↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定文を読みたくて  作者: 丘上
第一章
12/32

12



 ダンジョンから出ると元から曇天だったせいで、夜と錯覚しそうなほど暗く感じた。

 ナツメは目をシパシパさせてピントを調整してから辺りをうかがう。


 入る時に引き止めた兵士はまだ近くにいて、ナツメを見て少しだけ口角を上げた。ダンジョンは国の管轄だからなにかを監視しているのか、ナツメには分からない。

 冒険者を当て込んでいるらしき屋台も周囲で商売にはげみ、革鎧姿の客の買い食いもちらほらと。ああ、とナツメは納得した。革鎧を着たおじさんおばさん、つまり新人だけでなく小遣い稼ぎの住民も多くていい客になるのか。


 夜明け前に起きて、今が朝か夕方か分からない感覚。ダンジョンの中と外はそういう、軽い混乱をいざなうらしい。初めての緊張で大袈裟に感じているだけかも。ナツメはそう判断したが。


 とにもかくにもまずは換金と、ダンジョンに入る時に視界に入っていた看板を探す。

 盾と剣を意匠したピクトグラム。分かりやすい木の看板が、出入り口のそばから飛び出した棒からぶら下がって主張している。

 民家は色が灰色なだけで、外壁と同じく継ぎ目の見えない石作りの街並みが特徴の中、冒険者ギルドは大男が一抱えするほどの切られた石を積んで建てられていた。屋根も周りは赤レンガの形を変えたような瓦なのに、一軒だけ黒いなにか。みなさんワタシがかの有名な国際巨大組織ですよ、みたいなアピールが見て取れる。


『冒険者ギルド


 ダンジョンに併設した魔石買い取り所。

 冒険者は各地のダンジョン都市を訪ねる

 ため、周囲の害獣やモンスターの討伐、

 旅の護衛を依頼されることもある』


 そのへんはもう聞いたなぁ。他にない? と看板を鑑定。


『冒険者ギルド


 名称は近隣諸国との合意に基き統一。

 そのため勘違いされがちだが、その国

 のギルドはその国の支配下にある』


 まぁ王政の国だらけなのに自由な民間武装勢力(マフィア)があるわけないか。国際でも巨大でもなかった。

 アレだね、どうせ戦争でも起こると最優先で徴兵されるのが冒険者なんだろうねオー怖。


『冒険者ギルド


 魔石の流通を牛耳る巨大組織を目指し、

 暗躍に勤しんでいるが、安定して質の

 高い魔石を供給しているのは軍だから夢』


 本当に強い人は軍に入って高い給料もらって、専用ダンジョンの深層に潜っているんだろうなぁ。

 肉体的にも精神的にも大変だけどレベルアップのノウハウが確立している軍人になって強く長生きするか、なるだけなら誰でもなれる冒険者になって自由と一攫千金を夢見てギャンブルするか。鑑定文の言う通り夢は夢だね世知辛い。

 ナツメは優しい目つきで両開きの扉をひら……、こうとして止まった。


『スイングドア


 ドワーフ発明によるバネを取り入れた扉。

 目隠しするだけの位置につけた、自動で

 元に戻る仕組み。主にチンピラに好評』


 喧嘩で壊して弁償とかないからかな? 開けたものを閉めることができない躾(しつけ)のなってない人専用とも聞こえる。それよりバネ、凄い発明だな。

 モノ作りといえばドワーフ、の評判を思い出していつかドワーフの里も訪ねようと決心しつつドアをひら……、かずしゃがんで下をくぐり抜けた。


「チッ、邪魔だガk━━」


 ナツメは頭上を豪快にスイングするドアをやりすごし、ドアを豪快に押した右隣りの人物の背後に進んで回し蹴り一閃。悪意のある誰かの延髄をつま先でムチウチにしながらドアを押しのけ外に吹き飛ばした。


「おー、このドア便利だぁ」

「て、てめぇ」


 すぐ近くにいた仲間らしき二人の人物にナツメは振り向き近寄りジャンプ、ひとりのあごをアッパーのように蹴り飛ばし、空中で後ろ回し蹴り、もうひとりのこめかみをかかとで吹き飛ばした。殺しはしないが三人とも脳ミソ揺らして失神KO。心の中で一撃必殺ドベルチーカン流とか名付けているけど、天国のコボルドがウンウン頷いてはいまい。影響を受ける前にそのコボルドも急所を狙って倒してたやん。


 ナツメは不毛なケンカが大嫌い。バカや無能な敵はダラダラ時間をかけずにヤっちゃえ系男子です。会話も無理。こちらの知能まで下がりそう。


「買い取り、お願いします」

「は、はい。どうぞ、こちらへ」


 室内は静まり返り、六人の冒険者や住民らしきおじさんに凝視されてもナツメは気にせずカウンターに進み、受付嬢の示す皿に魔石をジャラっと置いた。


「E-1二十一個とE-2が一個、ゴブリンシーフも倒したんですね。ソロなのに凄い。ではこちらを」


 受付嬢が別の皿に置いてナツメに押し出した金は四百五十ペリョン、銀貨四枚と銅貨五枚。


「へぇー、魔石一個は銅貨二枚なんですね」


 人前で戦果をしゃべるコンプライアンスがばがばなんスな社風に呆れつつ、ナツメはわざと大きめの声で確認して反応をうかがった。


「はい。E-2は三枚になります。暗算も早いですね」


 受付嬢は悪びれる様子もなく、周りの反応もおかしな空気にならない。鑑定の相場はE-1で銅貨三枚だったが、これは個人ではなくギルドが中抜き(やらか)しているのか? ここだけ不正しても他所に行った冒険者からすぐバレるわけで、ギルド全体の不正っぽいな。じゃあしゃーない。ナツメは切り替えた。受付嬢個人の悪意だったらコッソリ始末するつもりだったけど、セコい金額でゴネるのは下らない。


 地味にピンチだったと気付かない受付嬢はノンデリに話しかけてきた。ナツメとしてはまたのご利用をとかで終わらせるマニュアル対応してほしいが、顔には出さない。


「あの、あんなことして大丈夫?」

「ですよねー、教会に行ったら大銀貨一枚くらいで簡単に治してくれるんでしょ? また絡むのかな。ま、次に会うのはダンジョンだから問題ないか」


 周りはギョっとして、受付嬢はキョトン。しょーがないしょーがない。ナツメは軽く頭を下げて建物を出た。通り道にいないのに他の冒険者は壁際に下がった。


 その後は雑学王として迷わず手頃な四百ペリョンの木賃宿(きちんやど)に一泊し、夜明けとともにいざ出陣。

 こんなに早くから営業中の抜け目ない屋台で暖かいスープを頼んで美味すぎて感激。トッピングを頼んで手元に残った銅貨一枚。数秒じっと見つめる。


 気配察知に知ってる三つの動きを感じながらダンジョンへ。夜明け前からダンジョン前広場で張ってたとか凄いよね。その情熱を自己の成長に注げよ。


 あくびをかみ殺す兵士に挨拶して入口に入り、数分進んで最初の分岐点のあたりに気配が三つ。待ち伏せのつもり?

 折角だし実戦で使う機会のなさそうなオリジナル魔法撃っとくか。


「水素分離に冷却からの酸素圧縮、プラズマ着火でご機嫌よう、エクスプロージョン」


 右手から撃ち出された固形酸素と液体水素と魔力の塊は弩くらいの速度で暗がりを貫き、五十メートル先で大爆発。

 ナツメは周囲に風を巡らせ爆風を受け流し、酸素が足りているか鑑定で確かめてから解除して、先に進んだ。

  

 もう一度繰り返します。ナツメ、バカや無能な敵はダラダラ時間をかけずにヤっちゃえ系男子です。巻き込まれたゴブリン四体『解(グェ)セヌ』


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。