↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/45

ここにいる理由 12

 アルメリアに言われたことが頭の中をぐるぐると廻り、思考をかき乱していく。

 人を殺すこと。それが運命だと、彼女は言った。そうしなければならない、と。


 コンコン、とノックの音が正気を呼んで、訳の分からない思考は中断される。

 扉を開けるとそこにはソフィアがいた。服装は寝間着だが朝のようなものでは無くて安心する。代わりに何やら神妙な面持ちだ。

「夜中にごめんなさい。少し、いい?」短い付き合いではあるが聞いたことの無い程の真剣なその声音に、僕は一も二も無くうなずく。一体、何があったというのだろうか。


 奇しくも先程アルメリアとそうしていたように、向かい合って座る。神妙な面持ちは変わらない。


「私って、バカじゃない?」と脈絡もなく言い出すので驚いてしまう。

「いやっ、そんなことは・・・」無い、と言おうとする前に彼女は言い直す。

「ごめんなさい、言い方が悪かったわ。・・・その・・・私って、少し抜けてるというか・・・考え無しに行動することがあるの。」

 否定出来ずにいると、彼女は尚も言い募る。

「そんな自分を変えたいと思ってた。でも、上手く行かなかった。」

 悩みを相談しに来たのか、と悟る。しかし、何故僕に・・・。


「私、あなたの事が好き。あなたの事をもっと知りたい。あなたに私の事を知って貰いたい。」


 突然の告白に僕は赤面して狼狽する。見れば彼女の顔も真っ赤だ。

「驚いた・・・?」と訊く彼女は、晴れやかな顔をして笑った。


「それは・・・、もちろん・・・。」

「良かった。気付かれていたら意味なかったもの。」

 もちろん彼女が僕を憎からず想っていてくれているのはなんとなく気付いていた。だが、ここまで直接的に想いを告げられる程だとは想像だにしていなかったのは事実だ。


「あなたのおかげで、私は色々なことを知ったの。」

 僕は彼女に何をしたのだろうか。ぱっと思い付くのは朝の一幕。だがあれは違うだろう。寧ろ嫌われる要素だ。

「例えば、朝、あなたが私に対して気を遣ってくれたでしょう?」あれだったのか・・・。

「そんな風に人を気遣って、考えられるようになりたいの。」

「私、深く考える前に行動するの。それが原因で上手く行かないこととかもあって。」彼女なりの悩みなのだろう。人とは少し違った彼女の。

「でもね、あなたの事を好きになった、ていう事を人に言ってしまう事はなかったわ。」直情的な彼女が。

「そんな事今まで無かった。好きなモノは好き、嫌いなモノは嫌い。そういう風に言ってきた私が、初めて。」初めて人に秘め事をしたと。

「そう思ったら、あなたの事をもっと知りたくなったの。あなたがどういう事を考えて、どういう風に事を決めているのか。」

「あなたのことが好き。一緒にいたい。私に、もっと色々な事を教えて欲しい。あなたに私の、もっと色々な事を知って欲しい。」


 だから。と彼女は言った。だから、気持ちを伝えたのだ、と。

 彼女なりに考えたのだろう。迷って、それが本当に良いものかどうか考えて、その上で伝えてきたのだ。

 僕と一緒に居たい、と。僕に深慮遠謀、考えることを、教えて欲しいと。



 違う。

「僕は、君が思っているような人間じゃないよ。」

 そう、それは違う。僕は物事を考えて最善を選んでいる訳ではない。

 ただ、受け身で。選ばされているだけだ。今まで、迷宮で目が覚めてから今まで、何一つ自分で決めた事は、ない。

「じゃあ、どういう人なのか教えて。」彼女は僕を見ている。


 怯える様に、言う。

「僕は・・・、怖かっただけなんだ。」だから人の優しさに縋った。

「うん。」

 欲しがる様に、言う。

「僕は・・・、自分と言うものが無いだけなんだ。」だから、人の言う事に従った。

「うん。」

 涙が流れて情けなく、言う。

「僕は・・・、僕は・・・!!」クロエを殺すことなんて、覚悟もできない。



 絞り出す様に言う。

「・・・弱い人間、・・・なんだ・・・。」



「なら、強くなればいいじゃない。」



 僕はハッと彼女を見る。彼女は尚も僕を見ている。


「弱いのなら、強くなればいいじゃない。私、こう見えても強い女だと言われてるわ。私が教えてあげる。だから私と一緒にいて?」


 呆けたような間抜け面を晒しているだろう。涙で濡れた顔は酷いことになってるに違いない。

「いや、あの・・・、話しを聞いてくれてた?ちゃんと考えた?」


「失礼ね。今の私は考えることも出来る女よ。」

 なら何故・・・。

「それでも、私はあなたと居たいと思った。私はあなたに強さを教えてあげられるかもしれない。だから一緒にいる。何かおかしいところ、ある?」

 心底不思議そうな彼女。

 僕の言葉を理解しなかった訳ではない。それでも一緒に居たいから、と。あなたの力になれるかもしれないでしょう、と。だから一緒に居て欲しい、と。



「あ・・・あはっ、ははっ」思わず笑いが漏れる。



 彼女は、すごい。


 自分がしたい事。そして、今は人がしたい事も考えることが出来る、と言った。


 そのどちらをも、彼女は手に入れたいから、だから言葉を紡ぐ。自分の事を決められる。物事を進めることが出来る。


 やりたいことをやる。して貰いたいことをして欲しいと言う。


 僕が出来ない事を全てやってのける彼女。すごい、と、思った。




「で、どうなの?一緒に居てくれるの?」


「えっ!?・・・えっとっ・・・。」


「はっきりしなさいよ。私からの教えよ。伝えたいことははっきり伝える。もちろん人の事も考えてね。」


「じゃ、じゃあ・・・君の気持ちは本当に嬉しいし、君の事は嫌いじゃないよ・・・。むしろ好ましく思ってる。けど・・・大切な子が、いるんだ。」


 アルミナの事。恐らく大層心配していることだろう。悲しませてしまったことだろう。

 今は、問題が山積みであの街に、僕が居たいと思った場所に、帰ることは出来ないけど。

 きっと・・・いや、必ず、彼女の元へ、帰るんだ。


 僕は初めて、自分で決めた。














「・・・ごめんね。」

 伝える。君の気持ちには答えられない、と。


「どうして謝るの?」


「へ?」


「大切な子がいるのね。じゃあその子も一緒に居ればいいじゃない。私と、あなたと、三人で。」


「・・・え?」


「あなたが大切に想う子なら、きっと素敵な人なのでしょうね。会えるのが楽しみだわ。」


「ちょっ・・・え・・・?」僕がおかしいのか?明日ロスアレスさんに聞いてみよう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。