幕間
胸糞が悪い。あの餓鬼と話してからだ。何が「レンと闘え」だ。
俺と同じ顔をしたあいつは「レン」という名で、俺と闘う運命にある、とか抜かしやがった。
そう、あの餓鬼、アルメリアは事あるごとに俺の前に出てきては俺のやる事に口を出しやがる。やれ「悪いことはやめろ」だとか、やれ「おぬしは本当はそんな事をする人間ではない」だとか言ってきて、面倒ったらありゃしねぇ。
そんなのお前に関係あるか、と、何度怒鳴ったことかわからねぇし、実力行使で黙らせてやろうと思っても掴みどころのない動きでするりと避けやがる。一体あいつはなんなんだ。
あぁ、苛々する。
だが、もうすぐ「あの日だ」。
王国は馬鹿なことに記念式典を例年通り催すことに決めたそうで、正確な警備情報も既に入手してある。王国の内通者からだ。そこなら散々暴れることが出来る。
今、俺が居る「ミシアンの遣い」という集団は、ただの犯罪者達という訳ではない。金で動く悪い傭兵、といった側面も持っていた。そんな集団に依頼するのだから、依頼者はさぞ後ろ暗いことを考えているに決まっている。大元の依頼主のことはもちろん調べたし、絞れるところまで絞る、というのがこいつらのやり方だった。なにやら悲願を達成するのに金が要る、という事らしいが俺には関係の無い話だ。ただ、暴れている間は、この胸に棲むどす黒い感情を紛らわせることが出来る。だから今もここに居るというだけだ。今回の依頼者は何人も人を挟んではいたが問題なく判明している。俺が言うのもなんだが、悪そうなやつで、眼鏡を掛けている偉そうなオッサンだった。
しかし、何故こんなにも苛々が募るのだろうか。アルメリアと話す度にそれは強くなるばかりだ。ついには頭痛までしてきやがった。
同時に、こんなことをしている自分自身に嫌気が差してきている自分にも気付く。そして取り返しの付かないことをしてしまっているような、そんな不安がやってきて、それを紛らわせるためにまた暴れることの繰り返しだ。
くそがっ。いくら悪態をついても胸糞の悪さは変わらない。
また、暴れてやる。俺のこの感情を、お前らにも、分けてやる。
楽しみだ。




