第50話 一人ではなく、全員で
生命炉を維持するため。
必要な魔力。
問題は。
量。
「まず」
ミレイア。
「不要供給を切ります」
王都。
娯楽。
過剰照明。
貴族区。
季節外れの庭園。
大型魔導広告塔。
軍事演習設備。
魔導砲の待機充填。
全部。
停止。
ユリウス。
少し苦い顔。
「軍上層部は反発するでしょう」
俺。
「するだろうね」
「貴族も」
「する」
「どうします」
「後で怒られる」
「誰が?」
俺。
考える。
「国王」
ユリウス。
「他人へ押しつけましたね」
「適材適所」
国王の通信。
ちょうどつながる。
『聞こえているぞ』
「すみません」
◇
必要魔力量。
四割減。
それでも。
足りない。
ミレイア。
「生体供給へ切り替えます」
生命炉。
古い術式。
フィーネの母が使った、
生命経路転移。
一人の負担を。
複数へ。
さらに。
魔導網。
全国。
「問題」
俺。
「勝手に取らない」
「はい」
ミレイア。
「同意確認が必要です」
「どうやって」
エルディオ。
「生命炉は全接続個体へ簡易信号を送信可能」
全員。
見る。
「できるの?」
俺。
「可能」
「何で先に言わない!」
「必要性がなかった」
「あるだろ!」
五百年。
一度も。
人に聞く必要があると思わなかった。
そこが。
一番。
問題だったのかもしれない。
◇
「何て聞く」
レオン。
俺。
「そのまま」
「世界を維持するため」
「少し魔力を分けてください?」
フィーネ。
「怖くないですか」
「怖い」
魔力。
生命力。
少し。
疲れる。
毎日ではない。
必要量。
地域。
年齢。
健康。
調整。
でも。
最初。
分からないことも多い。
「全部言う」
俺。
ユリウス。
「混乱します」
「する」
「拒否する者も」
「いる」
「それでも?」
「うん」
選ばせる。
知らないまま取らない。
◇
国王。
魔王アベル。
二人。
同時。
公開通信。
人間領。
魔王領。
初めて。
同じ画面に。
王都では。
かなり揉めたらしい。
『魔王を映すな!』
『なぜ王が魔族と!』
でも。
時間。
ない。
国王。
自分の言葉で。
話す。
生命炉。
死刻。
王国が隠したこと。
補正。
全部。
最初。
声。
震えていた。
王様でも。
怖いらしい。
「やめる?」
俺が聞く。
通信の国王。
『黙れ』
続ける。
アベル。
自分が。
生命炉を壊そうとして。
クレイナを滅ぼしたこと。
隠さない。
リゼル。
驚く。
でも。
止めない。
人間側だけ悪い。
そうしない。
魔族側も。
同じ。
そして。
最後。
俺。
何で。
俺。
「異邦人だから」
ミレイア。
「仕組みの外から来た人の方が」
「象徴になります」
「嫌だ」
「時間ありません」
仕方ない。
◇
全国。
顔。
見えない。
何万人。
何十万人。
俺は。
喉が乾く。
会社の朝礼ですら苦手だった。
大人数。
発表。
嫌い。
まさか。
世界へ話すとは。
「えー」
最初。
最悪。
フィーネが後ろで。
「シュウおじさん」
小声。
「頑張って」
余計緊張。
「高城修一です」
「別の世界から来ました」
「たぶん」
「ここにいる誰より」
「この世界のこと知りません」
何を言ってる。
でも。
続ける。
「生命炉を止めた一時間」
「たくさん困りました」
「怪我人も出ました」
「水も止まりました」
「魔物も出そうになりました」
「だから」
「魔法はいらないとは言いません」
少し。
息。
「でも」
「その魔法を使うために」
「知らない誰かが死んでいることを」
「知らないままにするのは」
「もうやめたいと思っています」
世界。
静か。
「これから」
「生命炉へ」
「少しだけ」
「生きている人の魔力を分ける仕組みに変えます」
「参加しない人から」
「勝手には取りません」
「参加したくない人は」
「断ってください」
「そのせいで責められないようにします」
「子供」
「病気の人」
「高齢者」
「負担が大きい人には」
「最初から求めません」
「それでも」
「足りないかもしれません」
「魔法は今より使えなくなります」
「夜は暗くなるかもしれない」
「治癒魔法も減ります」
「便利な道具も止まる」
「兵器も」
ガイル。
「そこは止めろ」
「止める」
少し笑い。
通信の向こう。
どこか。
笑った人がいるらしい。
「今より不便になる」
俺。
「でも」
「誰か一人が」
「知らないところで死ぬことで」
「便利を維持する仕組みより」
一度。
「俺は」
言い直す。
「俺たちは」
仲間を見る。
「こっちを試したい」
「協力してくれる人は」
「自分で選んでください」
「お願いします」
頭を下げた。
王へではない。
世界へ。
◇
反応。
すぐには。
ない。
「何人」
俺。
エルディオ。
「同意確認中」
数字。
一。
十。
百。
増える。
千。
一万。
でも。
必要量。
足りない。
「何%?」
ミレイア。
「三十二」
「必要は?」
「最低五十八」
時間。
死刻――十八分後。
「足りない」
レオン。
俺。
「待つ」
リゼル。
「時間がない!」
「分かってる」
でも。
強制しない。
ここで強制したら。
意味がない。
数字。
三十五。
四十。
止まる。
「おっさん」
ノア。
「俺もやる」
「子供は」
「少しだけならいいって言っただろ」
ミレイア。
「最低量なら」
「じゃあ入れろ」
「ノア」
俺。
「俺が決める」
強い。
「存在しない俺でも」
「ここにはいるから」
俺は。
何も言えなかった。
ミレイア。
登録。
ノア。
一人。
数字。
増える量は。
ほとんどない。
でも。
その直後。
何か。
変わった。
王都。
子供たち。
《俺も》
《私も》
治癒師。
《負担の少ない人だけ》
老人。
《若い者から取るな》
兵士。
《俺から多めに》
ミレイア。
「駄目です! 均等上限を!」
勝手に英雄になろうとする人。
いる。
「一人に多く背負わせない!」
俺。
「上限!」
供給。
一人最大。
小さい。
誰も。
代わりに全部はできない。
それが。
大事。
◇
数字。
四十八。
五十一。
五十四。
時間。
十分。
「あと四%」
ミレイア。
エルディオ。
「不足」
俺。
「分かってる」
「私が補填すれば維持可能」
エルディオ。
第一炉心。
自分を。
また使う。
「駄目」
俺。
「合理的だ」
「一人で背負うなって言った」
「私はすでに――」
「もういい!」
初めて。
エルディオへ。
怒鳴った。
「五百年やっただろ!」
静か。
「もう」
俺。
「働かなくていい」
エルディオ。
動かない。
数字。
五十五。
五十六。
止まる。
あと。
二。
◇
アベル。
前へ。
魔王。
「魔王軍」
通信。
「全軍へ告ぐ」
「強制ではない」
「私は参加する」
リゼル。
グラム。
魔族兵。
次々。
増える。
五十七。
でも。
まだ。
「足りない」
ミレイア。
王都。
国王。
『王族補正を全解除』
セヴェリン。
顔を上げる。
国王。
『生命炉への優先保護も解除する』
「陛下」
ユリウス。
『私も』
王。
『一人分だ』
供給。
増える。
五十八。
必要値。
到達。
全員。
息を止める。
「いける?」
俺。
ミレイア。
「最低限です」
「最低限でいい」
便利。
贅沢。
兵器。
いらない。
水。
治癒。
農業。
結界。
まず。
そこだけ。
エルディオ。
俺を見る。
「不足時」
「誰を選ぶ」
俺。
「選ばない」
「供給不足が発生する」
「そのとき」
「使う側が減らす」
「間に合わない場合」
「みんなで考える」
「死亡者が出る」
「出るかもしれない」
エルディオ。
「それを許容するのか」
俺。
「死なない世界を作るとは言ってない」
セラ。
死刻なし。
死んだ。
人は。
死ぬ。
「勝手に」
「殺す人を先に決めるのを」
「やめるんだ」
生命炉。
光。
大きく。
揺れた。
「ミレイア!」
「切り替えます!」
十二の鍵。
一斉に。
光る。
俺の手帳。
死刻――三分後
もう。
時間がない。




