#1983 6層を跋扈するエリアボスの存在―〈デブブ〉!
「幽霊はみ~んな眠っちゃいなさい――永遠にね! 『ナイトメア・大睡吸』! からの――『MP全吸収』! 成仏するのよ――『夢楽園』!」
「「「「ケーーーーー!?」」」」
「私も負けてられないわー! 『レクイエム』よ!」
「「「「「ケーーーーー!?!?」」」」」
「わ~、光が綺麗だな~」
「それ〈幽霊〉が消えてる光だよ!?」
「強制的に天に召されてるだけですのー!」
この6層で大活躍しているのは2人、エリサとラナだった。
エリサはいつも通り〈良い夢をごちそう様〉戦法で、ラナは〈幽霊特効〉の『レクイエム』で一掃。
もうね、6層に入ダンすることを、なぜ手間取っていたのかと言いたくなるような、順調な侵攻だったんだよ。
あとエリサは燃費もとてもいいので優秀。
ここの〈アルティメットゴースト〉たちは無属性の物理にとても強いせいか、〈即死耐性〉などを持っていないので本当にバンバンぶっ刺さるのだ。
周りは召された(強制)〈幽霊〉たちの光によって、なかなか美しく清らかな風景となっていたんだ。
「はーい! 次はエリサちゃん、いっきまーす!」
「バトンタッチね!」
そう言ってパチンとハイタッチして順番を交代するエリサとラナがとても手慣れている。
クールタイムを考えて、エリサとラナが交互に召して(強制)いるのだ。
うちのヒーラーが強すぎる!
やっぱ〈幽霊〉にはヒーラーは鉄板だよね。
「シエラ、大丈夫だ。これなら怖くないだろ?」
「そうね……」
そしてシエラは相変わらず俺の側だ。
怖くない組が怖い組をかばう必要があるからね。しかたないんだよ。
「そうね」と言いつつも俺の側から離れないシエラがマジ可愛いです。
「ケーーッケッケッケッケ!」
「むむ! 『危険感知』に反応あり! 『エリアボス探知』! 来てるよ! こっちの道!」
「エリアボス来てるぞ!」
しかし、そこに襲来する影有り。
カイリがしっかり索敵してくれたおかげで俺たちはすぐに臨戦態勢を取ってそいつを出迎えることができたんだ。
「今までのエリアボスは、それまで追想してきたダンジョンのボスがさらに進化した形態だった!」
「つまり、今来ているエリアボスは〈幽霊の洞窟ダンジョン〉のボスの進化系、ということですわ!」
みんな〈幽霊の洞窟ダンジョン〉のボスを覚えているだろうか?
別名〈筋肉殺し〉なんて異名で恐れられた〈幽霊〉系列のボス。
その名は〈デブブゴース〉。
レアボスはその進化系、〈デブブスペシャル〉だったな。
ならば、この6層に出現するエリアボスももちろん――〈デブブ〉系である。
「ケーーッケッケッケッケ!」
「見えましたわ! エステルさん!」
「はい――『看破』! 出ました。あれの名は――〈幽霊帝王・アルティメット・デブブゴース・スペッシャル〉、です!」
「幽霊帝王ですの!?」
「なんかいっぱい手下を連れて来ているよ!?」
ボッと燃えるかがり火。
洞窟の側面にあった消えたかがり火が、いつの間にか燃え、紫の炎となってゆらりと不気味な光を洞窟内に照らし出す。
「きゃっ!」
あ、今シエラから「きゃっ」て聞こえた!
じゃないじゃない!
正面を見ればやってくるのはまるで百鬼夜行を思わせる幽霊の軍団。
〈アルティメットゴースト〉だけじゃない、その進化前の〈スペシャルゴースト〉や〈スーパーのお化け〉たちが、わらわらと巨大な〈幽霊〉の周りを漂っていたんだ。
「ケーーッケッケッケッケ!」
「きゃあ!」
あ、今シエラから「きゃあ!」て聞こえた!
じゃないじゃない!
やってきたのは巨大な〈幽霊〉。不気味な笑い声が洞窟内を木霊する。
まん丸と太り、全長は10メートル級。
そしてやはり目を惹くのはその腹だ。〈デブブゴース〉の時、痩せこけた失態はもう犯さないと言わんばかりの驚異のでっぷり腹。
たっぷりと蓄えてきたと言わんばかりの自信のある顔つきまでしていたんだよ。
そう、こいつが〈万界ダン〉の6層エリアボスにして〈デブブゴース〉の最終進化系――〈幽霊帝王・アルティメット・デブブゴース・スペッシャル〉だ!
「ケーーッケッケッケッケ!」
「アイコンが見えました、2ですわ!」
「よし、1班と3班で行くぞ!」
「周りの〈幽霊〉たちは私に任せなさい!」
「ヴァンさん、あなたは後ろを振り返ってはいけませんよ? 前だけを見るのです」
「りょ、了解であります!」
3班はラナ、エステル、シズ、パメラに加え、タンクはヴァンだ。
後ろを振り返れば、こちらも驚異の胸部装甲にヴァンはやられてしまうだろう。
幽霊に動じないタンクとしてラナの班に組み込んでしまったが、失敗だったかな? 大丈夫かな? いや、ヴァンにはいい加減慣れてもらわなければならない!
「戦闘開始! こいつはとりあえず〈デブブ〉と呼称するぞ!」
「「「「「はい!」」」」」
1班と3班が前に出る。すると。
「ケーーッケッケッケッケ!」
「やはり〈デブブ〉の戦法はそのままだ。召喚と吸収を使ってくるぞ!」
初手は〈デブブ〉の『幽霊召喚』。だが前のように〈チビゴースト〉を生み出すのではなく、〈アルティメットゴースト〉から〈チビ・アルティメットゴースト〉まで様々な〈幽霊〉を召喚したのだ。
そして〈デブブ〉の周りでゆらゆらしていた〈幽霊〉たちも一斉に俺たちに狙いを定めると、火球を作り出して――。
「そうはさせないわ! ――『レクイエム』!」
「ケ!?」
だが、相手が悪かったな〈デブブ〉。あと〈デブブ〉の周りに居る〈幽霊〉たち。
こっちにいるのは――【大聖女】なんだ。
『レクイエム』の光に呑み込まれ、阿鼻叫喚――とは思えない清らかな光が舞った。
「ケーーーー!?」
これには〈デブブ〉もびっくら驚いたことだろう。
ラナの〈幽霊特効〉のそのダメージは半端ではない。さらにラナがアクセ装備している腕輪のスキル、『一発浄化』や『幽霊キラー』によって弱いやつは一発で光にされてしまったのだ。
〈デブブ〉本体も凄まじいダメージを受けている。
だが、本体にダメージが与えられると、眷属たちが一斉に攻撃してきた者を狙うという特性が〈デブブ〉にはある。ラナが大量の〈幽霊〉たちに狙われてしまったな。だが、大丈夫だ。
「これが自分のやるべきことであります! 出でよ我が拠点――『第二拠点建造』!」
「飛んで火に入る夏の幽霊とはこのことっす! 『幽霊は皆クラッシャー』っす!」
「「「「―――!?」」」」
タンクが前に出て、ラナを守るようにしてお城を創造。
ラナはお城のお姫様になった。
さらにタンクであるはずのナキキがとても物騒なことを言いながらハンマーを振るうと、怒り心頭状態でラナに群がろうとした幽霊たちが一斉にチュドンされて光にされていく。
「行くぞエステル! この間に本体を攻撃だ!」
「懐かしいですね。腕が鳴ります! 『ホーリースラストバースト』!」
「『天光勇者聖剣』!」
「ケ!?」
〈聖属性〉で本体を攻撃すれば、中々のダメージ。
「ケケケケケー!!」
さらに30体の〈幽霊〉を召喚して俺たちを迎撃せんとした。
基本、火球や大火球の連射が俺たちに向かう。
「おっと『勇竜盾鱗』!」
「助かります、ゼフィルス殿!」
だが俺は自分の盾装備の武具スキル、竜の意匠の盾を顕現させる防御スキルで火球たちを全て防御した。
この盾は竜から作ったため、〈火属性〉ダメージに対して大きな軽減効果がある。あれだけの大量攻撃だったのにもかかわらず、俺へのダメージは1割にも満たなかった。
「あ! 〈デブブ〉の口に〈幽霊〉が入って行くデース! 回復されてしまうデスよ!」
「させるわけがありません――『呪縛の閃弾』!」
「ケケケ!?」
〈デブブ〉は生み出した〈幽霊〉を食べるとHPを回復できる『吸収』系のスキルを持っている。
しかし、そこはシズが〈回復妨害〉が籠もった銃弾を一緒に口の中へプレゼントしたことでそうは問屋が卸さず、デバフ発生。〈デブブ〉のHPは1ドットも回復しなかった。無駄にペロッと食べただけになってしまったな。
「ナイスシズ!」
「「「「「ケケケケケー!!」」」」」
「おおっとシズはやらせないデース! 『大忍法・分身百花繚乱』!」
〈幽霊〉たちが今度はシズを狙って集団で襲ってくるが、そこに立ち向かうのは大量の分身パメラたち。『大忍法・分身百花繚乱』は周囲に散っている分身たちを一箇所に転移で集め、一気に物量で攻撃するスキル。
パメラの装備〈竜刀〉の武器スキル『正面強撃』は正面から攻撃するときに限り〈幽霊特性〉などでも普通にダメージを与え、さらに強撃にするパッシブ効果だ。女忍者パメラに〈幽霊〉とか効かない。
すでに分身を作りまくっていたパメラが集めた分身はざっと20体以上、それが幽霊たちに襲い掛かった。
「ケケケーー!?」
「そのお命、頂戴デース!」
「私も負けてられないね~! 大魔王様たち! どんどん〈幽霊〉狩っちゃって!」
シヅキも加わり、まずは取り巻く眷属の方をガンガン削る。
初級の〈デブブ〉の頃は眷属を召喚すればするほどHPを減らす特性を持っていたが、最上級〈デブブ〉のその腹に蓄えた脂肪は伊達ではなく、HPはあまり減らずに召喚を繰り返すのだから厄介。しかし、眷属がやられればやられるほど、確実にそのHPは減っていく。
「『聖域に立つ惑いの双子樹』!」
「ありがとうシュミネ」
「『幽霊は皆クラッシャー』っす! ミジュ、行くっす!」
「うん!」
こちらでは大量の火球をシュミネが迷いの樹を召喚して遠距離攻撃を迷わせ逸らし、ナキキが〈幽霊〉を大量に屠ってミジュが通れる道を作ると、ミジュが走る。
「『ビッグクマン・グロリアスクローベアード』!」
「ケケケケケー!?」
ミジュの上級ユニークスキル『森界に君臨せし王者の跋扈』はオールキラー。
全てのキラー系スキルを内包している究極キラーだ。
キラーは特効を意味する。もちろんそれは〈幽霊特性〉にも特効だ。すべてにおいて最大1.5倍ダメージを与えることが可能。
ミジュにとっては〈幽霊〉も敵では無いのだ。
ズドンと強烈な腹パンが直撃し大きくHPを減らす〈デブブ〉。そこへ、
「トドメよ! 『レクイエム』! それと――追加の『大聖光の無限宝剣』よ!」
「俺も行くぜ! 『天光勇者聖剣』!」
「ケ!?」
ズドドドドドドドズバーーーーン!
ラナが『レクイエム』で最後の眷属〈幽霊〉を一掃し、宝剣発射。
俺が『天光勇者聖剣』で〈デブブ〉本体の動きを止めてしまえば、そこに大量の宝剣が突き刺さって〈デブブ〉のHPをゼロにしたのだ。
「ケケ、ケ~~…………」
まるで、またダメだったか~と言わんばかりにエフェクトの海に沈んで消えていく〈デブブ〉だったが、今回は全く痩せていなかったのだった。ナイスフードファイトだったぜ〈デブブ〉!




