#1974 史上初、全身を真の最強装備で揃えちゃおう!
「兄さん? 何か言うことはあらへんか?」
「はい! とってもごめんなさい」
「全く、アルルが目を回してしまったやないの」
俺はマリー先輩にお説教されていた。
マリー先輩の装備全集もまだ半ばではあるものの、2人が個別に作業できる時間は貴重。
特にアルルは盾や武器などがメインだ。防具作製でマリー先輩と合同でやるとそっちの時間が足りなくなってしまう。故にアルルの自由時間というか、作製時間は貴重なのだ。
「仕方なかったんだ。見てくれマリー先輩。生産職なら見れば分かる」
「……なんか見るのが怖いなぁ」
そう言いつつもマリー先輩も気になっていた様子だ。
この独特のオーラとでも言うような異彩を放つ、間違いなくスペシャルと断言できる盾に。
もちろんアルルが〈性能限界玉〉まで使って仕上げた真の最強装備、〈竜猫炎化大盾+★〉だ。
ごくり、そう息を飲んだのが伝わってきた気がした。
マリー先輩は〈幼若竜〉を持つと、〈竜猫炎化大盾〉に向けて『解析』を発動する。
そして現れた解析結果の表。
それを見て、一瞬でマリー先輩が目を見開き、震えだした。
俺はニヤリと笑った。
「兄さん! なんて、なんてもんを作ってしもうたんや!!!!」
そして爆発! 大いに爆発! マリー先輩の声が天高く広がったような、特大の爆発が鳴り響いたんだ!
「はははははは! どうだマリー先輩! これぞ〈エデン〉の至宝! 〈エデン〉の技巧! 最強装備にさらに手を加え、〈装備強化玉〉から〈性能限界玉〉まで使って限界突破した、真の最強装備!! 〈竜猫炎化大盾+★〉だーーー!!!! 作ったのはアルルだけどな!」
「アルルー! でかしたわ!! これはとんでもないもんやでぇ!!」
「マ、マリー姉、まだ揺らさんといて~!?」
俺のこれ以上ない盛り上げ台詞にマリー先輩が速攻でアルルに走ってガクガクした。俺、置いてきぼり……!
まあマリー先輩もとてもハイテンションで喜んでいるようなので良しだな!
「兄さん!」
「おう、マリー先輩!」
だけどマリー先輩は俺のことを忘れてはいなかった。嬉しい!
「判決、兄さんは有罪や!」
「あれーーーーー!?」
「こんなとんでもないもんをアルルと一緒に作ってからにーーー!! ついでに言えば、真の最強装備はうちが先に作るはずやったのにーーー!!」
天国から地獄(?)。
またもやマリー先輩からお説教が!?
いや、これは単純にジェラってるだけだ。
「マリー先輩、落ち着け。大丈夫だ。まだこれからだ。最終装備はきっとこれからのダンジョンで手に入る。大量の装備レシピの中、最も強い装備が判明したらマリー先輩に真の最強装備を作ってもらうから」
「それうちしか作れんやつやないの?」
ふう。今日のマリー先輩は鋭すぎるぜ。
最上級ダンジョンのランク5、〈神界ダン〉で手に入るだろうレシピは、間違いなく最強に分類される。それをマリー先輩に託すと約束したのだが、マリー先輩以外では作れないんだからどのみちマリー先輩に任せるしかないことに気が付かれてしまった。
「分かった。次はマリー先輩の番だな。ならば全集装備全てを性能限界突破させた一品を作ろうじゃないか! この〈竜猫炎化大盾〉も含めてな!」
「ゼフィルス兄さん!? それはつまり?」
「次は――アイギスの装備を、それも盾を含めた防具全てを真の最強装備で作ろうじゃないか!」
次の方針は決まったな。
ゼルレカの装備が終わったら、次はアイギスの番だ。
幸い、ランク3レイドボス、〈座天使・ソロネ〉から「騎士爵」系の専用装備レシピはドロップしているからな!
「ええんか兄さん!?」
「おう。アルルとマリー先輩の合作でもって、世界初の真の最強全身装備を作ってやろうぜ!」
「兄さん! 大好きや!」
「俺もマリー先輩が大好きだ!」
ヒシッと抱きつくマリー先輩と俺。でも今回はクルクルはしない。いつものノリだ!
ここでようやくアルルもダウンから復帰。
「でもええんかゼフィルス兄さん? タンクやのうて?」
「大丈夫だ。まだ〈万界ダン〉には行かないしな。もうちょっと装備を調えてからの予定だし、〈万界ダン〉入ダンまでに揃えれば問題は無いだろ。アイギスの装備はどのみち作る予定だったしな」
特にアイギスはアクセサリー装備枠①②にゼニスを装備している関係で、普通より装備できる枠が少ない。盾も合わせて7つまでしか装備できないのだ。
盾、頭、体①、体②、腕、足の6つを揃え、片手槍を用意すれば――史上初、世界で全身限界突破した装備で揃えた騎士の誕生だ。夢がいっぱい過ぎる!
その栄光を、初期の三大生産職、ハンナ、マリー先輩、アルルの3人に担ってもらおうと思う。
「……その口ぶり、兄さんはダンジョン攻略以外に何か狙いがあるんやな?」
「え? そうなんゼフィルス兄さん?」
「マリー先輩にはお見通しか! さすがはマリー先輩、その通りだ」
ここで一拍溜めてから、俺はキリっとした決め顔で述べる。
「俺は真の最強装備という存在を世界に広めたいんだ。これほどの装備があるんだと、これほどの装備が作れるのだとみんなに知ってほしい。俺は是非ハンナが最高の素材を昇華し、マリー先輩やアルルが仕上げた装備を世界に向けてお披露目したい!」
「「!!」」
世界の頂点をお披露目したい。
それは憧れであり、最上級ダンジョンに入ダンし素材を確保し、レベルを上げれば、自分たちでも手が届きうるという夢だ。
頑張れば届く、そう世界が認識すれば、必ずや届こうと手を伸ばしてくる。
現在、最上級ダンジョンを攻略中のギルドはまだ〈エデン〉のみ。
俺たちが前にパワーキャリーしたギルドは、あれからそこそこの時間が経っているにもかかわらず、軒並み上級上位ダンジョンから抜け出せていないのだ。きっと憧れが足りていないからだろう。
最上級ダンジョンで何ができるのか、それを知れば、彼ら彼女らはもっと頑張ってくれるに違いない!
故に、俺はこの真の最強装備の全身フル装備をお披露目したいと考えていた。
「頼むぜマリー先輩、アルル。世界にお披露目する最っ高の装備を作ってくれよ!」
「ふ、そこまで言われて断るのは生産職の名折れやで! これほど生産職の名誉を振るわせる仕事は初めてや! 完璧に仕上げたる!」
「うちらに任しときゼフィルス兄さん! 絶対に最高最強の装備を作ったるわ!」
「頼もしいぜ!」
マリー先輩もアルルも即決。頼もしすぎるぞ!
アイギスは年長者だし、世界初の全身真の最強装備で身を固めた人物として矢面に出ても問題ない人選だ。
よし、そうと決まればアイギスにも早速話を持っていくとしよう。
◇
「というわけなんだアイギス。今マリー先輩とアルルが仕上げている世界初の真の最強装備、それを全身に着た最初の人物になってほしいんだ」
「え? ええ? ええええ!? そ、そんな大変な名誉を、私がですか!?」
「クワァ!?」
ギルドハウスに戻ってきたアイギスに早速話を通してみた。
1メートル級に『小型化』したゼニスを頭上に飛ばしながら、アイギスがとてもびっくりしたリアクションで聞き返してきたんだ。ゼニスのリアクションも良し。
アイギスはお嬢様と騎士が合わさった、まさに姫騎士といった人だ。
可愛さとかっこよさを兼ね備えた〈エデン〉でも大人びた方なので、こういう矢面に出ることも問題ないかと思ったのだが、アイギスはあわあわ状態である。
「ゼフィルスさん!? そ、それは、なぜ私なんですか!? 〈エデン〉であればラナ殿下やゼフィルスさんの方が……!」
「いや、俺やラナの装備はドロップしてないからな。タネテちゃんが今忙しいらしくてアクセの方が間に合わないから、先にアクセ無しで活躍できる騎士に白羽の矢が立ったという感じだ」
「エステルさん……はそうですよね。ラナ殿下を差し置いて矢面に立つというのは」
「お察しの通りだ。できればアイギスにこの大役を任せたい」
「はふ。そんな大役、私に務まるでしょうか」
「クワァ」
「俺は、アイギスに頼みたいと思っている。できないとは思ってないぜ」
「ゼフィルスさん……」
アイギスがやることは生産職の晴れ舞台でもある。
俺が当初言っていた、必須の三生産職。【錬金術師】、【服飾師】、【鍛冶師】系がついに世に出るんだ。アイギスには、その手伝いを頼んでいる形。
世界初、真の最強装備で身を包んだ存在が注目されないはずもない。アイギスは、一気に時の人となって有名人になるだろう。
どのみちゼニスの正体がバレたら有名人になるのでちょっと早まるだけだ。
色々と迷い、慰めるように隣にやって来たゼニスを撫でて落ち着く様子のアイギス。そして、改めて俺を見た。
「ゼフィルスさん、分かりました。その話、お受けします」
「ありがとうアイギス。頼む」
アイギスはキリッとした美しい表情で俺に告げた。
その姿は、伝説の【竜騎姫】と言うに相応しい。そんな存在感が出ていたんだ。
一生記録に残したい衝動に駆られたが、それは装備が出来上がった時のために取っておこう。
真の最強装備完成。それを目指し、一気に時は動き出す。
根回ししまくらないと! まずは学園長に連絡だ!
装備は多分、明日には完成します!




