#1976 アイギスの装備完成! 真の最強装備全一式!
「完成や! やったで!」
「出来た。ついに出来たで! うちらの渾身の合作! 最高傑作の全身装備が!」
学園長に根回しという名の打ち合わせをした翌日。
ついにそれは完成した。
もうね、マリー先輩もアルルも、その出来に打ち震えるようにして視線は釘付け状態。自分たちが作ったものだというのに目が離せない、そんな心境を全身で表していたんだ。
「すげぇ」
かく言う俺もその虜だ。
全身防具を装着したマネキンに近いもの。
全身鎧一式、そして片手槍と大盾も横にある台に寝かせてあった。
「これが〈座天戦突シリーズ全集〉かいな……!」
「そんで片手槍の方が〈竜聖槍・アスカロン〉。これ、伝説なんかに出てくる槍なんやけど? ホンマに実在しとったんか……」
全身鎧一式、それは〈聖界ダン〉の30.5層ボス、〈座天使・ソロネ〉のドロップ品にして、槍持ちや〈騎乗〉する者に大きな補正を施す専用装備。
まさに「騎士爵」であるアイギスのためにあるような装備、〈座天戦突シリーズ全集〉だった。
神秘的で精錬された魂を連想させる白と赤を基調としたデザイン。
王冠にも似た赤のサークレットが煌めきを放ち、それだけで思わず威光に膝を付きたくなるような神々しさがある。
デザインはシンプルに白服に赤いアーマーが装着されたもので、腰から伸びる大きなマントがスカート風となり足首近くまで伸びていた。
中の白服もスカートで、丈は腿の辺り。腰には金属の盾に近いアーマーが装着されて体を保護している。
足は腿まである大きな金属系のブーツで、足の動きを阻害せず、竜に跨がっても問題ないデザインとなっている。
これ絶対アイギスに似合う。
それだけではなく能力も凄い。
「騎士爵」や〈騎乗〉、【竜騎士】系の職業持ちではないと真の能力を得られない性能だが、アイギスは両方を満たしているため、得られる恩恵は桁違いに大きい。
もちろん最強装備としてアルルとマリー先輩が合同で、これ以上ない数値に仕上げている。
さらに〈装備強化玉〉と〈性能限界玉〉を使い、真の最強装備にしてあったのだからその能力値はとんでもないものになっていた。
例のクイナダの〈森界狼新王シリーズ全集〉よりもさらに数値が伸びているのだ。
見る人が見れば国宝を軽く超えていると騒ぐかもしれないな。
ふふふ、これが真の最強装備よ。
加えて槍。
〈竜聖槍・アスカロン〉。
これは〈鉱ダン〉最奥レイドボスの〈ドラゴレム〉を周回していたときにドロップしたレシピの1つ。片手槍の中でも真の最強装備まで強化するに相応しいものの一角だ。
アスカロンと言えば竜退治で使われた剣として有名だが、〈ダン活〉では【竜騎士】系が持つと能力値に特大の補正を加えてくれる専用装備の槍として登場している。
【竜騎姫】であるアイギスももちろんその恩恵に与れるため、真の最強装備にする価値のある1品だ。
まさにアイギスのための槍と言っていい。このレシピもドロップしていたからこそ、俺は真の最強装備の発表まで持っていこうとしているのだ。
「改めて見ても、自分らがこれを作ったとは、ちぃと実感湧かへんなぁ」
「何言うてんねんアルル。槍も盾も防具も、みんなアルル主体で仕上げたもんやで?」
「そ、そうなんやけどな」
全部金属系メインだからな。しかし、鎧は布系がかなり使われているのでマリー先輩の仕事もかなり多かったはずだ。
俺としては、2人の合作として世に打ち出したいと思っている。
「あの、呼ばれて来たのですが。ここで合っていたでしょうか?」
「アイギス! よく来てくれたな!」
「装備と装着者のご対面やな!」
「おっと、ちょい止まってアイギスはん、そうや――よし、ええで!」
「お、マリー先輩。それは粋な計らいだぜ!」
アイギス到着。
ここは実はアルルではなく、マリー先輩の工房。つまり〈トップマリー〉の一室だった。
〈エデン〉の工房だと誰かに見られる可能性があるからな。まず見るのはアイギスからじゃないといけない。
しかしここでマリー先輩がちょっとしたサプライズ。
ふぁさっと布を被せてアイギスがこっちに来る前に装備が見えないようにしたのだ。
きっとこの後、お披露目と言って布を取っ払うことになるだろう。
やっべ、楽しみになってきた!
やっぱマリー先輩は素晴らしいぜ! よ、リアクションの達人!
「さぁさぁアイギスはん、こっち来てや」
「これ見たらきっと腰抜かすで!」
「え? え? もしかして、もう完成したのですか?」
「「「完成したぜ(で)!」」」
「話が来たのが昨日なのに……もう?」
アイギス、ようやく自分が呼ばれた事に得心がいったのか驚きつつも納得の表情になっている。
どうやら予想出来ていたらしい。もう少し驚いてもいいんだよ? アイギスは驚きが足りていない。
ふっふっふ、だが安心してほしい。この後たっっっぷりと驚いてくれることになるだろう。世紀の瞬間だ。俺はスクショを構え、布が被せてある装備とアイギスが収まるよう位置を調整した。
「ゼフィルスさん?」
「アイギス、俺たちはアイギスに今後どんなボスにも負けない素晴らしくも凄まじい装備を用意した。どうか受け取ってほしい」(キリッ)
なんだか訝しげにこっちを見るアイギスに、俺はいつもより3割くらい引き締めたキリッとした顔でそう言った。
「兄さん、そういうのはスクショを持ちながら言っても効果は半減やで? まあ、アイギスはんには効いてるみたいやけど」
「これは仕方のないことなんだマリー先輩! 人類で最初に真の最強装備を全身に装備するアイギス。その初のお披露目を俺は後世に残さなくてはならないんだ!」
「そんな使命感、今まで無かったやろ」
マリー先輩のツッコミが鋭すぎてちょっとニヨニヨする。
「で、本音は?」
「驚くアイギスのスクショが撮りたい」
「素直で宜しいわ!」
小声でこっそり本音を聞いてくるマリー先輩に俺もこっそり伝えた。
マリー先輩もこの本音は理解してくれると確信していたよ!
もちろんアイギスはこれから与えられるだろう装備に釘付けで俺たちの会話は聞こえていない。
「待たせたなアイギスはん。もう察しているかも知れへんが、ここにアイギスはんの専用装備を用意した。兄さんからの依頼や」
「ゼフィルスさんからの」
こっちをチラリと見るアイギスに手を振る。
マリー先輩、俺の株を上げてくださりありがとうございます!
「作製に携わったんはうち、アルル、ハンナはん、それに〈エデン〉のメンバーの皆様や。〈エデン〉が採ってきた素材をハンナはんが昇華し、それを元にうちとアルルで丹精込めて仕上げたんや」
「渾身の出来や! アイギスはんもきっと気に入ると思うで」
「とても緊張してきました。それと同時にドキドキもしています。そちらが?」
「せや、それじゃあアルル、準備はええか?」
「もちろんやマリー姉。〈幼若竜〉の用意もばっちしや!」
「ほないくで! お披露目や! これがアイギスはんの装備、槍、盾、そして全身装備一式や!」
そう言ってマリー先輩が布を捲る!
まぶしいくらいに煌びやかに登場する装備!
俺のスクショがパシャパシャ唸る!
「わぁ! これが、私の最終装備……! 凄い、強そうです! いえ、強いなんてものではありません。このオーラは――!」
「クワァ! クワァ♪」
布から出てきた装備にまずアイギスは感動を受けたかのように驚きに目を瞠る。
その装備の威光に打ち震えていた。
『小型化』したゼニスは真っ先に〈竜聖槍・アスカロン〉の下に飛んでいき、なんだか喜びの声を上げている。でもそれ、竜殺しですよゼニスさん?
「そしてこれが、能力値や――『解析』! まず武器の槍が――」
「――え? そんなに、なんですか? うそ、だって私の〈セラス〉の1.5倍近いじゃないですか!」
アルルの説明にアイギスが悲鳴に近い声を上げた。
ちなみに〈セラス〉とは〈天魔槍・セラス〉のこと。
上級上位のランク8、〈教会ダン〉のレアボスこと〈ヌーガ〉からドロップしたレシピから作った最上級装備。
だが、これも所詮は〈金箱〉級。
レジェンド級であり、さらに〈性能限界玉〉まで使って真の最強装備に仕上げた〈アスカロン〉の性能は、〈セラス〉の1.5倍近い数値を誇ったのだ。
専用装備とはいえこの数値には、さすがのアイギスも驚きを禁じ得なかったようだな。良い写真がいっぱい撮れてしまった。
「鎧も! さすがに〈暗黒竜〉から作った装備の倍には届きませんでしたが、それでもこれは――!? 本当に1段上なだけの装備なのですか!?」
「1段ちゅうか、兄さんが揃えた諸々のせいで3段くらい上がってんのとちゃうか?」
「な~」
マリー先輩とアルルが、なぜか他人事のように「な~」してる。
それ作ったのも2人だったよね?
「こ、この盾は!? 〈火属性ダメージ100%カット〉!? 100%カットってなんですか!? 盾単体で〈火属性〉を無効化!?」
「その認識で合ってるでアイギスはん」
説明と解析が続く毎にアイギスの様子が乱れていく。
まさに「ひえ!? そ、そんなにですか!?」と言わんばかり。
どうやらアイギスが予想していたよりも、数値が2段階くらい高かったようだ。
「これを私が全身に着て、ゼニスに乗ったところをお披露目するんですか?」
「絶対に大騒ぎになるわな」
「な~」
そう言いながら、3人の視線が俺に向く。
俺は深く深く頷いた。
「そうだ。世界に、真の最強装備とはどんなものか知ってもらう! 目指せ最強! その真の頂きとは何か! 完成系を世界にお披露目してやろうぜ!」
俺が〈ダン活〉の最強とは何か、その1つを教えてやるぜ!
お披露目のために完成したことを研究所を含めた各所に連絡しないとな!




