素直になれ(Side:羅威)
現在WEB拍手で公開中のものです。
羅威のサイドストーリーです。
後書きにお知らせがありますので読んでいただけると助かります。
「―――羅威様。本当に、お戻りになられるのですか? 蒼の国へ」
門で待ち構えていたのは、悪友の妻―――口には出さぬが、黙認といえよう―――であった。紅の国唯一の姫にして、この城に生贄として捧げられた彼女は、きっとこの先、悪友の側で、彼を支えるだろう。
悪友や、彼の固い従者が心を許すのも頷ける。彼女は誰にも分け隔てなく接する。もちろん、好き嫌いはあるのだろうが、人物によって差別することはない。
主君を裏切ったとはいえ、敵であったはずの羅威にさえ、彼女は話しかける。周囲がもう少し立場を考えるように注意しても、気にせずに話しかけてしまうのだ。
「領主は責任を持ってその座を辞すことになったのです。誰かが領主とならねば、国は成り立たぬでしょう。今度こそ良い国へしなければならないのですから」
「残念ですわ。男鹿様は相変わらずあまりお相手して下さらないし、誰も構ってくれないんですもの。羅威様がお戻りになったら、また暇になってしまいます」
「いや、私が去ればすぐにでもあの男はやってきますよ」
あまりにも羅威が素直に姫の相手をするので、空いた時間にも顔を合わせずらいという話を彼の従者から聞いたのは少し前だ。ちょうど国へ戻ることが決まった時期だったので、帰るまで続けてやろうと思っていたのだが、本当に顔を合わせられてないのか。悪友は何もかも悪い方向へ捉えがちなので、姫が正直に喜びを伝えても、それを嫌味ととるだろう。
「仕方がない男だ。……何度も手を焼かせる」
「……? どうかなさいましたの?」
城から聞こえた物音に反応し、羅威が顔を上げると、月秦がかけてくる所だった。
鈴は扇で口元を隠したまま、顔を綻ばせた。いつも鈴に振り回せれているこの男が、この城で一番といって良いほど冷酷などとは、到底思えない。
「姫君、勝手に外に出ないでくださいと、麗花に言われませんでしたか?」
「あら、だって誰もいなかったではないの。それにこの城は安全でしょう? 見送りくらい自由にさせてくれてもいいでしょう」
「月秦、伝言だ。たまには素直になれ、とな」
月秦は羅威に使われることが不服なのか、いつもの気難しい表情に戻っている。おもわず苦笑して近づいてやり、「お前の主君にだぞ」と小声で付け加えると、不服そうな表情のまま、黙って頷いた。
「またいらしてくださいね。お元気で」
黙って振り向き、門をくぐると、その影には悪友の姿があった。らしくもなく見送りにきたのか、それとも自分がいなくなったのを見届けてから姫に会うつもりなのか。
「素直になれよ」
そう呟いて、羅威は蒼の国へと足を進めた。
実はこのたび改稿いたしまして、新たに改稿版として投稿しました。
飛びやすいようにこの作品をシリーズ扱いにしましたので、シリーズのリンク?より改稿版へ行けます。
かなり表現が変わっているかと思いますので、ブックマークはそちらに移動した方が良いかもしれません。
正直に申しますと、第3章辺りで抜けている話があることに今回気づかされました。おそらく小規模な改稿を行った際に抜けてしまったのだと思います。サイトのほうも長らくその状態でした。ですので、お時間のある際にまた読み返していただければな、と思います。




