#1984 〈デブブ〉ドロップは――〈マナライトの杖〉!?
「6層のエリアボス! 〈デブブ〉を討ち取ったりー!」
「楽勝よー!」
「「「おおおー!」」」
難関にして強敵であったはずの〈デブブ〉も撃破!
さすが、LV100になった俺たちを止めることはできなかったんだぜ。
あとラナの『レクイエム』が強すぎた。
他にもナキキやミジュ、回復妨害のシズなど、ガチでメタな〈デブブ〉対策メンバーで挑んでしまったし、順当な結果だったと思う。そしてその報酬は、
「やったわ! 〈金箱〉よ!」
「〈金箱〉ばんざーい!」
「ん! ばんざい!」
「ケケケケケー!」
「「「きゃー!?」」」
「あ! ちょっと変なのが混ざってる!? カルア、ゴー!」
「ん、成敗する」
なんということだ。
まさかの〈金箱〉ばんざいに〈幽霊〉の鳴き声が混ざってきたんだ。
どうやら〈デブブ〉戦の取りこぼしがまだあった模様。ボスはすでにやられているのではぐれ〈幽霊〉だな。俺たち以外のパーティでも倒すことができるので、サッとやってきたカルアに撃破を指示しておいた。
カルアの現在の武器は、〈聖界ダン〉の90.5層ボス〈セラフィム〉からドロップした短剣、〈励起・聖刃〉の二刀流。
これはアルルがLV100になった時、初めて打った短剣だな。今では打ち直し、最強装備の一角となっている。
〈聖属性〉武器に加え、『幽霊キラー』持ちの短剣なので〈幽霊〉に良く効くのだ。ほら、即で光にして戻ってきた。
「ん、楽勝。リカ、大丈夫」
「う、うむ。別に私は怖くはないのだぞ? 苦手なだけなのだ」
リカは〈幽霊〉系がプチ苦手らしい。カルアがリカを守る、珍しい構図だった。リカは当時〈幽霊の洞窟ダンジョン〉を攻略したときは無属性の物理しか使えず、遠距離魔法攻撃ばかりでタンクも難しく、とても苦労したと聞いたからな。
「邪魔者は消えた。さあ、〈金箱〉を開けるぞ! 今回はなんと2箱だ!」
「〈幸猫様ファミリーズ〉万歳よ!」
「ん、ばんざい!」
俺がギラリと目を光らせて告げればラナとカルアを初めとしたメンバーが万歳する。〈幸猫様ファミリーズ〉万歳!
クジ引きに願いを込める。今回は10人で戦った。当たりは2本。レイドボスよりも確率は高い。どうか〈幸猫様〉、俺に幸運を!
ググッと願いを込めてクジ引きチャレンジすると、当たりを引いたのは―――。
「ああ! 赤を引いたっす!」
「あ、赤色来た」
ナキキとミジュだった。
「ズガーン!?」
「嘘でしょー!?」
俺とラナは共にショックを隠しきれなかったんだ。
いつもよりも確率が高いはずなのに、出ない? そんなー。
「えっと?」
「シュミネ、いつものことだから気にしなくていいわ」
「あ、はい。――ナキキ、ミジュ、開けていいそうですよ」
「それじゃあ私から行くっす!」
あ、普通に進行した。
俺たちのショックにも慣れたシエラが旗を振ってゴーサインしたんだ。
もちろん旗は比喩だぞ?
しっかりとお祈りをしたナキキがガッと蓋を掴み、持ち上げる。
すると中から出てきたのは、杖だったんだ。
あ、ああ!? これは!
「これ、見たことあるわ」
「私も覚えてるわ! この杖、〈マナライトの杖〉よ!」
「え? え? なんかやっちゃったっすか!?」
それをナキキが宝箱から取り出した瞬間、食い入るようにシエラとラナが見つめたんだ。
それもそのはず、その杖は、過去初級中位ボスだった〈デブブ〉からドロップした杖、〈マナライトの杖〉に酷似していたからだ。
「私にやらせてください――『解析』! これは、〈サーテントマナライトの杖〉と言うそうです! 〈スロット〉は3つ!」
「「「スロット3つ!?」」」
そう、これは、あの〈マナライトの杖〉の強化版上位杖だったのだ! 見た目も〈マナライトの杖〉の豪華版という感じだ!
〈デブブ〉がパワーアップなら〈マナライトの杖〉もパワーアップかよ!
その効果は〈マナライトの杖〉と同じく、スロットありの武器だったんだ!
スロット武器はレシピ生産できない代わりに、〈能玉〉と呼ばれる特殊なスキルオーブのようなものを使い、武器スキルを換装することができる!
当時はスロット1で、ハンナが〈トリプル魔能玉〉を当てて、たった1つのスロットから3種類の魔法を放ってたんだよな~。懐かしい。
いや、これマジもんの大当たりなんだけど!?
「杖は趣味じゃ無いけれど、これ、使わせてもらおうかしら……」
ああ、早速ラナがふらっと行った!
ハンナが使ってたときからかなり強かったもんな。〈火属性〉魔法を使ってたかと思えば、〈能玉〉を換装して次には〈闇属性〉魔法を使っていたりと、なにしろ多彩だったからなぁ。
しかし、ここで待ったをする人物がいた。
「いえいえっす! これは是非、お母――じゃなくて、シュミネに使ってほしいっす!」
「ナキキ? 今お母さんと言いかけなかったですか?」
「き、気のせいっす!」
「ほほう。シュミネの武器か!」
俺はそれに食いついた。
シュミネの武器は〈樹界ダン〉のレジェンドレシピから作った〈世界樹の豊杖〉。
しかし最強装備というわけではなく、〈トップマリー〉のエルフの方がLV60~70くらいの時に作った装備だ。
そして現在ドロップしている〈サーテントマナライトの杖〉はレジェンドというわけではなく〈金箱〉級ではあるものの、推奨LVが85の〈デブブ〉からドロップしたスロット付きの杖だ。
能力値的にはレジェンド級の〈世界樹の豊杖〉の方が強いものの、スロットのおかげで総合評価は圧倒的に〈サーテントマナライトの杖〉の方に軍配が上がる。さらにだ。
「シュミネは回復と結界を司っているっすが、実際問題〈エデン〉ではあまり使用頻度が高くないっす!」
「ほう、続けてくれ」
ナキキの言い分を聞いて確かにと俺も頷く。シュミネの能力はぶっちゃけ〈エデン〉では埋没しやすい。タンクが優秀なので、ヒーラーの出番があまり無いのだ。
〈エデン〉は未だに、戦闘不能者をダンジョンで出したことが無いのである。
俺はナキキに続きを促した。
「は、はいっす! そこでっす! このスロット付きの武器なら色んなバリエーションで味方を助けることができるっす! シュミネがもっと活躍できるんっす!」
「ナキキ……」
ナキキのセリフの説得力に、当のシュミネも割と感動している様子だ。
「確かにそうね」
「これは、決まりね。その杖も、誰かに使ってもらった方が喜ぶわ」
フラッと行きそうになったラナもストップするほどだ。
シエラも少し微笑みながら懐かしむように〈サーテントマナライトの杖〉を見て、それで誰が使うかは決定したな。
「シュミネ、頼りにしているわよ!」
「は、はい! その、あまりINTにはポイントを振ってないので、どこまで貢献できるかは分かりませんが、頑張らせていただきます……!」
こうして〈サーテントマナライトの杖〉の行き先が決定。
意外にもシュミネの手に渡ることになったのだった。
「これは、帰ったら早速メイリー先輩に『能玉化』を頼みにいかないといけないな!」
「どんな〈魔能玉〉ができるのか楽しみね!」
「ええ。あの時よりも要らない武器の在庫は山のようにあるわ。それに失敗作も多いという話だから、そういうのから試してみましょう」
「あのシエラさん。その失敗作でも他の学生にとっては垂涎の武器なのですからあまり消費しすぎるのはダメですよ?」
「あら?」
シエラがうっかりするほどの1品。
俄然楽しみになってきたんだぜ。
「次は、ミジュだ!」
「忘れられたかと思った」
「そんなことありませんよ」
ナキキの次は〈金箱〉の前にスタンバっているミジュ。杖を受け取ったシュミネもやって来たので、ミジュがお祈りして〈金箱〉をオープンした。
すると中に入っていたのは――〈お祭りフレフレファイヤー杖〉という杖だった。
形は、杖の先端が大量の提灯になっている。かなり大きな両手杖だったんだ。
「なにこれ?」
ラナが目を点にしていたよ。
なんとなくこれを振りながら祭りの神輿の前を先導すると絵になりそう、という光景が過ぎった。
〈幽霊の洞窟ダンジョン〉のレアボス〈デブブスペシャル〉は、別名〈お祭り好きのマッスルデブブ〉と呼ばれていたほどのお祭りデブブ。その関係のドロップだろうなぁ。
「『解析』した結果、能力値だけはそこそこ高いですよ? 特に『ハイグレードファイヤーワークス』と『ファイヤーボール300発』はかなりの威力を誇るみたいです」
「『能玉化』いき?」
「「「!」」」
能力が良くても絵面がちょっと。
みんなの心が1つになった時、カルアのポツリと呟いたセリフに、みんななにも言わなくなってしまったんだ。
うん、『能玉化』の第一号は、これで決まったな!




