#1968 ゼフィルス大爆走のパワーキャリーでお届け者
〈エースシャングリラ〉のメンバーが全員上級職になり、上級ダンジョンに挑むようになった。
もちろん、俺たちもサポートしている。
先に進んでいる24人は現在上級中位ダンジョンに入ダン中なので追い掛ける6人をそこまでちょっぱやでパワーレベリング&パワーキャリーしまくった。
「やっぱり上級ダンジョンに突入すると早い。〈エンテレ〉万歳!」
「って早すぎるわよ!? なんで私たち、上級職になってたったの3日で上級下位ダンジョンの攻略者の証を5つも持ってるのかな!?」
「良いツッコミだテルニア。さすがはあのレイテルの妹。姉のレイテルも、俺たちがパワーキャリーしたときは同じようなことをツッコんでたよ。そっくりだ」
「そりゃそうだろうね! というか、お姉ちゃんにもやったのこれ!?」
「レイテルたちが今上級上位ダンジョンで活動できているのは、〈エデン〉がパワーキャリーしまくったからだからな!」
6人の中で最もツッコミ適性が高かったのはテルニアだった。
「ねえ、これ見てよ!」と言わんばかりに5つの攻略者の証、上級下位のものを胸に着けて自慢――ではなく、訴えてくる。
素晴らしいリアクションだった。さすがはレイテルの妹だって思ったもん。
「ぐぬぬ~。なにこの過剰過ぎるお世話。恩がどんどん積み重なって天辺が見えない幻覚が脳裏に過ぎるんだけど。上級中位ダンジョンへの入ダン許可って、2年生どころか、3年生でも一握りだっていうのに……!」
俺とテルニアの仲もこの通りだ。もう、遠慮の欠片も無い言葉使いになってるぜ。
少し前まで敬意を払って多少敬語も使っていたはずなのに、上級下位5箇所の攻略を手伝ったら、色んなものと一緒に吹き飛んでいってしまったらしい。良い塩梅だ。
「安心しろって、まだレベリングは完全じゃない。上級職の力も使いこなせてないんだ。全てはこれからだ」
「良い感じのこと言ってるけど、非常識ってゼフィルス先輩のためにある言葉だと思うんだよ」
「もしかして、褒めてるのか?」
「全然違うよ!? どんな勘違いしたの!?」
テルニアがジト目になったのでつい褒め言葉に聞こえてしまった俺は悪く無いと思うんだ。
ちなみに、ここ数日は〈エンテレ〉、正式名称〈ダンジョンワールド・エンド・テレポート〉を使った最奥ボス撃破を敢行し、追い掛ける6人とナゴをみんな、上級中位ダンジョンの入ダン条件をクリアさせてあげていた。
〈エンテレ〉があれば道中を無視して最奥まで転移でいけるので楽勝。
とはいえ上級ダンジョンの環境対策も知っておかないとまずいので、それもちゃんと実地で教えてきた。故に〈エンテレ〉を使えば5つの攻略者の証なんて1日で集まるところ、3日も掛けて揃えたのである。
とはいえそれでも非常識レベルで早すぎたらしく、こうしてテルニアが可愛くぷりぷりしているわけだ。
「ははは! 豪毅豪毅! 我らがギルドマスターは実に豪快な御方でありますな!」
「そこで笑えるのはグラジオラさんだけです~」
「お菓子が足りない。多分、私は1年分くらい食べても良いはず」
「僕はついていくだけでほとんど何もしていないのですが、こんなにサクサクレベルだけ上げていいのでしょうか?」
グラジオラは両腕を組むいつものポーズで笑っているが、キャロルはちょっとお疲れ気味。エミメナに至っては、多分お菓子ニウム的なものが足りてないみたいな、栄養不足な顔をしていた。ナゴは平静を装いつつも何かに葛藤している様子だな。
「メーレイとロイはどうだ?」
「問題はありません、と言いましょう。自分たちは〈エースシャングリラ〉所属の中でも出遅れているのは事実。こうして追いつく機会に恵まれているのです。感謝すれど、不満なんてあるはずもありません」
「今の俺は輝いている! 自身の実力が、輝きが、どんどん増しているのを感じています! 俺も不満はありません! むしろもっと、ドンと来いです!」
「了解だ。――というわけさテルニア」
「いやどういうわけですか!? 別に私も色々言いたいことはありますが、不満はありませんよ!? ただ言いたいことがいっぱいあるだけです!」
お、テルニアの敬語が少し戻った。どうやら少し落ち着いてきてしまったらしい。
「まあ、まずは〈エースシャングリラ〉の先陣メンバーに追いつくことを目標にしているからな。この高速レベリング&パワーキャリーももう終わりだ」
「むむ。そう聞くと、なんだか寂しいような」
ここまでもの凄い速度でレベリングしていたからか、通常速度に戻ると聞いた途端、少し唇を尖らせるテルニア。
なんだかんだ言いつつ、この高速レベリングを楽しんでいたらしいな。
「よし、それじゃあ仕上げだ。これから〈道場〉へ行き、上級職LV30まで育てるぞ。そうすれば五段階目ツリーが開放されるからな」
「やっぱりゼフィルス先輩は非常識です!」
テルニアの叫びを心地よく背中で受け、俺は続いての目的地へと歩き出す。
上級下位ダンジョンの攻略者の証を3つ手に入れると、〈道場〉のランク11に潜れるようになるのだ。
ランク11とは=上級職LV30までレベリング可能なランク。
QPを払い、2班に分けてから、俺はこの日、〈エースシャングリラ〉の6人とナゴの五段階目ツリーを開放した。
「これで、最低限〈エースシャングリラ〉の先陣24人に合流できるだけの下地が整った。いよいよ合流だな」
「も、もう? 私たち、〈エースシャングリラ〉に加入してから2週間くらいしか経ってないよ!?」
「です~。2週間であってます~」
「感覚的には、1年間くらい修業していたみたいに思えてるです」
「大丈夫だ。〈エースシャングリラ〉の先陣チームも4月から修業してまだ4ヶ月しか経ってない。そんなに変わらないさ」
「いやいや変わるよ!? 4ヶ月で上級中位も十分凄いけど、それに2週間で追いつくなんて聞いたこと無いからね!? 全然大丈夫じゃないよ!?」
そりゃテルニアたちが初めてだからな。
だがここで追いつかないと先陣チームとは離される一方だ。なにせ、戦力が違う。
なのでここで多少無理をしてでも合流するのが最善だ。後は一緒に切磋琢磨するから置いていかれる心配もないし、連携を磨くこともできる。
上級職に慣れてないみんなを無理してここまで連れてきたのは、それが狙いだな。
「それじゃあまずは上級中位のランク1、〈謎室の古跡ダンジョン〉、通称〈謎ダン〉に行く! そこで合流だ!」
「いやいやいや、上級下位ダンジョンの5つ目の攻略者の証を手に入れて、五段階目ツリーを開放したその日に上級中位ダンジョンに入って合流!? やっぱりゼフィルス先輩は非常識!」
「やっぱり褒めてるだろ?」
「褒めてないよー!?」
やっぱりテルニアのツッコミはいい。
ナゴとは一旦ここでお別れしてサトルに預け、〈エースシャングリラ〉の6人を連れて〈謎ダン〉に入ダンした。
そのままエステルの〈イブキ〉に乗って突っ走る。
「きゃー!?」
「モンスターが居ません~?」
「楽ちん。そしてお菓子が美味い」
テルニアが叫んでいるが進行は順調だ。
ここ〈謎ダン〉は非常に特殊なダンジョン。
なにせ、問題を正解することで先へ進めるのだ。しかも、問題は1度解くと、その日は通行可能状態になる。
俺たちが入ダンしたのは午後4時だったこともあり、多くが通行可能状態、かなり色々スルーして先へ進むことが可能だった。周りでは研究所の職員が熱心に問題を調べている。その横をありがたく通行させてもらったよ。
さらに〈謎ダン〉は1層1層が狭いのも魅力の1つ。追いつくのにこれ以上適したダンジョンはない。合流は、〈謎ダン〉で追いつくと俺は決めていた。
そして32層でついに発見する。
「ミツル、ソア」
「ゼフィルス先輩!?」
「お兄さん!? それに、キャロちゃんたちも!? もう追いついたの!?」
「み、みたいです~」
「非常識非常識非常識、有言実行の勇者様!」
「やっぱりテルニア褒めてるだろ?」
ソアたちと無事合流。
テルニアが足をぷるぷるさせながら褒めてくる。なんだろう、すごく良い。
「改めて、ソアたちにお届け者だ。みんなLV30にしておいたが、上級職になってまだ日が浅いから、少しずつ慣らしながら連携を取ってみてほしい」
「お兄さんってすごいよね~。いや、正直こんな早く追いついてくるなんて思ってなかったよ?」
「勇者だからな!」
ランク1はその等級のチュートリアル的なものも含んでいる。
追い掛ける組を慣らすならランク1がいいだろうという配慮も含んでるんだぜ?
急いだ甲斐があったというものだ。
そこから俺たちも合流して、その日は45層まで進んで帰還した。
久しぶりの〈謎ダン〉、良かったぜ。
とりあえず慣れるまで、せめて〈謎ダン〉を攻略するまでは一緒に居てアドバイスしよう。
そう思っていたのだが翌日、ある報告が飛び込んで来たことで俺は別のダンジョンに行くことになる。
「兄さん、大体形にはなってきたで! でも実はまだまだ素材が足りへんのや。悪いけどレイドボス素材を採ってきてくれへんか?」
それは、最強装備作製中のマリー先輩たち生産7人衆からのお願いだった。




