21
一時間ほど二層を徘徊して脱出、の前に壁を鑑定。
この収納袋、権限のない人が鑑定すると☆に見えるらしい。
なにかひっかからない? そう、ゴブリン・キングダム☆とやら、正体見せろ。
『ゴブリン・キングダム(☆)
本来は☆だが、ボスが超越級に進化したことにより、
★★★★★に昇格。その後、隠蔽により偽装。権限一
以下の人が鑑定しても☆としか出なかった』
遅ぇよ、て大声で叫びてぇ。
そして誰が隠蔽したのか? まぁ心の中ではダンジョンさんと確定させているけど、それは人の形や意思を持った存在なのか。
別に犯人探しに取り憑かれはしないけどさ、会話できるなら会いたい存在ではある。
少し謎が解けてスッキリしながら外に、街に出ると夕方っぽい。空を見回すと陽が落ちる手前だった。
早朝に入ってあれやこれやで十時間? 思ったより寝ていた時間が多いのか。腹時計は昼ご飯を求めている。ま、普段昼は食べないけど。
リュックの紐に両手の親指を挟んで胸張って冒険者ギルドのスイングドアを通り、接客中の受付嬢Aをちらりと見て、客がいない受付嬢Bの前へ。いや空いてても昨日のノンデリ受付嬢Aはノーサンキューだけど。
「買い取りお願いしまーす」
「はい。どうぞこちらへ」
収納袋の中に広がる亜空間とかいう謎の仕組みは、出したい物を意識すると真下に現れる感じらしく、袋に手を突っ込み鷲掴みにして、受付嬢がすっと押し出した皿に魔石をジャラっと出す。このジャラっとした音なんだか好き。猫パンチでジャラジャラ遊びたくなる。
「E-1が三個に、E-2がに、二十一個? まさか……、二層をソロで?」
「まいったなぁ、ぼく、なんかやっちゃいました(棒読み)」
「凄い。こんなに強い人、この街にはいませんよ」
強い人は稼ぎのいいとこ行くもんね。Bも戦果を口に出す迷惑系だからもういいやと疲れて換金を促す。いや違うな。戦果を口に出してあげないと暗算どころか数も数えられない人種が冒険者か。
そしてこの程度で強者呼ばわりかぁ。大部屋のゴブリン魔石はE-3と4だったけど、これ、誰も戦ってなくて進化してる説あるな?
誰もレバーのギミックが気にならないのか不思議だったけど、レバー自体知られてなさそう。
確かに考えてみると、ここでまともに活動する冒険者はいるはずがない。潜る人の大半は小遣い稼ぎの住民。パーティで挑んでなお危険な二層は行かない。あとは新人パーティがチュートリアルのつもりで挑み、あまりにも稼げないから、二層の通路で同数のゴブパーティと戦える、きっとそれくらいのタイミングで他所に行く。
「ではこちらを」
「どうも」
銀貨六枚と銅貨九枚、六百九十ペリョンを受け取り外へ出る。
トモコッティ、終わってんな。ぼくも商業ギルドの登録料と商売に必要な資金を貯めたらさっさと他所に行きたい。
トモコッティ雑学王として商業のトリビアを披露すると、登録料は金貨一枚の一万ペリョン。銀貨百枚か大銀貨十枚でもいい。商人もランク分けされていて、Fから始まりAが頂点。Fは行商や市場の露店、隊商にくっついて行くなど、個人で活動する商人で年会費は金貨十枚をギルドに納める義務がある。これが税金になっている。登録しないと市場の利用権がないとか密売扱いだし、払わなかったら登録抹消。その国での商売不可とか信用なしとか、最悪脱税などの犯罪とお上に判断されたら首チョンパ。王政ナメちゃいかんってオチになる。
人を雇ったり店を持つようになると、規模に応じてランクと年会費が上がる。
ランクが上がると商人にとって一番重要な信用が上がるし、ギルドからの融資額も上がる。物流をコントロールするギルドから優先的に仕入れられる商品も増える。
大抵の商人はこういう仕組みの中でせっせと稼いで上を目指すらしい。
ぼくは……、どうだろ。今のところはFランクで構わないけど、いつか自分の船を持って交易してみたい。船、カッコいいじゃん。船も海も見たことなくて父さんから聞いただけだけど。嵐を越えろ、帆を張れ面舵一杯。キャプテン命令でモヒカンにされた大勢のヒャッハー共を従えて海を渡るAランク大商人はロマンがあると思いますっ! なぜモヒカンヒャッハーだらけなのか? ぼくの判断ミスで船が沈んでぼく以外全員死んでも心が傷まないから。むしろ水たまりに叩きつけられたコオロギみたいな死に様が似合いすぎて笑えそう。
ちなみに当たり前だけど、商業ギルドも国の支配下にある。ナントカ侯爵の産業大臣をトップとするガッツリ国の組織になる。そりゃ国の生命の経済を民間団体に丸投げするわけねーよな。逆にその国のお偉いさんはなんの仕事をしているつもりなのか気になるわ。チンピラだらけの冒険者ギルドより手綱はしっかり握られている。
ギルドは互助組織であって、反国家的組織ではないのだから、王に従わなければ存続できない。
「なぁお前、ナイオギたちをどうした?」
目標額のために明日から一日何百ゴブ相手にするのか暗算中、ギルドを出てすぐチンピラ五人に絡まれた。この街治安がいいって言ってたような。そりゃどこにでもこのテの連中はいるだろうけど、遭遇率がさ。
四人は二十歳前、ひとり、ぼくに声をかけてきたリーダーっぽい人はアラサーくらい、に応えた。
「えっと……、串焼き屋のおっちゃん?」
「誰だよ」
「こっちの台詞だコオロギ誰?」
ダンジョン近くの広場だから通行人も多く、ダンジョン入口で歩哨する兵士もこちらに気付いて見ている。
こんな連中どうとでも処理する自信があるから試しに服を鑑定してみた。
『チェニック(☆)
中古の麻の服。相場、84ペリョン。
所有者、ホランド』
ビンゴ。鑑定していることに気付かれず鑑定する裏技発見しちゃった。




