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鑑定文を読みたくて  作者: 丘上
第一章
19/32

19



 天井を意味するカウンターストップ、カンストってなんだよぼくまだ背は伸びるし筋肉ゴブるしパンチでボッとか鳴らせてみせるわっ。

 鑑定に突っ込みたい想いが溢れて恋と錯覚しそうだけど今は抑えて、レベルアップ祭りが落ち着いたらすぐにやりたかったことを実行。


『ゴブリンキング(ダンジョンボス)


 ゴブリンの頂点。スキルを対価に底上げしたステータス。

 攻撃手段は純粋に殴り、蹴り、斬る。その想いが極めし

 果て、森羅万象、概念すら破壊してみせる。

 ※権限二、アンロック。次レベルにアクセスしますか?

 はい いいえ』


「きたぁー」


 と興奮して食い気味にはい。


『ゴブリンキング(ダンジョンボス)


 元はホブゴブリン。倒されることなく月日が経ち、

 最終進化しても制約に縛られ、強者を待ちわびた。

 終末の浄化(ラグナロク)を担う一体。ナツメに倒された』


「ホブゴブリンっ! 聞いたことないけど特別強くはなさそうって想像はつく。やっぱ☆ダンジョンのボスがキングっておかしいと思ったよ。ワインとモンスターは熟成するほど美味しい、ってやかましいわっ」


 でもそっか。お前も楽しんだのか。ダンジョン生まれは個性なしらしいけと、王の矜持と漢気(おとこぎ)みたいな熱い魂は感じた。最後はなんかぼくもあてられて変なテンションになって叫んでたなアラやだ恥ずかしい、とナツメは戦いを振り返る。

 すんごい不穏な文章が見えたし初めて自分の名が混じってるしで気になることは盛りだくさんだけど、ちょっと今、疲れがピークでもう無理っぽい。

 スライム来ないよね? ぼく自身がゴミ判定されたら次こそダンジョン吹き飛ばすぞ絶対来るなよ。おっと折れた短剣回収して元に戻しとこ。

 ナツメは半分ビビりながら疲労に耐えられず、その場で眠りについた。キングに寄り添うように。



 感覚的には二、三時間、ナツメが目を覚ますと目の前に、子供がうずくまって隠れられそうなサイズの木の箱があった。きしむ身体に土のベッドを思い出してブルーになりながら起き上がって観察すると、角や錠前は年季の入った鉄っぽく、蔓草模様に銀メッキ? 蓋(ふた)の中央に赤い宝石が埋め込まれたゴテゴテの宝箱。なんで?

 いやダンジョンはそういうトコあるって聞いたけど。ボスだから? 魔石もないし、確率? とりあえず鑑定。


『宝箱


 ダンジョンギミックの一種。

 トラップの場合も多いが、中

 に宝が入っていることもある。

 知的生命体を招く寄せ餌』


 なんか……、不穏な表現増えた? 理由は分からないけど少し鳥肌立った。深淵に覗かれてるような。

 おっとそれより、これが罠なら遠くから魔法を使って開けようかな。スライムの前例があるし、凶悪ななにかが発動しても驚かない。そのへんどうなの鑑定?


『宝箱(罠あり)


 内部上方に鉄球あり。蓋を開けるか衝撃が

 加わると滑り台を下り、穴から底まで落ち、

 引き金が引かれて作動。榴弾魔石気化爆発』


「えっぐぅ。はぁ? えっぐーーー。ホントに凶悪なことあるぅ? ボス倒したらご褒美でしょ。無防備に開けてもお宝ゲットでしょ。えー、これ世の中ハッピーエンドの冒険者おるぅ?」


 ナツメは後退りながら叫んだ。寝ている間に足が当たったらどうなってたん? 自分が散々気化爆発(チュドン)の魔法を使ったことに対する意趣返しなん? 爆発で破片をばら撒く榴弾って殺意上乗せしてるし。ダンジョンさん、実はキレてます? なんで足当たんねぇんだよとか今舌打ちしてますぅ?


 床に穴を空けて入り、目だけ覗かせて宝箱を見る。爆風ダメージをよけるには下。テストに出るぞ。

 いやもうスルーしたほうが良さそうだけど、ボスに立ち向かったくせにそこは逃げるんだププっ、とか空耳が。ムカつく。


 というわけで宝箱の周りに空気中から水を集めて、まとめてドボン。ほんのわずかな隙間だろうと浸水しちまえと、丸い水の中に宝箱を沈めてやった。これで鉄球も水で動かせるし機能しないでしょ。中のお宝が水でダメになる可能性は、鼻で笑ってやる。ハッ、どうしても欲しいとか思ってねーし、てナニかと戦っている。


 鍵はかかってなかったようで、そのまま水を操り中から蓋を開けた。鉄球ごと外にブワシャっとぶちまけて、中は湿度なしのからからに乾いている。ではお宝を拝見しますか。

 身体を風魔法で厳重に守ってビビりながら近寄り、中を覗いた。剣と背負い袋? とりあえず持って箱から離れて穴へ。


『アメノムラクモ(★★★★★)


 森羅万象、概念すら斬る神剣。

 ただし、心技体が未熟な者が振る

 うと祟る。超級アーティファクト』


 「ちょ」


 ナツメは反射的に神剣とやらを広間の向こうへぶん投げた。カランカラン鳴って床を滑る神剣。呪いの剣なんていらんわ。

 キングが使っていた長剣だから業物なのは分かっていたけど、まだトラップを仕掛けてくるのかアッブネ。


『収納袋(★★☆☆)


 収容量、1m³(1m×1m×1m)。中は亜空間。重量無効。

 魔力による一度きりの登録契約。登録者のみ利用可。

 位階3(微生物)以上は不可侵。下級アーティファクト』


 パッと見は渋い茶色の牛革で作ったリュックサック。少しテカってて水に強そうなのがセールスポイントくらい。広い口を革紐で縛り、その上から革布で被せて縛る、特に目立つ要素のない普通の背負い袋。紐に両腕を通して背負い、ナツメはご機嫌になった。


「こうゆーのでいーんだよこうゆーので」


 こういうのでいいんだよ少年、初めての遠足の前日なみにルンルンと広間を通り、いつの間にか来た時の壁に現れていた唯一の出入り口、先の見えない闇の穴を潜った。


 神剣? スライムにあげる。



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