5-4. 火種
出雲を平定し、
かつての自由な風を封じ込めた後、
スサノオはその地の統治を命じられた。
しかし、かつての共生の喜びはどこにもない。
そこにあるのは、怯えきった民と、
泰氏が張り巡らせた監視網の
静かな唸りだけだった。
スサノオは、
自らが出雲を「救うため」ではなく
「解体するため」に戦った真実に
打ちのめされていた。
彼は次第に虚無に蝕まれ、
酒と狂気の中に逃げ場を求めるようになる。
「俺は、ニギハヤヒのじいさんの魂を……
二度も殺しちまったのか……?」
その問いに答える声は、
もう風の中にはなかった。
泰氏はスサノオという強力な
駒の「賞味期限」が
近いことを察し、
次なる舞台――
アマテラス本人さえも神話の奥奥へ
隔離する「天岩戸」の準備を開始した。
一方、その頃。
東の果て、深い森の深淵。
地底の奥深くでは、
ニギハヤヒの意志を継ぐ者たちが、
静かに、だが確実に結集していた。
彼らの名は蝦夷。
奪われた歴史、書き換えられた記憶、
そして「国譲り」という名の掠奪。
そのすべてを骨の髄まで継承した彼らは、
いつか大和へ撃ち込む
「真実の弾丸」となるべく、
ナガスネヒコの旗の下で
牙を研ぎ続けていた__。




