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天命録に、俺の死は三十日後と刻まれている  作者: asnt2026


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第39話 魔法の消えた夜を想像する

「一時間止める」


俺が言った。


「却下」


ミレイア。


「早い」


「危険すぎます」


「じゃあ何が危険か出そう」


「全部です」


「具体的に」


ミレイアが睨む。


でも。


紙を出す。


こういうところ。


本当に仕事ができる。


          ◇


一時間。


生命炉停止。


王都。


何が止まるか。


水。


上層区の給水。


一部停止。


地下水槽あり。


病院。


高位治癒魔法。


停止。


ただし。


薬と低位術は、


個人魔力で一部使える。


結界。


外周。


蓄積魔力で二刻程度は維持。


農業。


一時間なら大きな影響なし。


照明。


消える。


娯楽。


止まる。


「意外と」


俺。


「一時間なら大丈夫?」


ミレイア。


「計算上は」


「計算上」


怖い言葉。


ユリウス。


「王都だけなら」


「他都市は?」


「蓄積設備に差があります」


「最悪は」


グラム。


「辺境の封印施設だ」


大型魔物。


封印。


蓄積魔力の少ない場所。


停止した瞬間。


危険。


「じゃあ」


俺は地図。


「事前に人を置く」


アベル。


「王国側へどう知らせる」


「知らせる」


全員が俺を見る。


「何?」


ユリウス。


「正気ですか」


「黙って止める方が危ない」


「王国は認めない」


「認めてもらうんじゃない」


「では?」


「避難訓練」


言ってから。


自分でも会社員らしすぎると思った。


          ◇


「生命炉を止めるとは言わない」


俺。


「魔力供給障害の可能性がある」


「その想定で」


「一時間」


「手作業で回す準備をする」


ユリウス。


「王国が応じると思いますか」


「理由つけて」


「何と」


「魔王軍が生命炉を狙ってる」


リゼル。


「事実だな」


アベル。


「狙っている」


「嘘ではない」


ミレイア。


「本当に課長ですか」


「何で」


「悪知恵が」


「失礼」


          ◇


俺は昔。


防災訓練の担当をしたことがある。


正直。


面倒だった。


避難経路。


安否確認。


非常食。


BCP。


災害時業務継続計画。


資料を作る。


社員から、


「本当にこんなの必要ですか」


と聞かれる。


俺も心の中では思っていた。


でも。


台風。


停電。


一度だけ。


会社の一部が本当に止まった。


そのとき。


訓練で決めた連絡網が役に立った。


完璧じゃない。


でも。


ゼロよりましだった。


「非常時って」


俺は言う。


「起きてから考えると遅い」


だから。


準備。


          ◇


班分け。


フィーネ。


治癒院。


魔法が使えない一時間。


薬。


止血。


搬送。


「人手足ります?」


「足りない」


「じゃあ治療師以外も訓練」


「誰が教える?」


「フィーネ」


「私?」


「できる?」


少女が少し固まる。


これまで。


フィーネは、


治療する側。


教える側ではない。


「私に」


「無理?」


俺は聞く。


「……やります」


「頼む」


成長。


本人にしかできない。


          ◇


ガイルとグラム。


水。


食料。


封印施設。


「また一緒か」


ガイル。


「嫌なら」


俺。


「いや」


止まる。


「……いい」


グラムも何も言わない。


少しだけ。


変わった。


          ◇


レオン。


避難所。


市民誘導。


「戦わなくていいんですか」


「必要なら戦う」


「でも」


「お前、人から信頼されやすい」


レオン。


少し困る。


「そうでしょうか」


「俺が『避難してください』って言うより勇者が言った方が聞く」


「修一さんも勇者です」


「見た目」


「……」


否定しないで。


          ◇


ミレイア。


供給点。


生命炉停止。


十二勇士権限の解析。


ユリウス。


王国騎士団。


合法かどうかは、


もう聞かない。


「騎士団を動かせる?」


俺。


「私が直接動かせる範囲には限界があります」


「じゃあ」


「現場指揮官に危機対応訓練として通達します」


「できる?」


「やります」


短い。


強い。


          ◇


リゼル。


魔物。


境界。


「嫌だ」


「まだ何も言ってない」


「人間と協力する話だろ」


「正解」


「嫌だ」


フィーネが横から。


「お願いします」


リゼル。


「……」


俺。


「俺が頼むより効く?」


「黙れ」


でも。


引き受けた。


          ◇


アベル。


全体。


魔王軍。


封印地点。


国境。


俺と。


「お前は?」


アベルが聞く。


「何」


「何を担当する」


少し考える。


以前なら。


何か一つ。


現場。


自分の担当。


欲しかった。


仕事をしている実感。


でも。


「全体」


「またか」


「各班の進み具合確認」


「それだけか」


「それが仕事」


アベルが少し笑う。


「ようやく管理者らしいことを言う」


「元から課長」


「カチョウというのは管理者ではないのか」


「微妙」


説明が難しい。


          ◇


その日の夜。


各班から報告。


問題。


山ほど。


治癒院。


薬不足。


水。


運搬具不足。


封印。


兵不足。


王都。


協力拒否の貴族区。


魔族側。


人間と共同作業を嫌がる者。


俺は一つずつ。


全部自分で解決しない。


「薬不足」


フィーネ。


「代替は?」


「魔族の薬草なら」


「リゼルへ」


「もう聞きました」


先回り。


「水運搬」


ガイル。


「荷車が足りねえ」


「商人組合」


ユリウス。


「連絡済みです」


「兵不足」


グラム。


「辺境民の自警団」


レオン。


「協力を取り付けます」


俺が言う前に。


みんな。


自分でつなぎ始めている。


不思議だった。


少し寂しくもある。


課長時代。


部下が育つと。


自分が要らなくなったように感じる瞬間があった。


でも。


本当は逆だ。


自分がいなくても回る。


それが。


一番いい。


「シュウおじさん」


フィーネ。


「何にやにやしてるんです?」


「してない」


「してます」


「みんな仕事できるなって」


ガイル。


「今さらか」


ミレイア。


「高城さんが全部口を出さなくなったので効率が上がりました」


「それ褒めてる?」


「かなり」


前にも似たこと言われた気がする。


          ◇


寝る前。


手帳。


高城修一

死刻――一日と二十刻後


二日を切った。


でも。


昨日より。


怖さだけではなかった。


一時間。


魔法が消える。


まだ実行するかは決まっていない。


でも。


もし。


世界が一時間だけ、


生命炉なしで耐えられたら。


証明できる。


「止めたら全部終わる」


それが。


本当ではないと。


そして。


壊さなくても。


変えられる可能性があると。

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