#1969 素材が足りないレイドボスの旅――金箱400個‼
「マリー先輩はいるか~」
「いるで~」
お決まりのセリフが世界最高デパート、〈トップマリー〉に響く。
そう、俺はマリー先輩からの連絡を受けてここまでかっ飛んできたのだ!
冗談だ。普通に来ただけだ。
すぐに奥の部屋へ通されてマリー先輩ともご対面だ。
「最強装備の満足いくもんが作れたんだって!?」
「せや、兄さんたちがこれでもかと集めてくれはった〈オリハルコン〉、それを昇華した〈天聖祝福のオリハルコンメタル〉は最高やった。まさかうちの【マギクロスアデプト】で鉱石を糸にすることができるとは思わんかったかんなぁ」
しみじみと腕を組んで頷くマリー先輩。
そう、俺たちが集めてきた鉱石、それをハンナが昇華した最強装備の作製素材〈天聖祝福のオリハルコンメタル〉は、なんとマリー先輩の職業の力で糸に加工することができる。
なにせ、マリー先輩の職業は魔法を使って糸を錬成する【マギクロスアデプト】。今までも甲羅や甲殻などのモンスター素材を糸にしてきたマリー先輩である。ただ、鉱石は初だったようでびっくりしていたのだ。
そりゃ鉱石を糸に加工するとかなかなか想像できないだろうからなぁ。
「うちはこの〈天聖祝福のオリハルコンメタル〉の糸をオリハル糸と呼んどるんやけど、こっちは数が足りてんねん。問題はレイドボス素材の方や。このままじゃ足りひん」
「マジか」
レイドボス素材。
それを確保するためには俺たち50人が勢揃いで挑まなくてはいけないとんでもボス。
これまでも少なくない回数を周回してきたが、どうやらまだ足りないらしい。
「兄さん、採ってきてくれへんか?」
「言い方が軽い!?」
「はっはっは! こんなん兄さんたちにしか言わへんで! ちなみに数はこんな感じや」
「多いな! いや、そうか、レイドボス素材、色々使ってるもんな」
「そういうことやな」
マリー先輩からそっと渡されたリストをチラッと見たら、予想よりも相当多くてびっくりした。いったいなぜ? ゲーム時代でもここまで要求されたことは無かった。そこで思い至る。そうだ、リアルではレイドボスを倒せるのは俺たちだけだと。つまり、研究所や学園からも是非研究させて欲しいと言われて流しているのだ。
また、マリー先輩たち生産職組もレイドボス素材をどう加工し生産すればより能力値が上がるのか、その研究でもレイドボス素材を使っているという。なにせ、レイドボス素材を使った装備類は、まだまだ未知の領域なのだ。
おかげで最近は満足いく出来栄えになりつつあり、本腰入れて真の最強装備作製に取りかかろうと腹を決めた。そして、追加のレイドボス素材を見積もったというのが真相らしい。
「せやけど兄さん、これだけは言っとく――損はさせへんで」
そう、挑発的な笑みで俺に言い切るマリー先輩が、実にかっこいい。
俺もニヤリと笑って返すんだ。
「こっちは俺たちの仕事だな。任せておけ! マリー先輩たちのご所望、しっかり承ったからな」
「さすがは兄さんや! 期待してるで」
「ははは! こっちのセリフだぜマリー先輩!」
このレイドボス素材リストにはアルルが欲しがっている物も結構混ざっている。
マリー先輩に渡しておけばアルルと合作で仕上げに取りかかってくれるに違いない。
真の最強装備の完成が、目の前まで来ていると実感した。
〈エースシャングリラ〉のみんなには悪いが、ここで〈エデン〉はレイドボス周回に入る。すぐにシエラ、セレスタン、リーナに連絡を取った。
「分かったわ、ギルドメンバーを集めましょう」
「こんなこともあろうかと、あらかじめみなさんには可能性があることはお伝えしておきました」
「さすがはセレスタンさんですわね! では、わたくしはレイドボスを周回する順番と作戦を練りますわ!」
ギルドメンバーが集まるのは、予想よりも早かった。
みんな〈エースシャングリラ〉の攻略を手伝ったり、〈鉱ダン〉で採集したり、他のダンジョンで素材やお宝を集めたりしていたはずだが、シエラたちが声を掛けると、ものの1時間でみんながギルドハウスに集合していたんだ。
「揃ったわね。――ゼフィルス、後はお願いね」
そうシエラからパスを受けとる。
朝、マリー先輩からメッセージを受けて会いに行き、そこからシエラたちに声を掛けて僅かな時間で全員集合。だが、みんなそれに全く異論や不満はなさそうな雰囲気。
そう、ギルドメンバー全員が俺の言葉を待っていたのだ。俺はじーんと感動にも似た衝撃を心に感じながら、前へと出る。
「みんな、よく集まってくれた! 急な連絡だったのに55人、全メンバーが集まってくれて俺は今とても感動している! まずは礼を言わせてほしい。ありがとう! そして来るべき時が来た! マリー先輩やアルルたちが自分の腕前に納得し、ついに真の最強装備の作製を始めるそうだ! 俺たちは、今からその素材を、レイドボスを狩りにいく! みんな力を貸してくれ!」
「「「「「おおー!!」」」」」
俺がそう宣言すると、ギルドハウスの中が大きな歓声とやる気に包まれた。
大歓声だ。
「みんな、あなたが言う真の最強装備を待っていたのよ。最上級ダンジョンのランク3まで攻略したのだもの。これまでに出た心躍るレシピの数々、それがついに最高の出来で仕上がると聞いて、集まらないはずがないわ」
シエラからそう補足される。
みんなも楽しみだったのだ。真の最強装備が。
ならば、俺がしてあげることは1つ。
その楽しみを、最高の環境でみんなに味わわせてあげることだ!
俺もやるぜ。
やる気とテンションがむくむく上がってきた!
「みんな出発するぞ!」
「「「「「おおー!」」」」」
俺の掛け声にみんなの声も載る。
この日、レイドボス狩りは過去最高数を叩き出した。
なんの過去最高数かって? もちろん周回されたレイドボスが狩られた回数だよ!
ヤバかった。
素材が目的だったからね。今回はいつものクジ引きとか、〈金箱〉をみんな注目の中、ドキドキしながら開ける、なんてことは残念ながらしなかった。
レイドボスを撃破したらドロップした〈パーフェクトビューティフォー〉を全て回収。セレスタンとリーナで『解析』も『解読』もせずに〈空間収納鞄〉に仕舞い。あとで纏めて鑑定するという荒技でレイドボスを狩りまくったんだ。
おかげで今日1日で40体ものレイドボスが光に還ったよ。
問題はその後だ。
「ゼフィルス様、こちらが戦利品の――〈金箱〉ドロップ160個です」
「うひょやばらっち!!」
セレスタンがトドメを刺してきたのかと思った。
レイドボス連続40戦というなかなか激しいバトルに勝利し、ようやく一息吐いたタイミングだったのが余計に脳にキタよ。完全に油断していた。さてはセレスタン、謀ったな? もちろん冗談だ。
「詳しく見させてもらおう」
その日、俺はちょっとだけ夜更かしした。
「ゼフィルス君? 朝だよ~」
「ハンナ~」
「なんだか眠そうだね? 大丈夫?」
「大丈夫だ。昨日はテンションが上がりすぎた影響でなかなか寝付けなくてな。ハンナが来てくれなかったら危なかったぜ」
おかげで朝のハンナボイスがなければ寝過ごすところだったよ。
夜にあんなにテンションを上げてはいけない。眠れなくなっちゃうよ!
「今日もレイドボス狩りに行くの?」
「おう。全レイドボスで最低10体ずつは狩りたいから、10種狩ると考えて最低100体だな。〈金箱〉は400個だ。うひょやばら!?」
「ゼ、ゼフィルス君!?」
やばい、突然発作が。
昨日のあれがまだ残ってるっぽいぜ。気を張らなければ。口から衝動が飛び出してしまう!
その日のレイドボスは、30体狩った。その翌日にはさらに30体狩った。
〈樹界ダン〉で3種、〈猫界ダン〉で3種、〈聖界ダン〉で3種、そして〈鉱ダン〉の最奥で1種、全部10体ずつ狩り、計100体狩りをたったの3日で達成。マリー先輩から頼まれた素材は全て集まった。
そして、レイドボスの〈金箱〉を――400個手に入れた。ふはははははは!
俺はしばらく思い出すと突然発作が出そうになってしまったんだ。




