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鑑定文を読みたくて  作者: 丘上
第一章
14/32

14



 分岐はあっても二つという、入り組んでもない洞窟を頭の中でテキトーにマッピングしながら歩く。


『ゴブリン・キングダム 二層(北)』


 鑑定テクで方角が確認できるから、大雑把には合っているはず。


 気配を頼りに進んでいるけど、どうやら外周を目指しているっぽい。

 二、三体で行動するゴブリンパーティを倒しつつ十分ほど進み、道の先が広い空間に出た。

 気配は十三。行きますか。


 ナツメは通路に背負い袋を放り、大部屋に飛び込んだ。


『ゴブリンソードマン


 身体強化 剣術 一文字斬り』


『ゴブリンウォリアー


 身体強化 体術 旋風脚』


『ゴブリンランサー


 身体強化 槍術 紅蓮刺突』


『ゴブリンメイジ


 魔力操作 土魔法』


『ゴブリンプリースト


 棒術 回復魔法』


 ここでも視界は五メートルほど。大部屋の一辺はおそらく十メートルくらい。暗がりの向こうにも気配はあってナツメに反応している。


 まずいな。見える範囲を簡易鑑定して、ナツメは内心焦った。

 ここにきて魔術師(ウィザード)が現れた。メイジとウィザードの違いはないだろうしスルーして、さきほどアーチャーがいたから後衛職の登場は予想していたけれど、闇の向こうからの攻撃はちょっとズルい。最悪離れた気配八つが全員ウィザードで一斉魔法攻撃は泣くぞ? 向こうからも見えてないっぽい、とか決めつけて見えていたら隙になる。


 ナメてたら死ぬ。ナツメは気力操作に魔力操作も重ねて全身を整えた。参るっ。


「グギャアッ」


 一瞬で距離を詰めたゴブリンの回し蹴りをスライディング気味にかわしながら短剣を一閃。軸足を斬り飛ばし、高速で倒れるゴブリンを振り向き立ち上がりながらの膝蹴りで後頭部を陥没させて前に飛ばす。

 ナツメの背後に回って槍を突き出そうとしていたゴブリンはたたらを踏み、ナツメは左にダッシュ。常に動いて一対一の状況を作るのが有効な戦術。


「ゲイッ、ガ?」


 ナツメの正面からタイミングを合わせてショートソードを振り下ろそうとしたゴブリンは、突然片足の力が抜けたように左によろめいた。


 左足で踏み込んだ床が少し凹んだせいで。


 そんなゴブリンの横を通り抜けざま一閃。首をはねたナツメは暗がりから視界に入ったゴブリンアーチャーに速度を落とさず突撃した。やはり相手は闇の向こうからこちらに狙いをつけていた。それともアーチャーは気配察知持ちとかありそう。


 両者の距離は四メートル。引き絞られた弓弦が指から離れ、下から上へ、矢はナツメの眉間を一直線に狙い、見えないなにかに当たったかのように斜め下に軌道を変えて、ナツメの首筋をかすめて後方に飛び、ナツメを追いかけたゴブリンランサーの眉間に突き刺さった。


 ナツメの前方に小さな竜巻が発生したせいで。


 いきなり魔球を生んじゃったピッチャーみたいな主人公顔したゴブリンの首をはね、左から右に短剣を振り抜いた勢いで右に進路変更。五メートル先に両手を床につけるゴブリン。


「ギャギャウ、キャーギャー、ギョギョギョ」


 前方足下に魔力の励起を感じたナツメは迷わずジャンプ。床から一瞬で生えた一メートルの土の槍を飛び越えた……、先に回り込んだゴブリンランサーBが槍を落として自分の首を両手で締めるようにもがいている。

 ナツメは着地の勢いでゴブリンランサーBの首を両腕ごと落とし、土下座ポーズでおもてを上げたゴブリンの首もアンダースローのようにはねた。


 ゴブリンランサーの鼻と口周りに水の塊がまとわりついたせいで。


「ギャグワ、キャ」


 後頭部陥没ゴブリンはまだ生きていたのか、ゴブリンヒーラーが近寄って回復魔法を使おうとしたけど詠唱失敗。のけぞったところを駆け抜けたナツメは首をはね、ついでに陥没ゴブリンもとどめをさした。


 口元に火花が発生したせいで。


 これがナツメの新しい戦闘スタイル。詠唱の必要がなく、日常的にリラックスしながら使っている生活魔法の併用。

 オリジナル魔法は無数に持っている。ナツメも男の子。暇さえあればカッコいい魔法を考えて、チカット村は暇しかなかったわけで。


 でも初陣、コボルド相手に一切が使い物にならないと知った。

 ではどうするか? 答えが生活魔法。周囲の気体液体固体ついでに熱の軽い操作。

 誰もが魔力を持っていて、魔法抵抗力を備えている。だから例えば相手の血液を沸騰とか、気軽にそんな凶悪な使い方はできない。強大な魔力を込めて詠唱する攻撃魔法としては可能だけど。

 でも抵抗のない周囲をちょっと変えるくらいは造作もない。戦闘ではそのちょっとの補佐で充分使える。


 ちなみにナツメは手以外のどこからでも魔法を発動できるけど、大抵の人はできないしやろうとしたこともないとか知らない。目から光線(ビーム)も発射できないとか遅れてるぅ。太陽を直視するくらい自損するし、一メートル超えると殺傷力がガタ落ちするお遊び魔法だけど。


「ゴオウッーーーーーーー」


 身体が一回り大きいゴブリンが両手剣を振り抜いて咆哮した。


『ゴブリンリーダー


 身体強化 大剣術 剛力 金剛 威圧

 連係 二段斬り 風車斬り

 肺活量5600ml 残28ml』


 息を吐ききったところで口周りの酸素を抜いてみた。


「ァ゙ッ、ァ゙ッ」


 肌が緑から紫へ。チアノーゼを起こして倒れた。

 なにが起きたか分からずリーダーを凝視するゴブリンズ。ええぇぇ……、という空気の中、ナツメは残りを倒して戦闘終了。索敵は油断なく行いつつ、一息ついて変化に気付く。


「あ、レベルアップきたこれ」


『ナツメ LV17』


 一応死体を鑑定してみたけど、コボルドの時の権限がどうのって選択肢はなかった。まぁ権限百とか千とか頻繁に上がらないとは思っている。あったらヤだ。


 上昇幅が小さいおかげか、経験済みなおかげか、前回のようなダルさや違和感はない。

 感覚のズレはないか腕を振ったり軽く跳んで確かめながら、ナツメは背負い袋を取りに戻った。





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