバそうなので、俺は耐えるしかなかったんだぜ。
「次は7層ね! どんなところなのかしら?」
「今までの流れから察すると、次は〈小狼の浅森ダンジョン〉かと思われますよラナ様」
「小狼!? バルフ!?」
「はい。そのバルフです」
はわ! そんな表現がピタリと合うようなラナの驚き顔来たる。
そう、今まで6層の幽霊ダンジョンにばかり気を取られていたが、なんと7層はウルフの階層、そのエリアボスは、もちろん〈バトルウルフ〉だ。バルフは愛称。
ああ、今まで敢えて黙っていたのに、それを聞いてしまったラナが早く行こうと急かしてくる事態になってしまった……!
脱出を希望するシエラと、先を進みたいラナによって、俺たちはすぐに6層から7層への階層門を潜ることになったのだった。
さらば幽霊ダンジョン……!
「あ、ああ! ここ、なんだか懐かしいわ!」
「浅い森、あの時のままですね」
7層に侵入すると、広がっていたのは懐かしき森の入り口。
何度も通ったからなここは、見間違うはずもない。エステルの予想的中、ここは〈小狼の浅森ダンジョン〉の追想だ。
「はぁ。ようやく〈初級中位〉の最後のダンジョンまで来たわね」
一度息を吐いたシエラが再び引き締めて辺りを確認しているな。
6層を抜け、少し気が抜けたメンバーも多かったので、ここで少し休憩。
まずはここのモンスターの調査に少数の班が向かった。
「ん。この先、5体いる」
「ルルにお任せなのです! ビビッと『看破』しちゃうのです!」
「うっ、なぜでしょう。『看破』されてしまうウルフたちを少し羨ましく思ってしまいました」
「シェリアのそれは重症ではないか?」
カルアの索敵で相手を見つけると、ルルが〈幼若竜〉を抱きしめながら気合いを入れ、シェリアがルルの発言になぜかジェラジェラし、リカが少し苦笑で問いかけている。
ここは、4班と5班の混合パーティだった。
「「「「ウォーン!」」」」
「む、来たか。私が止める――『制空権・神閃域』!」
前へ出るのはリカ。六段階目ツリーのスキル、『制空権・神閃域』を発動すると凄まじい広さの間合いが形成され、間合いに入った瞬間ウルフが何撃もの閃撃を浴びて吹っ飛んだ。リカの『制空権』系最強のスキルだな。
「今ですルル」
「〈幼若竜〉の出番なのです! 『看破』なのです! むむむ? この〈ウルフ〉さんたちは〈アルティメットウルフ〉さんと〈グレートリーダーウルフ〉さんの群れなのです!」
「奥にいるのが指揮官、つまり〈グレートリーダーウルフ〉ですか」
「私が狩る――『スターソニック・レインエッジ』!」
ルルとシェリアによってキーパーソンであるリーダー系の〈ウルフ〉を見つけると、カルアがソニック系の六段階目ツリーを使って一気に急接近。
「ウォン!?」
カルアの装備はスピード特化。まだ真の最強装備ではないものの、AGIだけなら未だに〈エデン〉のトップを譲ってはいない。
素早く近づくと雨のような大量の斬撃が〈グレートリーダーウルフ〉に降り注いだ。強い。
「ウォン!?」
「「「ウォーン!?」」」
そして一撃で光になった。早っ!
カルアの武器、〈励起・聖刃〉の攻撃力が高すぎるぜ!
指揮官を真っ先に失えば、あとは普通の群れと変わらない。
そこからは慣れたもので、初のエンカウントはこうして何事もなく終わったのだった。
「ナイスカルア! リカもな!」
「ん」
「動きは〈ウルフ〉の時に近かったからな。スピードと体格が変わっていたが、行動パターンが分かっていれば特に問題のない相手であった」
カルアは勝利のブイ。
リカはそう言ってカチャンと納刀する。リカの仕草がかっこいいです。
〈ウルフ〉系の行動パターンって、読みやすいからなぁ。〈バトルウルフ〉さえ何百回も倒していれば他の〈ウルフ〉系でもその感覚が通用する。逆も然り。故に〈バトルウルフ〉は〈ダン活〉で一番狩られたボスとして有名になったんだ。
それから数体の〈ウルフ〉を狩った。
姿は普通の〈ウルフ〉時代よりも大きくなったり厳つくなったりはしているものの、行動パターンはさほど変わらないので楽勝楽勝。
その成果を持って戻ると、みんなしっかりと持ち直しているようだった。
しかし、なんかざわめいてるような?
「ただいま! この集まりはどうしたんだ?」
「あ、ゼフィルス! ちょっとこれ見てよ!」
「んん??」
ギルドメンバーが集まっていたところにあったのは〈竜の箱庭〉。そしてラナが指し示す場所は、俺たちがいるところとは反対側だった。というかフィールドの端だな。
そしてそこには、一際大きな反応が、ふせの姿勢で蹲っていたんだ。
「あれ? これってエリアボスの反応なんじゃ?」
「そうよ。バルフ再びと聞いていたからどこに出るのかしら? ってリーナとカイリに調べてもらったのよ。そしたらね。こーんなところに蹲ってて全く動かないの!」
「ああ」
ざわめいていた理由が分かった。同時にバルフが「梃子でも動かないぞ! ワオーン!」と言わんばかりにフィールドの端側を向いて蹲っている気持ちも少し理解できた気がする?
もしかして、バルフ、俺たちとの戦闘を拒否してない?
「もー、なんでこっちに来ないのかしら!」
「何度も狩られたからじゃないでしょうか?」
ラナがもーもー言うが、エステルの言葉がストンと腑に落ちるんだよなぁ。
まさかの事態だ。ボス、戦闘拒否して壁側で蹲る。俺もこんな行動するボス初めて見たよ!
「こうなったらもう、笛しかないな。ここまで行くにはちょっと遠いし」
「そうね! 来ないのなら、強制的に呼び出せばいいのよ!」
ラナが大変王族的なことをおっしゃっておられる!
なお、俺はそれに「うむ」と頷いておいた。最適解だよ!
「サティナ! 〈フルート〉を吹くのよ!」
「畏まりました~!」
そうしてすぐにサティナさんに〈フルート〉を吹いてもらえば、〈竜の箱庭〉に映るバルフにも変化が。
おもむろにフラッと立ち上がると、まるで夢遊病のようにフラフラ俺たちの方へ向かってきて、最後はダッシュ。
「接触まで残り10秒ですわ!」
中々のダッシュ力でもう俺たちの所まで接近してきたんだ。
「私がやるわ! 私に任せて!」
「私たち2班もお願い。少し、身体を解したいわ」
「それじゃあ2班と3班で」
相手をするのはシエラ率いる2班。バルフでウォーミングアップをする気らしい。
そしてラナ率いる3班だ。〈デブブ〉と同じなら、2パーティ推奨ボスだろうからな。
2つの班が前に出ると、ここで接触。相手は――希少ボスのマークをアイコンに宿していた。
あ、これは〈小狼の浅森ダンジョン〉のレアボス、〈バトルウルフ(第二形態)〉! その強化版か!
ちなみにエリアボスは階層ボスだと通常ボスの追想として〈バトルウルフ(第一形態)〉が、希少ボスだとレアボスの追想として〈バトルウルフ(第二形態)〉が出る仕組みだったりする。
今回は進化系ではなく、強化系だな。姿形はそのままだが、戦闘力が最上級ボスを張るのに相応しいほど上がっているタイプだ。しかし、
「…………キャイン!?」
俺たちの前に現れたバルフは俺たちを見て、まるで夢から覚めたと言わんばかりに驚愕に目を見開き、一瞬で踵を返して逃げようとしたんだ。
エリアボスが逃げるだと!? ダメ、許さん!
「あ、こりゃダメだ。――シヅキ!」
「おけ! 『震えろ・大魔王様からは逃げられない』!」
「ワオン!?」
はい、これで逃げられなくなりました。
しかし、1班のシヅキのスキルが入ったせいで、2パーティ推奨のバルフの片方が俺たちになってしまった。
「悪い。2班か3班、どっちか譲ってくれ」
「……仕方ないわね。私が盾で止めれば良かったのに、出遅れたわ」
そんなことを言うシエラが2班と一緒に下がってくれたので、1班と3班が合同で戦うことになったんだ。そして――。
「ワ、ワオーン!!」
もうヤケじゃー! と言わんばかりに噛みつこうと飛び掛かってきたバルフを蹴散らし、10分後には俺とラナはハイタッチしていたのだった。




