#1944 海に来たら遊ぶ!スイカ割りの洗礼を味わおう
女子全員の水着姿を褒めまくるという高度なご褒美ミッションをこなした俺は、ようやく海遊びを開始した。いや、しようとしたところで度肝を抜かれる。
「って、いつの間にか色々施設ができてんじゃん!」
そう、ビーチバレーコート、ビーチフラッグなどのビーチで遊べるものから、サンドアート的な砂で作るあれこれまでが、すでに完成の域まで出来上がっていたんだ。
「ここが生産職としての見せ所。たとえ素材が砂でも、素晴らしいコーディネートにしてみせる」
「良く言ったわメイリー! それでこそ生産職の鑑や!」
「だからって俺を埋めて型を取らないでーーー!?」
「だって骨組み無いと崩れるし」
近くでは、なぜかサトルがマネキン代わりになってメイリー先輩とマリー先輩に砂でコーディネートされていた。
サトルめ、なにをやったんだ? しかし、早い。なんだあの着せ替え速度? メイリー先輩もマリー先輩も、砂を布地と勘違いしてるんじゃないかという速度で仕上げていくんだけど?
「あ、ゼフィルス先輩、お疲れ様です。……なんか大変でしたね」
「ミツルか! なぁに女子の水着を見せてもらうなんて役得だよ。それよりあれはなにをどうしたんだ?」
近くでその光景を見ていたミツルに近づくと普通に労われた。さすがにあの女子たちの行列には驚いたことだろう。俺も、まさかこんな大所帯になるなんて思ってなかったからちょっと驚いてる。最初は20人くらいだったはずなんだけどなぁ。
でも役得なのは本心である。一片の悔い無し!
「あれは……サトル先輩がメイリー先輩をナンパ? したとかで、じゃあコーディネートの練習になってくれるのならいいよ、と2人の間で合意した結果みたいですよ」
なんと……サトルめ、まさかのメイリー先輩狙いか?
だがこれが成功? なのかな? なんとオーケーが出たらしい。
とはいえメイリー先輩と言えば生産中毒者で昼夜逆転生活しているほどの猛者だぞ? このままお開きになるまでマネキンになっているサトルが見えてくるようだ。
まあ、それも遊びのあり方の1つだろう。
「ミツルは?」
「僕は――えっと、まあいいじゃないですか。はは」
「ミツル君は海に入ったはいいけれど泳げずに沈んで、ここで黄昏れているところなんだよ!」
「なんでバラしちゃうのさ姉ちゃんのバカー! ゼフィルス先輩にがっかりされたらどうするんだ!?」
そこへやって来た双子の姉、ソアがにしし笑いで見事にミツルの秘密を暴露してしまい、混沌発生。
ミツルがぎゃーしていた。
「そんなことで私たちのギルマスががっかりするわけないでしょ? まったく、ミツル君は心配性なんだから~」
「そうだぞミツル。泳げないなんて普通のことだ。海の入り方から泳ぎまで指導するから安心してくれ」
「ゼ、ゼフィルス先輩! で、でもちょっと水に入るのが苦手な場合はどうしたら?」
なるほど、あれだな。ミツルは水に顔をつけられないタイプのショタだったか。
俺は安心するように後輩を優しく導く。
「海の楽しみ方は海に入ることだけじゃないさ! よーし、それじゃあちょっと早いが海イベントを開催するぞ!」
「「「「「海イベント!?」」」」」
俺の宣言に近くにいた古参のメンバーたちが反応する。
〈海ダン〉で、色々とイベントをしてきたことを知っているメンバーだ。
「はいはい! ゼフィルスさん! 是非俺に! スイカ割りのあれ役を俺にやらせてください!」
目ざとく聞いていたマネキンのサトルも立候補する。しかし。
「ダメ。今のサトルは私のもの。そのままジッとしてて」
「あれーー!? とても嬉しい言葉のはずなのに、なんだか嬉しくないーー!?」
しかし、メイリー先輩が待ったした。サトルはマネキン続行のようだ。
「サトル先輩が言っていたスイカ割りのあれってなんですか?」
「ふっふっふ、よかろう。ミツルに良いことを教えてやるぜ!」
「うわ、お兄さんが悪い笑み浮かべてる~」
――海のイベント。
まずは定番のスイカ割りからだな。
〈エースシャングリラ〉のメンバーを初めとする〈海ダン〉初参加のみんなはそれを興味深そうに見つめていたよ。スイカを設置しルールも説明する。
「つまり、目隠しして方向感覚を惑わせ、しかし相手に有効な一撃を入れる訓練ですか!?」
「そんな大層な訓練じゃないぞ? これはただの遊びだ。見てろミツル」
「最初は私よ! 私しかいないわ!」
「ラナ殿下が出場してますよ!? ええ!? 王族に目隠しなんかしちゃっていいのですか!?」
「遊びだからな!」
目の前でラナが目を隠されてクルクルその場で回らされて方向感覚を見失わされる光景にミツルがビビる。確かに、これって見方を変えると結構ビビるかもね。
なかなかに新鮮なリアクションじゃないか。
「ラナ殿下ー、右です! もっと右!」
「こっちね!」
「右に振り向きすぎです!」
「もうちょっと左デース! そのまま真っ直ぐデース!」
「いいですよラナ殿下! そのままあと3歩!」
「ここ? ここね? ここでいいのね! 私の必殺剣がスイカを一刀両断してやるわ! たぁ!」
「「「「おおおおおおお!!」」」」
「スイカ斬れたーーー!?」
ラナはSTRに1もポイントを振ってないが、なぜか斬れるスイカ。あの木刀が怪しい。
「やったわ! 今年は私の完全勝利よ!」
「「「わーわーわー!」」」
「「「パチパチパチパチ!」」」
去年、一昨年の雪辱(?)を果たしたかのような超ドヤなポーズをラナがキメる。
そこに歓声と盛大な拍手が贈られたんだ!
まあ、いっか。ラナも喜んでるしな。
ただ、あの木刀は替えさせよう。
「こんな感じだ」
「す、すごい! それに、楽しそうです!」
「だろう!」
俺が振ればミツルは目を輝かしてラナを見つめていた。ラナのドヤ顔がさらに捗っているな。
「次やりたいです!」
「私もー!」
「僕もやってみたいです!」
やりたがる立候補者多数。30人くらい集まったな。
特に〈エースシャングリラ〉のメンバーが多いぜ。まずはSTRが10の子たちからやってもらった。
「いっけーシオン!」
「シオンちゃんがんばって~」
「マシロの応援に元気100%。えい!」
「「「おおー!」」」
シオンとか、凄かった。大迫力だ。1年生の時のシズやトモヨクラスはある胸部装甲をダイナミックに揺らして木刀を振り下ろしていてな、一部から歓声が上がるほどだったよ。あれは騎士男子たち集団だな。ふむ、上級が必要そうだ。
「ふはははははははは! 次は俺の番だ! この【邪竜騎士】である俺の邪竜眼に見えないものはない! 俺の邪竜眼に掛かれば目隠しなど児戯に等しい!」
STR10組が終わると最初に騎士たちが立候補。
まずは【邪竜騎士】男子だ。なんてフラグを立てるんだこの男子は、ちょうどいい。ミツルに悪い遊びを――じゃなくてスイカ割り上級を教えてあげなくては!
「ミツル、ここからはサトルが言っていた例のあれを見せてやる。スコップを持て」
「え!?」
「ここからは――スイカ割り上級の時間だ!」
俺はこっそりスコップを2本取り出してミツルにも渡す。
【邪竜騎士】男子が目隠しをしてクルクルと回され方向感覚を見失った。
――よし、今だ。
ちなみにスキルを使えば失格と言っておいた。【邪竜騎士】が一瞬固まった気がしたが、きっと気のせいだろう。
「のわーー!? な、なんだこれ、いったいなにが!? あ、穴? え? なんで穴!? って今度は山!?」
「「「あははははははははは!」」」
ザック、ザック。
「あの!? 目の前からザックザック音がするんですが!? これ誰か掘ってますよね!? 目隠ししている俺の前で誰か穴掘ってますよね!?」
お、この【邪竜騎士】男子、なかなかのツッコミ属性をお持ちだ。さっきのテンションといい、俺と気が合いそうだよ。
しかし、騎士としての矜持か。なんとこの【邪竜騎士】男子君、スイカ割りを成功させたのだ。
「そこだ! チェストーーーーー!!」
「「「「おおおおおおおおおおお!!」」」」
これには会場も大盛り上がり。
スイカ割り上級を初見でクリアしたのは、なんと【邪竜騎士】男子君だったんだ!
すっげぇ! 名前なんだっけ? そうだリュウジだ! リュウジすげぇ。
リュウジの名は俺に深く刻まれた。
「素晴らしいぞリュウジ! スイカ割り上級を初見でクリアしたのはリュウジが初めてだ! 今度〈暗黒竜〉でもプレゼントしてあげよう!」
「うっそほんとに!?」
「マジで!? スイカ割り上級をクリアするとテイムモンスターもらえるの!?」
「自分もやります!!」
「あの、景品は〈ブオール〉でも大丈夫ですか!?」
これには他の騎士男子たちも黙っておらず、みんなが立候補。〈暗黒竜〉は、上級上位である〈竜ダン〉の徘徊型ボスだからな。強いぞ?
しかし、結局スイカ割り上級をクリアできたのはリュウジだけだったんだ。
やるなぁリュウジ。伊達に邪竜眼がどうのと言ってないぜ。
「次、僕、いきます! あ、普通のスイカ割り希望で」
ちなみにミツルも参加。難易度普通のスイカ割りで、見事にスイカを真っ二つにしていたよ。
その表情は輝かんばかり。
浜辺には、海に入らなくても楽しめる方法がいっぱいあるんだぜ!
さあ次は何をするか。って今度は城とウォータースライダーが出来てる!
どうやらヴァンが生き返ったらしいな!




