#1933 タネテちゃんとタバサ先輩を海にお誘いしよう
ハンナが実験? 試験的に? 貸しだした〈伝説の猫〉は、使用者が棒立ちのまま〈岩ダン〉の最奥ボス、〈マグメタ〉をぶっ倒したとのこと。
使用者たちによれば、どうやら上へ逃げた〈マグメタ〉を「飛んでも無駄にゃー!」と言わんばかりにジャンプで追いかけた〈猫津波〉がその自慢の肉球でペチンっと叩き落としたらしい。あとはダウンした〈マグメタ〉を猫たちが呑み込んで――そんなことが繰り返されたとか。
あのフード少女は誰だ!? って多くの人がざわめいていたよ。
一応逃げ帰ることには成功したが、ハンナだとバレるのは、きっと時間の問題だな。
あの〈伝説の猫ゴーレム〉は、通称〈ニャーレム〉と呼ばれ、今後は〈採集課〉や〈商業課〉、〈調査課〉や〈支援課〉の学生を対象に最高の護衛として運用される予定とのことだ。階層更新などにも非常に役立つことだろうな!
え? 〈戦闘課〉? 〈戦闘課〉の方々は自力で頑張りましょう!
「タネテちゃんいるか~」
「あ~、タネテなら今日も〈エデン〉に出張してますよ~」
「おっとそうだったか、了解だ」
一旦ハンナと別れて俺はその足で最後の生産7人衆の1人、タネテちゃんを誘うために〈彫金ノ技工士〉に訪れたのだが、どうやらタネテちゃんはうちの工房に居るらしい。
ここにもデカい工房はあるのだが、さすがに50メートル級の戦艦を作製できるほどではないため、最近はもっぱら〈エデン〉で作業をしているのだ。
とはいえタネテちゃんは〈彫金ノ技工士〉のギルドマスターでもある。
大体の作業は優秀なサブマスターがしてくれるそうだが、ギルドマスター案件の作業もしなくちゃならないらしくたまに戻ってきているらしいのだ。
実は、それは面倒だろうと「いっそ〈アークアルカディア〉に移籍するか?」と勧誘を持ちかけたこともあるのだが。
「いえ、タロウ先輩を押しのけてギルドマスターの席に座ったようなものなので、最後まで責任は果たしますよ」
と立派な返答をもらったんだ。
当のケンタロウは全く気にしてないみたいだけどな。むしろギルドマスターの任を譲って生き生きと生産作業に打ち込んでるし。
そんな〈彫金ノ技工士〉に別れを告げて〈エデン〉のギルドハウス地下、タネテちゃんのために作った工房へと足を運ぶと、そこでは数人の〈彫金ノ技工士〉メンバーが生産作業をしていた。
〈彫金ノ技工士〉から〈エデン〉へ出張してきているのはタネテちゃんだけではない。結構な人数がここで作業していたりするのだ。
それだけ工房の質が良いってことらしい。
「あれ? ゼフィルス先輩じゃないですか」
「ようタネテちゃん、今時間ってあるか?」
「良いタイミングですよ。ちょうど〈イブキ〉9号が出来上がったところで、時間が空いたところですよ」
「もう出来上がったのか!?」
見ればそこにあったのは新品の〈イブキ〉。
9号ということは、これで9台目の作製ということだろう。〈エデン〉では騎士男子を4人入れたことで〈乗り物〉の需要が大幅に増した。【賊職】の子も1人〈乗り物〉操縦技能を持つ子もいるし、〈エースシャングリラ〉が上級下位の〈クジャ〉を倒したところで増産に入ったのだ。
この前その5号が完成したと思っていたら。もう9号まで完成していたらしい。
すごく早いな!?
タネテちゃん曰く、これだけレベルの高くなった〈彫金ノ技工士〉メンバーが複数人で当たれば、1日1個ペースで作れてしまう、とのことだ。すごい……!
「まさかこんなに早く〈イブキ〉が揃うとはな。助かるぜタネテちゃん、これで〈エースシャングリラ〉も本格的に攻略に乗り出せるぜ!」
「豪華な下準備ですね」
現在学園は空前の上級ダンジョンブーム。
だがその登竜門はランク2の〈霧ダン〉であり、今は〈霧ダン〉でレベル上げしたのち、仕上げにランク6の〈岩ダン〉に潜って五段階目ツリーを開放する、という流れができつつある。
だが、〈エデン〉のセオリーは違う、最初はランク1に入って攻略してしまえ、を推奨していた!
その理由がこの〈イブキ〉。〈イブキ〉さえあればあとの攻略とかスムーズに進む!
〈エースシャングリラ〉の〈乗り物〉使いたちに一度〈イブキ〉が行き渡ってしまえばこっちのものである。
まずはランク1を攻略して〈イブキ〉を作製すること。それが〈エデン〉の上級ダンジョン攻略におけるセオリーだ!
「タネテちゃんにもとても感謝してるぜ。そこでだ。もしタネテちゃんさえよければ今度〈エデン〉の慰労旅行に一緒に行かないか?」
「慰労旅行ですか?」
「おう。いつも頑張っているタネテちゃんにお礼と労いをかねてな。場所は〈海ダン〉だぞ。みんな水着になって海を泳いだりしてバカンスするんだ」
「ええ!? 私も、ですか!? でも私、泳げませんし、そもそも水着も持ってませんよ!?」
「そこは安心してほしい。素材は〈エデン〉で用意した。後は〈トップマリー〉で水着を注文すればタダで作ってくれるぞ」
「わざわざ水着のために世界最高峰のお店〈トップマリー〉にいくのです!? あそこは限られた学生しか利用できませんよ!?」
おっと、だんだんタネテちゃんの言葉が乱れてきたな。
学年が上がり、ギルドマスターとなり、ケンタロウとは別の仕事に付くことになって、普段は落ち着いた雰囲気で喋るタネテちゃんだが、本当は毒舌キャラだと俺は知っている。
久しぶりに聞いてみたいが、あれはケンタロウ以外には使わない言葉使いみたいなのがネック。残念、あとでモニカから摂取するとしよう。
また、タネテちゃんが言っているのは利用権の問題だな。〈トップマリー〉は企業店なのだ。
「安心してほしい。今回は〈エデン〉の依頼だ。タネテちゃんの水着は〈エデン〉が購入していることになる。問題は無い」
「相変わらずぶっ飛んでいますね?」
「いやぁ、それほどでもあるぜ」
「ぶっ飛んでいる自覚があると!?」
でもこういう中途半端な毒っぽい言葉使いも、たまにはいいもんだぜ。
「ちなみに行くのは〈エデン〉〈アークアルカディア〉〈エースシャングリラ〉のみんなに加えて生産7人衆もだな」
「な! その名をどこで!?」
「〈トップマリー〉で聞いたぞ。俺も今日初めて聞いて驚いてる」
「あ、あまり広げないでいただけると助かるです」
どうやらタネテちゃんはハンナと同じく恥ずかしがり屋組らしい。
かっこいいのに。
とりあえず、これで生産7人衆全員に話を持って行けたな。
まだ返事は聞けなかったが、用件は済んだ。さて、次は誰を誘おうか?
俺は次に〈攻略先生委員会〉へと向かうことにした。
「こんにちは~。タバサ先生はいるでしょうか?」
「タバサ先生ですか? 生憎隊長は今ダンジョンですが」
「何時くらいに戻りますか?」
俺の脳裏に浮かんだのは、もちろんタバサ先生だった。
去年は海一緒に行けなかったし、今年こそタバサ先生を誘ってバカンスしたい!
だが、アポ無しでは会えず。お忙しそうだ。
そう思っていたときだった。
「あら? ゼフィルスさん?」
「お?」
後ろから、よく知る透き通るような声で名前を呼ばれたんだ。
振り向くと、そこには――タバサ先生がいたんだ。
すぐに受付の子が立ち上がって挨拶する。
「あ、隊長! おかえりなさいませ! 隊長にお客様です!」
「ええ。ありがとね」
そう言って微笑むタバサ先生の後ろには、多くの先生方がいたんだ。どうやらダンジョンから帰ってきたところにちょうど居合わせることができたらしいな。運が良い。
そういえば、タバサ先生は自分が偶然に強いって言ってたっけ。これ、【巫女】や【メサイア】の予知的な職業補正入ってる??
「ゼフィルスさん」
「タバサ先生、久しぶりだな」
「ええ。向こうで話しましょう? もうゼフィルスさんったら全然会いに来てくれないんだもん。私、忘れられちゃったかと思ったわ」
「そんなことあるわけないじゃないか。タバサ先生は今も昔も〈エデン〉のメンバーだよ」
「もう、そこはもっと別の言葉で口説いてほしいわ」
そんな冗談ともつかないことを言いながら微笑むタバサ先生の後に続き、個室へと案内される。
俺がタバサ先生を口説いているみたいに言うのはもうちょっと控えてもらおう。後ろから男性先生方の圧が強いから。
さすがはタバサ先生、大人気のようだ。
「それでゼフィルスさん、今日はどうしたの? もしかしてデートのお誘いかしら?」
「それも魅力的なんだが、今日は海のお誘いに来たんだ! ほら、去年温泉の時に言ったやつ」
「ああ! あれね! いいわねぇ海。純粋に遊ぶも良し、ゼフィルスさんを落とすも良し、最近はダンジョンで行き詰まっていたから〈エデン〉と交流を深めるのも良しね」
ん? なんか途中で変なものが混ざらなかっただろうか?
俺、タバサ先生に落とされちゃう? どうしよう、喜んで落とされに行っちゃうかも!
「うーん楽しみになってきたわ。そうだ、ゼフィルスさん今から一緒に水着選びに行かないかしら? 私の水着について、直接意見がほしいの」
え? マジで?
なんて魅力的なお誘いなんだ! 俺の心は傾いた。
しかし『直感』さんから「止めておけ!? これは罠だ、絶対バレるぞ!? 女子は毎回自分が選んだ水着を見せに来てくれるんだから、ここで選んじゃダメだ!」と警報が届く。
はっ! そうだった。くっ、直感さんに助けられたぜ。
「み、魅力的な提案だけど、俺はこの後用事があって……。当日見られるのを楽しみにしておくよ」
「あら、残念ね」
あ、危ない。なにが危ないのかは『直感』さんのみぞ知るが、あのままタバサ先生の魅力にやられてたら何かが大変危険だった。
「それじゃ、当日のお楽しみね」
当日のお楽しみ。
俺は海の日が俄然楽しみになったのだった。
あとがき失礼いたします。お知らせ!
〈ダン活〉小説15巻の発売が、1週間後に迫って参りました!
小説15巻は2026年3月15日発売です!(日曜日なので前倒しで書店では14日)
今回は〈エデン〉に8人のギルドメンバーが新たに加わる超注目巻!
表紙カラーはなんとトモヨ、エリサ、フィナ!
挿絵でもカタリナ、フラーミナ、ロゼッタが登場し!
そして今回挿絵初となるオリヒメとシャロンが大出演!
さらにはWeb版では書かれなかった8職全ての発現条件が載っている!?
キハやエレメースなども名前が登場するなど! 〈1年51組〉の話がリメイクされておます! 是非ニヤニヤしながら読んでください!
書き下ろしでは、オルク視点がトップバッター!?
「実はもうすぐ、とてもすごいことが起こるんだ。何が起こるのかって? とにかくすごいことが起こるんだよ!」から始まるオルク視点のSSストーリーをどうぞ楽しんでください!
加えてシャロン視点、オリヒメ視点のお話も加えた3話構成となっております!
オンライン特典SSではフィナ視点!
「私には姉が居ます。生まれた日は同じで、私が生まれる前に勝手に先に生まれてしまった姉さまです。」から始まる姉語り編も多数収録!
2人がなぜコスプレチックな装備になったのかの裏側をお送りします!
電子特典SSではいつものハンナ視点!(15回目!)
いつもの朝の日常。
「ハンナ、この朝ご飯たちにも応援を掛けてくれ!」
「応援って調味料か何かだっけ!? えっと、がんばれがんばれ~。こんな感じでいいのかな?」
「完っっっ璧だ!」
から始まり、今回はタバサ先輩とハンナのお料理編から、新メンバー8人との交流編、本編の裏側でハンナがどう動いていたのかをお送りします!
全て見所満載ですよ!
是非是非お手に取ってみてください!
これからも〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!




