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救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~  作者: 待鳥園子


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24 名前

「あの……ダミアン。貴方ってこれまでに、どこで生活していたの?」


「……魔塔と呼ばれる、魔法使いが集まる場所に居ました」


 サブリナからの質問にダミアンは、手に持っていた本を読みながら答えた。夢中になっている時の声を掛けられればそうなるのかもしれないが、誰かに話かけられて答える適当な態度であるとは言えない。


(ルーファスは彼が成人しているからと、何も言わなかったけれど、これは私が言った方が良いわよね)


 魔法使い特有の悪癖なのか、ルーファスも同じようにすることがあったが、それは彼が悪い態度だとわかりつつやっていたとサブリナも理解していた。


 けれど、ダミアンはまだ幼い。基本的な行儀作法も教えてもらえずに、ただ知らないのかもしれない。


「ダミアン。誰かと話す時には、その人の目……もし、見づらかったら、目でなくても良いけれど、その人の顔をちゃんと見てから答えなさい」


「え! あ……はい」


 本の頁に目を落としていたダミアンは、慌てて顔を上げた。美しい紫色の瞳と視線が合い、サブリナは思わず息を呑んだ。


(本当に……綺麗な紫の目だわ。とても珍しい色だけど……アシエード王国から出たことがない私には、彼らが何処の地方の出身なのかわからないわね)


 アシエード王国では概ね金髪や銀髪、そして、色素の薄い目を持ち、ルーファスやダミアンのように暗色をを持つことは稀であった。


 彼らの色をどの辺りに住む人々が持つのかを、サブリナは知らなかった。


「集中して本を読むのも良いけれど、休憩すると時間と決めたのなら、お茶を飲む時は本を読むことはやめた方が良いわ。だって、貴重な本を汚してしまうかもしれないでしょう?」


「……はい。ごめんなさい」


 素直に謝ったダミアンはサブリナに叱られて、戸惑っているように見えたものの、怒りの表情を見せることはなかった。


 反省した様子で本を置きに行ったので、サブリナはほっと息をついた。


 これまでに居た魔塔と呼ばれている施設には、おそらくは幼い彼を叱って教育するような存在は居ないのかもしれない。


 それならば、一般的に行儀が悪いと思われるような行動をしても、誰も注意しないので知らない事も仕方ない。


「知らなかったのなら、やってしまっても無理はないわ。今度から気をつけてね」


「はい」


 ダミアンはサブリナの言葉ににっこりしながら頷いて、お茶に口を付けた。


『……放送致します。グレンダ・ハウエルさんが、三日前から行方不明になっております。もし、お見かけになられた方は、近くの騎士団派出所までご連絡ください。ご高齢なので、家族も心配されております。繰り返します……』


 拡声魔法での放送が開いていた窓から響き、二人は揃って外を見た。今は悪天候ではないものの、高齢の方が三日間も行方不明となれば、家族は心配になってしまうだろう。


「……あの、ダミアン。もしかして、貴方、行方不明になった女性の居場所がわかる……?」


「はい。わかりますよ。先ほど、お名前を聞いたので」


「まあ。すごいのね! ……けれど、名前を知っていたら、魔法使いって誰が何処に居るかわかると言うこと?」


 サブリナが不思議になって聞けば、ダミアンは事もなげに頷いた。


「はい。そうです。探索魔法には正式名称が必須ですので、だから、僕ら魔法使いは、名前しか名乗らないようにしています」


 ダミアンはそう言って微笑んだ。


(……大魔法使いルーファス。それに、ここに居るダミアン。アシエード王国に雇われていた魔女アデライザだってそうだわ。彼らは名前(ファーストネーム)しか名乗らない。その理由は、同じ魔法使いに居場所を知られないためだったのね!)


「そうなの……だから、ルーファスもダミアンも、名前しか名乗らなかったのね」


 ルーファスは元々公子だったと言うのだから、家名がないとはあり得ない。だが、それはこういう理由があったのだ。


「自分自身が探索魔法を使えるので、魔法使いは皆そのようにしていますね。それに、現在地を知られても特に問題なければ、別に隠す必要もありません」


「……ルーファスが今何処に居るかも、ダミアンにはわからないの?」


「はい……わかりませんね。魔法使い同士だと、特にわからないんです。探索魔法の原理もお互いにわかっていますし、隠すことも可能ですから」


 サブリナの質問にはダミアンは困った表情で答えた。


「そう……」


 ルーファスが何処に行ってしまったのかは、サブリナも気になっていた。


(恋人の振りをしていて全て嘘だと言った時、ルーファスは私を責めなかった。今更、彼に何を話すのかと言われれば、私には何も言えないけれど……)


 彼に嘘をついて騙していたことには間違いなく、サブリナはもう一度、ルーファスに会いたいという気持ちは持っていた。


「サブリナさん! あの、行方不明になった方は、この邸のすぐ近くに居るみたいです。良かったら、一緒に行きますか?」


「ええ。もちろんよ。行くわ!」


 考え込んでいたサブリナはダミアンの声に顔を上げて、嬉しそうに立ち上がった。



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