#1972 ついに完成する〈竜猫炎化大盾〉最強装備!
「マリー姉! 今度はこれなんてどや!?」
「それを誰に着せるねん! いや、うちも着てみたいなこれ!? なにこれええやん!」
「せやろ!?」
「こらこらマリー先輩! 次はこっちだって!」
「わはははは! 今までのお返しや!」
「くぅ! 見事に騙されたぜ!」
最強装備の第一弾が出来上がってからはもう勢いとテンションが留まるところを知らないとばかりに止まらなかった。
見ろ、アルルがなんかごっつくってかっこいい装備レシピを持ってきてマリー先輩を口説こうとしてきたんだ。それ【英雄】系の専用装備だから装備しても使いこなせる人いないよ!?
もちろんマリー先輩の粋な冗談だったようでセーフ。騙されたぜ。
「それで兄さん、次はなんや!」
「次はこれだ〈太陽猫王装備シリーズ全集〉! これをゼルレカ用に仕上げてくれ!」
「ちょ、クイナダはんの次はゼルレカはんか? もっとラナ殿下やシエラはんたちの装備とか仕上げなくてええの?」
アルルの言いたいことも分かる。しかし。
「そっちも考えている、がまずはうちの強デバフ担当、ゼルレカの強化が重要だ! それに〈太陽猫王装備シリーズ全集〉はアーマー要らずだから、アルルの手が空くだろ? アルルはこっちの〈竜猫炎化大盾〉を作ってくれ」
「こ、これは! ……せやったな! うちもテンション上がりすぎて忘れとったわ! うちに任せとき、ばっちり仕上げてやるわ!」
「頼むぜ!」
そう、〈太陽猫王装備シリーズ全集〉は完全に金属系無しの革装ジャンルなのでマリー先輩だけで作れる。その間にアルルには大盾を作ってもらおうという心算だ。
そしてこの〈竜猫炎化大盾〉のレシピを見て思い出したのだろう。アルルがLV100になった暁には真っ先に作りたいと言っていた装備の存在に。
〈猫界ダン〉徘徊型ボス〈融合化・ドラゴン猫〉からドロップしたこの大盾は、当たり前だが徘徊型ボスの素材を使う。
だが徘徊型は周回できず、出会うこともなかなか大変ということもあって素材は希少。使うことを躊躇した結果、LV100になったらこれを打つ! とアルルが言っていた装備だ。テンションが上がりすぎてスポポーンと抜けてしまってたようだな。よくあることだ。だが、思い出したからにはアルルはこれに集中し、やり遂げるだろう。
「よーしやったるでー! マリー姉、またあとでな!」
そう言ってアルルは勢いよく自分の工房に走り去っていったんだ。
「兄さん、アルルに気ぃ使ってもろぉて悪かったなぁ」
「さすがにマリー先輩にはお見通しか」
アルルが去って行った場所を見ながらマリー先輩が隣に立つ。
マリー先輩の目はごまかせなかったようだ。
ぶっちゃけ〈竜猫炎化大盾〉は優先順位的にはそこまで高くはない。
だが、アルルのやる気を引き出し、腕をさらに上げるスパイスとして採用したのだ。
「兄さんの考えていることはお見通しや! 兄さんなら、まず優先して作るんは手堅くタンク装備からやろ。それがクイナダはんからゼルレカはんの装備や。これはなんかあると思うんは当然や!」
「マリー先輩のお見通しの目が凄すぎて丸裸にされそうだ!」
まさにマリー先輩が言ったこと、その通りだ。
ボス戦に重要なのはなにか? ボスの攻撃を受け止めるタンクの存在だ!
故に、まずはガッチガチのタンク装備を作ることが優先される。とはいえだ。
「だがゼルレカの装備を選択したのも優先度が高かったからなんだぜ? なにせゼルレカはHP優先で自身の防御力はそこまで高くない。にもかかわらず大剣でぶった切る前衛だ。レイドボスの攻撃を真っ先に受ける可能性が高い。レジェンド級の装備を着せておくのはゼルレカの生存率を上げるうえで重要だったんだ」
ゼルレカはデバフで相手の攻撃力を弱らせ、耐える。という戦術を得意とする【怠惰】だ。
だが、デバフをじゃんじゃん打ち込むにはボスに近づく必要がある。ボスの側は危険域だ。防御力に難のあるキャラは突っ込ませられない。
タンクも重要だが、ゼルレカの生存もボス戦の優位に直結する。悪い選択肢ではない。それに、シエラ専用の装備全集レシピもまだないしな。
「兄さんはほんま、いつもそんなことばかり考えてるんやな。感心するわ」
「マリー先輩だって生産のことで頭いっぱいだろ? 俺も一緒だって!」
そう言って2人で笑いあうと、マリー先輩がゼルレカの装備に取りかかる。
今度は1人で5つの装備全てを作るので、完成は約3時間後の見込みらしい。
そして1時間が経過したところで、先にアルルが作っていた例の大盾が完成したとの連絡を受けてアルルの工房にお邪魔した。
「見てやゼフィルス兄さん! ついに出来たで!」
「おお!」
俺は感銘を受けた。一瞬で持っていかれたよ。
そこには、赤とオレンジで灼熱を表現し、黒で竜の絵の意匠が書かれた、超かっこいい系の最強装備〈竜猫炎化大盾〉があったのだ。
「これはあの〈炎武・鳳凰盾〉よりも凄まじいで! スキルを発動すると炎が溢れて竜猫の姿を形作ってな、装備者の意思で攻撃をガードしてくれるんや。その範囲が結構広いで」
「〈炎武・鳳凰盾〉の完全上位系の装備、ということだな!」
アイギスの〈炎武・鳳凰盾〉は盾が装備者から分離し、炎の尾で繋がれた範囲であれば自在盾のように空中で動かせる特性を持っていた。
これにより進化前のゼニスに騎乗していた時は、真下からの攻撃でもゼニスを盾でカバーすることができたのだ。
だが、進化して30メートル級になってしまったゼニスだと、盾が届かず、真下からの攻撃が防げないことがアイギスの悩みだったのだ。しかし、これならそれもカバーできる!
そしてお待ちかねの『解析』をかけると、その数値と能力が顕わになる。
凄まじい数値だった。間違いなくこれは、最っ高の出来だ!!
だが、それだけじゃない、俺はある数値に目が釘付けになったんだ!
「レシピに書かれていたのは通常生産時、〈火属性ダメージ80%カット〉だった。だがこれは!」
そう、〈竜猫炎化大盾〉は単体の盾で〈火属性ダメージ80%カット〉ができるとレシピに書かれていたのだ。
だが、これは通常の作品や、高品質の話。アルルが仕上げたのは、最高級品だ。
アルルはこれでもかというドヤッたポーズで言う。
「ふふふ、最っ高の環境で作った結果、なんと〈90%カット〉を実現したんや!」
「すっげぇじゃねぇかアルル!」
そう、その解析結果には〈火属性ダメージ90%カット〉の文字が煌めいていたんだ! これはさらに大きな意味を持つ。なにせ、
「それだけやないで、これ、〈強化玉〉を使うとな、+1につき1%カット率が上がるみたいなんや」
「ごくり!」
――〈強化玉〉。
ついにその名前が出てきたな。
+1というのは1回強化。それをすると、なんとダメージカット率が、91%になるという。知ってた!
そして――最上級の装備というのは+10まで強化できる。後は分かるな?
そう、この大盾は単体で、+10まで全力強化すれば〈火属性ダメージ100%カット〉が実現できるってことなんだよ!!
これは、これはこれは! 強化するしかないじゃん!!
これが最上級装備の強化だよ!
「アルル、〈装備強化玉〉の使用を許可する。――+10まで仕上げてくれ!」
「その言葉が聞きたかったで!」
ついにこの時が来た。
最上級、最強装備に〈強化玉〉を使うこの時が!
すでに2万を超える〈装備強化玉〉を貯め込んでいる。
それを今、開放した。
「〈装備強化玉〉×55個! これで+10まで一気に強化するで!」
〈装備強化玉〉は+する数値分の個数アイテムを消費する。
+1にしたければ1個、+2にしたければ2個必要。そのまま順番に消費し、+を上げ。最後+10の時に10個使用すれば、消費は合計55個だ。
「やったれアルル!」
「いくで――『鍛冶王』!」
ガンッ!
〈装備強化玉〉を盾に載せてアルルがスキルを唱えながらハンマーを振るうと、一瞬で〈装備強化玉〉が盾に呑み込まれ、あるいは入り込み。瞬間エフェクトを帯びて強化されたのが目視で分かった。
「まだまだいくで!」
続いて〈装備強化玉〉を2つ、一振りで盾に打ち込む。
それを――10回繰り返した。
「これで仕舞いや! 行くで――『鍛冶王』!」
ガンッ!!!!
〈装備強化玉〉10個が盾に呑み込まれたその瞬間、大きなエフェクトが盾から発生した。性能限界時に発生するやつだとすぐに俺には分かった。
そして、アルルにもそれはわかったらしい。すぐに〈幼若竜〉で『解析』する。
すると、アルルが震えた。
「やったで兄さん……。〈火属性ダメージ100%カット〉がついてるで!」
「お、おお、おおおお!! すっげぇぇぇぇぇ!!」
〈火属性ダメージ100%カット〉!!
もうこれだけで〈火属性〉魔法は怖くない!
なんだか一瞬目を点にしたサターンの姿が脳裏を過ぎった気がしたが、きっと気のせいに違いない!
「アルル、やっぱりアルルは最高だ! これはまさに最っ高の出来だぞ!」
「こっちこそあんがとうなゼフィルス兄さん! うちも最っ高の仕事が出来たのは、兄さんのおかげや! 間違いなく、この盾はうちが作りあげたものん中で最高の品! そして、いつまでもうちの心に残るはずや!」
万感の思いに近い、感謝をアルルから感じた。
ああそうだな。間違いなくこれを作ったことは、一生の思い出になるだろう!
さあ、最後の仕上げだ!
〈装備強化玉〉で+を限界まで上げたら次は――〈性能限界玉〉の出番だ!




