#1973 アルル総仕上げ〈性能限界玉〉エンチャント!
「アルル、最後の仕上げだ」
俺はそう言ってあるアイテムを渡す。
+10の最高傑作品。それをもう一段強化する。
「それは――〈性能限界玉〉やな」
そう、俺が取り出したのは〈性能限界玉〉。
その効果は性能限界まで強化した装備を、1回だけさらに強化できるというもの。
1回と聞くとしょぼいように聞こえてしまうかもしれないが、この1回の強化値がかなり高い。いやかなりというか、もうとんでもない数値だ。
文字通り、強化の限界を突破してくるのだ。その結果、なんと補助的な新たな効果が付与されるのである。要は――エンチャントだ。
「ついにこの時が来た。今までずっと貯めていた〈性能限界玉〉。それを使う時が!」
「前見たときは800個くらい在庫があったなぁ。あれ、そこそこ当たりやすい分類やけど集めすぎやないかと思ったわぁ」
「実は、そんなことはない。なにしろつい先日〈エデン〉、〈アークアルカディア〉、〈エースシャングリラ〉で、その人数は合計100人になった。1人8から9装備を着けるんだ。その全ての性能を限界突破させたければ――900弱の〈性能限界玉〉が必要になる」
「最初聞いたときはびっくらこいたわ!」
そうだろうそうだろう。俺も最初は〈エデン〉と〈アークアルカディア〉分で70人分の〈性能限界玉〉があればいいと思っていたからな。それが〈エースシャングリラ〉も加わって最低100人分用意しなくちゃいけなくなった。
マリアが〈ダンジョン商委員会〉の仕事で上級ダンジョンの最奥で買い取りしてなければここまで集まってはいなかっただろう。〈装備強化玉〉もしかりだ。
「そして、今まで一度も使わずにここまで来たが、ようやく使う時が来たか。なんだか感慨深いものがあるぜ」
俺は改めて〈性能限界玉〉を1つ取り出し自分の目の前まで持ってきて見る。
これを最初にゲットしたときのこと、俺は今でも覚えている。
この世界に来て初めての〈金箱〉。初心者ダンジョンの奥に隠された宝箱の中に入っていた1つだった。
本来なら一緒に入っていた〈天空装備シリーズ〉を強化せよ。みたいな意味がこもっていたと思うが、俺はこれをスルー。
最上級で作る最強装備に使おうと、今までずーっと貯めておいたのである。
そして、今がようやく使う時だ。
「アルル、頼む」
「もちろんや兄さん。これの使い方は、実は代用品で練習しとったんや。ようやく出番かと、うちのスキルがうずいとる」
俺は〈性能限界玉〉を1つ、アルルに手渡した。
アルルはやや不敵と自信に満ちた笑顔でそれを掴むと、〈竜猫炎化大盾〉の上に乗せる。
そしてアルルがハンマーを掴むと。
「いくで――『炎雷鋼・高位付与技能』! 『攻防走エンチャント』やー!」
スキルを使ってガツンと再び叩く。
スキルエフェクトが舞い、それだけで〈装備強化玉〉の時と同じように〈性能限界玉〉も盾に入り、馴染むのが分かった。
アルルの〈四ツリ〉スキル『攻防走エンチャントLV10』は、文字通り装備にエンチャントを付与するスキルだ。『STR+』『VIT+』『INT+』『RES+』『AGI+』『DEX+』いずれかの能力値を付与できる。ただ、それには触媒が必要だ。
つまりは〈性能限界玉〉だな。
加えて下級ユニークスキルの『炎雷鋼・高位付与技能』が鬼のように強いコンボを生み出す。
これは基本〈火属性〉や〈雷属性〉の武器を作ると能力値が強くなるユニークなのだが、エンチャントでも付与する数値が上昇するのだ。
その数値、なんとユニークスキルがLV10の時、エンチャント値を1.5倍! 1.5倍? なにそれパナイ!
どうやらアルルはここぞというとき失敗しないよう、学園クエストで〈性能限界玉〉を使用する強化を何度か受け持ったことがあるらしい。そこで腕を慣らしておいたんだそうだ。
〈エデン〉では〈装備強化玉〉すら滅多に使わなかったからね。アルルには苦労を掛ける!
だが、いくら〈性能限界玉〉を使ったエンチャントが強いからと言って、『エンチャント』系のスキルをLV10まで育成している生産職は少ない。
アルルのこれは〈四ツリ〉だし、上級スキルだからな。
上級生産職すら少ないうえに、滅多に扱わない〈性能限界玉〉を使ったエンチャント。それを育成している人材は本当に少なく、アルルの技能は希少中の希少。
クエストもそれなりの数を受けてきたらしい。
故にアルルの動きは、実に自信に満ちていた。
「出来たで」
「出来たな」
お互い、興奮しているのにあまり声が出ない。
本当に凄まじいものを作った時、人は感動に打ち震えて声が出なくなるらしい。
俺はすぐに〈幼若竜〉で『解析』する。
「盾に付与するちゅうたら1つ、『VIT+』や」
「おおお!」
―――――――――――
・大盾 〈竜猫炎化大盾+★〉
〈防御力750、魔防力730〉
『竜猫炎防盾』『竜猫炎遠隔操作』『〈火属性ダメージ100%カット〉』
『HP+200』『VIT+100』『VIT+150★』
―――――――――――
『解析』の結果が、この性能。
名前の最後にある〈+★〉は性能限界を意味するマークだな。
この装備は〈装備強化玉〉で限界まで強化された上に〈性能限界玉〉まで使われた、ということだ。
また、防御力と魔防力の数値が凄まじい。
700超え?
さっきマリー先輩とアルルで作った合作、〈森界狼新王〉のシリーズ全集、あれの防御力の数値は合計で1500だと言ったな。〈装備強化玉〉と〈性能限界玉〉を使ったとはいえ、なんと装備1つでその半分にまで迫って来たというのだからこの盾の性能がどれほど高いかが分かるだろう。端的に言ってすごい強い!
スキルはさっきアルルも言っていたように、炎で竜猫盾を作製する『竜猫炎防盾』。それを操る『竜猫炎遠隔操作』を持っている。
そして〈火属性ダメージ100%カット〉がまぶしいぜ。カット数値が60%を超えてくるのは〈盾〉カテゴリー特有の能力だ。防具では見られないこのパーフェクトな数値に刮目せよ!
そしてここに『HP+200』『VIT+100』も加わるという破格の性能だった。
ちなみにこの数値、普通の〈金箱〉産の最上級装備なら『HP+140』『VIT+70』くらいが普通なところ、レジェンド級が故にこの数値を獲得していたりする。
『+200』と『+100』は強いて。
最後にここにもう1つ付け加えられたものがある――『VIT+150★』だ。
同じVITなのにもう1つ? しかも★が付いている!
もうお分かりかもしれないが、★は〈性能限界玉〉の証!
この★付きの『VIT+150』は〈性能限界玉〉を使ったエンチャントで付いたという意味だ。
+10という装備強化に加え、上級スキルの『攻防走エンチャントLV10』の効力による強力な付与を得て発現した数値はなんと+150★!
150……?
150か。
え? 150も上がっちゃって良いの? 装備って9箇所に着けられるんだよ?
9箇所にエンチャントすれば、その能力値だけで『+1350』だ。
エンチャントがどれだけ凄まじいかが分かるだろう。
詳細は、『攻防走エンチャント』が『LV10』の時、「元の装備の+値×10」する、だ。
〈装備強化玉〉で〈竜猫炎化大盾+10〉になっていたため、上昇値は「10×10」で「100」。そこに下級ユニークスキル『炎雷鋼・高位付与技能』の効果で1.5倍して合計『+150』である。
これが、エンドコンテンツにして最強装備に俺が付与したいとずっと思っていた〈性能限界玉〉の能力なんだ!
「す、すっげぇ! アルル見てみろよ! 凄い、凄いぞ!」
「なんやこれ? 強化する前は防御力600弱やったのに、今は700超え数値やって? しかも、付与能力がとんでもなさ過ぎるやん! 『VIT+150★』!」
「とんでもないな! 〈火属性ダメージ100%カット〉を合わせれば、スキルが6つ付いているようなものだぞ!」
「スキル6つとか聞いたことないわ!!」
テンション大上昇!
俺とアルルはその装備の数値にテンションが大変なことになった。
「ゼフィルス兄さん!」
「アルルー!」
思わずヒシッと抱きつき、そして。
「あ、ちょっと待ってゼフィルス兄さん!? クルクルはあかん! それ長くなるやつや!」
「そうれクルクルクルーーー!!」
もう止まらなくなった俺は、アルルの背中に手を回し、それはそれはクルクル回ってしまったんだ!
「これは凄まじいぞーーーー!! 間違いなく、もう間違いなく最高最強の一品! これ以上のものは存在し得ないと断言できる――真の最強装備だ! アルル最高だ! アルル最強だ!!」
「わーーーー!?」
クルクルクルーーー!!
軽くて小さいアルルはそれだけで足が浮き上がってしまい、もう抵抗はできない。
テンションが天井を突破してまで上がってしまった俺たちは、マリー先輩が訪ねてくるまでの30分間、ずっとクルクル回ってしまったのだった。




