第44話 初代勇者エルディオ
生命炉中枢へ。
入る方法。
十二勇士権限。
開いた。
正確には。
最初の扉だけ。
その先。
アベルも来た。
「私も行く」
俺。
「入れる?」
「十二勇士が開いた通路なら」
ミレイア。
「一時的に接続者への拒絶が解除されています」
リゼル。
グラム。
フィーネ。
ガイル。
レオン。
ユリウス。
ノア。
全員。
行きたがった。
俺は。
止めた。
「全員は駄目」
ガイル。
「何で」
「外がある」
一時間停止。
準備。
封印。
治癒院。
誰か残る。
「俺が行く」
ガイル。
「グラムと封印施設」
「またあいつか!」
グラム。
「私も嫌だ」
でも。
二人とも残る。
フィーネ。
「私は」
「治癒院」
「でもシュウおじさんの死刻が」
「だから」
俺は言う。
「フィーネが俺だけ見たら駄目」
彼女が止まる。
「一時間止めたら」
「怪我人出るかもしれない」
「そこを」
「頼みたい」
フィーネ。
泣きそう。
でも。
「分かりました」
強い。
リゼル。
「私も治癒院へ戻る」
「頼む」
「お前に頼まれたからではない」
「知ってる」
ノア。
「俺は行く」
「駄目」
「何で!」
「危険」
「俺が扉開けた!」
「だから」
俺はしゃがむ。
目線。
「もう十分働いた」
ノア。
怒る。
「また子供扱い」
「する」
「俺がいなきゃここまで来れなかった!」
「分かってる」
「じゃあ!」
「それと危ない場所へ連れてくのは別」
ノアの目。
悔しい。
でも。
今回は。
譲らない。
「待ってて」
「絶対戻る?」
困る質問。
「努力する」
「大人ってそればっか」
「ごめん」
ノアが俺の服を掴む。
「戻れよ」
「うん」
◇
中へ入るのは。
俺。
レオン。
ミレイア。
ユリウス。
アベル。
五人。
通路。
古い。
でも。
生きている。
壁。
脈打つ光。
血管みたい。
嫌な感じ。
「生命炉」
ミレイア。
「建造物というより」
「巨大な魔導生命体に近い」
「生命体?」
俺。
「意思ある?」
アベル。
「あると私は考えていた」
今。
その意思。
誰なのか。
分かり始めている。
◇
奥。
広間。
巨大な球体。
光。
数え切れない線。
王都。
国中。
魔王領。
世界へ。
人の命。
魔力。
全部。
ここにつながっている。
そして。
中央。
人影。
若い男。
金色の髪。
白い鎧。
目を閉じている。
二十代。
いや。
像?
透明。
でも。
存在する。
アベルが止まる。
「……エルディオ」
「知ってる?」
俺。
「肖像で」
初代勇者。
五百年前。
歴史上の英雄。
世界を救った男。
像の目。
開く。
青。
こちらを見る。
「外部管理者を確認」
声。
人間。
でも。
感情が薄い。
「十二権限」
「一時停止要求」
ミレイア。
「まだ要求していません」
エルディオ。
「予測済み」
嫌な言葉。
俺を見る。
「異界由来個体」
「高城修一」
「排除予定まで」
少し間。
「十一刻」
俺の喉が乾く。
「やっぱり」
俺。
「俺の死刻決めてるの、あんた?」
エルディオ。
「最終選定は私が行う」
答え。
あっさり。
あまりにも。
「……あんたが」
レオンの剣。
抜きかける。
俺は手。
止める。
「待って」
「でも!」
「聞く」
ようやく。
ここまで来た。
誰が人の死を決める。
答え。
目の前。
「何で」
俺。
「人を殺す」
エルディオ。
「世界を維持するため」
やっぱり。
◇
五百年前。
世界。
魔力枯渇。
結界。
消える。
魔物。
増える。
作物。
枯れる。
疫病。
治療不能。
人々。
死ぬ。
初代勇者エルディオ。
仲間。
研究者。
魔導士。
生命炉。
作る。
でも。
起動に必要な魔力。
足りない。
「私は」
エルディオ。
「自らを第一炉心とした」
自分の命。
差し出した。
体。
生命。
意識。
全部。
生命炉へ。
「最初は」
「私一人で十分だった」
数十年。
でも。
人口増加。
魔法発展。
需要増。
炉心。
不足。
「そこで」
ミレイア。
顔が青い。
「他者の生命力を?」
「最小限」
エルディオ。
「必要量のみ」
「誰を選んだ」
俺。
「損失が最も少ない個体」
その言葉。
部屋。
冷える。
「最初から?」
「いや」
エルディオ。
最初は。
無作為。
結果。
幼い子。
医師。
指導者。
死ぬ。
その後。
飢饉。
暴動。
二次被害。
「学習した」
「一人の死によって」
「より多くが死ぬ個体を避ける」
「社会的影響」
「未来予測」
「家族」
「技能」
「健康」
「犯罪傾向」
「すべて」
俺は。
気持ち悪くなる。
完璧。
合理的。
「それで」
レオン。
「ヨルンさんを選んだのか」
エルディオ。
「門兵ヨルン・フェルド」
一瞬。
何かを検索したような間。
「選定理由」
レオン。
「言うな」
突然。
止めた。
全員が見る。
レオン。
拳。
震えてる。
「聞いたら」
声。
低い。
「俺は」
「納得する理由を探してしまう」
ヨルン。
家族。
娘。
「そんなもの」
「要らない」
俺は。
レオンを見る。
強くなった。
たぶん。
そう思った。
◇
アベル。
「エルディオ」
「五百年」
「ずっとここに?」
「そうだ」
「苦しくないのか」
初めて。
エルディオの顔。
少し。
変わる。
「苦痛という概念は」
「大部分を切り離した」
怖い。
「なぜ」
俺。
「そんなことまでして続ける」
エルディオ。
静か。
「私は見た」
飢饉。
疫病。
戦争。
魔物。
子供。
母親。
兵士。
老人。
毎日。
毎年。
五百年。
「人は」
エルディオ。
「選ばなければ」
「もっと死ぬ」
声。
少し。
人間に戻る。
「私は」
「五百年間、毎日選んできた」
静か。
「千人を救うために」
「誰を一人死なせるのかを」
誰も。
言葉がない。
悪人。
ではない。
最初は。
本当に。
世界を救った。
そのあと。
救い続けるために。
人を数字として見なければ。
耐えられなくなった。
「では」
エルディオ。
俺を見る。
「高城修一」
「お前ならどうする」
来る。
「一人を選ばず」
「千人を死なせるか」
俺は。
答えられなかった。
また。
分からない。
でも。
今までと違う。
逃げたくて。
分からないと言っているわけじゃない。
本当に。
この問いには。
簡単な答えがない。
「明日」
俺。
「いや」
手帳。
残り十一刻。
「今日」
エルディオを見る。
「一時間だけ」
「生命炉を止める」
エルディオ。
「結果は予測済み」
「被害が出る」
「ああ」
「死亡者が出る可能性」
「ある」
「それでも?」
俺。
「やる」
「なぜ」
「確認する」
エルディオの眉。
わずか。
「何を」
「世界が」
俺。
「本当に」
「一人を殺さないと一時間も持たないのか」
エルディオ。
「無意味だ」
「それも」
「やってから決める」
初めて。
エルディオの表情に。
明確な感情。
苛立ち。
「非合理的だ」
俺は。
少し笑った。
「よく言われる」
会社では。
あまり言われなかったけど。
今は。
それでいい。




