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救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~  作者: 待鳥園子


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25 悪意

「……居ました。あちらですね」


「あら! 本当ね。見つからないのも、無理もないわ。こんな場所に居たなんて……良かったわ」


 ダミアンの案内によりサブリナは行方不明になっていたグレンダ・ハウエルという名の高齢女性を、小さな崖のようになってしまった辺りで発見することが出来た。


 邸からは遠くないが道からは外れているので、これまでの捜索むなしく見つからなくても無理はない。


 彼女はぐったりとしているが意識はあるようで、二人の姿を見てから軽く手を振っていた。


「グレンダさんですか?」


 慌てて駆け寄ったサブリナが彼女へと声を掛けると、白髪のグレンダは力無く頷いた。


「ああ……良かった。もう駄目かと思った。見つけてくれたんだね。ありがとう。実は、ここに落ちた時に足を挫いてしまってね。歩けないんだよ」


 どうやらグレンダは足を痛めて成す術なく、ここで座り込んでいたらしい。


「まあ! ……どうしようかしら。私が持ち上げられないし」


 サブリナは困ってしまった。幼いダミアンと自分では彼女を持ち上げられない。


「サブリナさん。大丈夫です」


「……ダミアン?」


 ダミアンはサブリナに向けて微笑んだかと思うと、グレンダの体がふわりと浮き上がった。


「わ! すごいね! ……もしかして、魔法使いかい?」


 グレンダは目を輝かせた。位置が小さな崖底から地面へと移り、今ではサブリナと目線が合うようになっていた。


「はい。そうです。あまり動かないでくださいね……サブリナさん行きましょう。グレンダさんが住む場所までこのまま送って行きます。怪我を治したり医者を呼ぶのも、それからが良いかと」


「そうね。グレンダさんも疲労していると思うし、それが良いと思うわ」


「ああ……ありがとう……ありがとう……!」


 これまで不安で堪らなかったのか、助け出されたグレンダは泣き出してしまい、近くにある小さな村に着き家族と抱き合う頃には号泣していた。


 村人たちは口々にダミアンにお礼を言い、彼も嬉しそうにしていた。


「ああ……本当に良かったわ。ありがとう。ダミアン」


 共に歩いて邸へと戻りながら、サブリナはダミアンへお礼を言った。


(良かったわ。足を痛めていれば、あの崖を上り切るなんて難しいことだし、ダミアンが居なければ見つけることは難しかったと思うもの)


「いえいえ……サブリナさんがお願いしたことですから」


 本来ならば魔法使いは、報酬のある仕事でなければ受けない。それを思い出したサブリナはダミアンに慌てて言った。


「もちろん、報酬はちゃんと支払うわ。貴方はちゃんと仕事をしたもの」


「……いえいえ。代理をする仕事と一緒に、ルーファスから頂くので大丈夫です」


「ルーファスには、悪いことをしてしまったわね……」


 魔法使いへの報酬は高額だ。平民が軽く支払えるものではない。けれど、大魔法使いとなれば、彼らの言い値になってしまう。


 本来ならば、到底聞いて貰えないような要求を課し、無料で聞いて貰えたことになるのだ。


「彼がそうしたいと言っているので、良いのではないでしょうか」


 ダミアンは肩を竦めて微笑んだので、サブリナは曖昧に笑うしかない。


(あの時は国を救うためにそうするしかないと決意したけれど……ルーファスに謝りたいわ)


 けれど、本人が居ないのではどうしようもなく、サブリナはため息をつくしかなかった。



◇◆◇




 アシエード国王より城へと呼び出され、サブリナは『魔界の門』の完全封印に向けての進捗を報告した。


 魔界の門の封印が解かれて、はやひと月は経ち、国王も滅亡の危機は去ったと見てか、余裕ある態度で王座へと座っていた。


「……それでは、順調に進んでいるのだな?」


「はい。ルーファスの代理として来た魔法使いダミアンは、仮の封印を重ねがけしながら、解析を進めております。彼によるとルーファスは三ヶ月と言ってあるが、それほど時間は掛からないのではないかと言っておりました」


 滅亡の危機迫るあの日、ルーダスに縋っていた姿はまるで夢ではないかと思うほどに威厳のある態度で国王は頷いた。


「それでは、ラディアント伯爵令嬢。引き続き頼む……君の今後については、余に任せるように」


「……ありがとうございます」


 サブリナはカーテシーをして下り、謁見室を出た。


 国王があれを言ったということは、彼の息子たち王子でなくても、良い条件の結婚相手を特別に用意してくれるということだろう。


 けれど、サブリナはそれをあまり嬉しく思わなかった。


(どうしてかしら……これから、私は何の不満もなく過ごすはずなのに)


 城の廊下を歩いている時、初老の男性とすれ違った。サブリナは顔を伏せ失礼のないように対応した。


「……まだ生きているのか」


 その言葉が聞こえた時、サブリナは自分が狙われたあの事件を思い出した。


(コードウェル公爵だわ……彼が、彼が私に暗殺者を……?)


 サブリナとルーファスが共に夜会に出ていた時、彼は二人を鋭い目で睨みつけていた。


 動機は全く思いつかないが先ほどのすれ違いざまの言葉を聞けば、サブリナを殺したがっていることは間違いない。


(ルーファスにこの事を相談したい……けれど、連絡方法もないんだわ……)


 そう思い途方に暮れてしまっても、もうどうしようもなかった。


 ルーファスは自らの代理を送り、サブリナの『アシエード王国を救ってほしい』という願いを聞き届けている。


 ダミアンに頼んで無理に連絡を取れたとしても、これ以上、姿を消してしまった彼に何を望めると言うのだろうか。


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