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救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~  作者: 待鳥園子


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13 明かされた謎

「私も……何故、魔界の門の封印が解けてしまったのだろうと、不思議に思っておりました。ルーファスもそうだったのですね」


 魔界の門に掛けられた封印は、ルーファスから見ても、そうそうのことで解けるようなものではなかったらしい。


(けれど、ルーファスの言う通りに封印を掛ける方が先決なのだわ。封印が完全に解かれてしまえば、魔物大暴走(スタンピード)が起こってしまうもの。原因究明は後回しにしても)


 何故、封印が解けてしまったのか気になるところではあるが、現時点で最優先すべきなのは不安定になってしまっている魔界の門の完全な封印だ。


 だからこそ、アシエード王国国王も総力を挙げて、犯人捜しをしている訳にもいかないのだろう。


「ああ。だが、犯人を捕まえようにも、時間が足りない。それに、あれほどの強固な封印を破るための力は、短期間で再度使うことは難しい……この僕でも」


「ルーファスにも……ですか」


 サブリナは驚いて、目を瞬いた。世界でも数人しか居ないという貴重な大魔法使いでも、魔界の門の封印を解く事は難しいと言う。


「……ああ。だが、それは短い期間しか猶予が無い場合の話だ。だから、封印を解いたのは、僕よりも魔力が劣る魔法使いでもおかしくない。魔界の門を開いて、何か得をするような人物なのだろう……その動機が、僕にも、なかなかに思いつきづらいが」


魔物大暴走(スタンピード)を起こして、得をする人……ですか」


 複雑な魔法解析も出来てしまうルーファスでも、何が目的かという動機が思いつかないと言う。だとしたら、サブリナにはとても思いつかないような、人物の犯行なのかもしれない。


「まあ……それを考えるのは、魔界の門が、完全封印が出来てからにしよう。サブリナは行ってみたい場所はあるかい?」


「……え? 行ってみたい場所、ですか?」


 ルーファスから唐突に行ってみたい場所を聞かれて、サブリナは戸惑った。


「ああ。何処でも良いよ。今ここで、言ってみてくれないか」


 ルーファスはすましてお茶を飲みつつ頷いたので、サブリナは暫し考えた上で、思い浮かんだその場所を口にした。


「……亡くなったお母様と……良く海を見に行った場所なのですが、ラディアント伯爵領にある砂浜に行ってみたいです」


 サブリナがそう口にしてすぐに、潮の香りがして、見える光景が変わっていることに気が付いた。


「ああ……確かに綺麗だね。美しい景色が見える」


 ルーファスは足を組み替えて、優雅にそう言った。


 椅子とお茶の載った机と一緒に、二人は白い砂浜に移動していたのだ。器用なことに机に積み上がっていた本や書き付けていた紙は、ここにはない。


「まあ……凄いわ。ルーファス。これも貴方の魔法なのね?」


 視線の先にある青い水平線に、サブリナはため息をついた。


 日々弱っていった母ニコレッタは、ついには歩けなくなってしまって、白い砂浜には来られなくなってしまったが、ここで母と二人で来た記憶が蘇った。


「実は僕は多くの人から、大魔法使いルーファスと呼ばれていてね。便利な魔法を使うことが出来る……君はもしかしたら、知らないかもしれないが」


 ルーファスは澄ましてそう答えて、サブリナはそんな彼を見て微笑んだ。


「当分……ここには、来られないだろうと思っていたので嬉しいです。ありがとうございます。ルーファス」


 父フレデリックはラディアント伯爵領には、ほとんど帰らない。代官に管理を任せて領主たる自分は、王都で大臣として多忙な日々を送る。


 サブリナも二年間空けて社交界デビューしたばかりとは言え、本来ならば結婚を準備しているような年齢になってしまっている。


 もし、父が認めるような求婚者が現れたなら、その人との仲を深めるべきだろうし、ここから短期間で結婚することを考えれば、ラディアント伯爵領に戻ってゆっくりもしていられないと思って居たからだ。


「ああ……なんだか、故郷を思い出すな。僕が産まれたのは、海辺にある公国でね」


「……はい」


 遠い目で海を見て話し出したルーファスに、サブリナは驚いていた。


 ルーファスの過去は彼女が疑問に思い知りたかったことでもあったけれど、それは不用意に質問してはいけないような事だろうと思っていたからだ。


「僕はその街で暮らす、大公の息子だった。不思議なことに、僕が産まれてからというもの、魔物たちの襲撃に晒されることが多くなった……強い海軍を抱えていたが、どんどん疲弊してしまってね」


 ルーファスが貴族然としていた謎は、それで解けた。大公と言えば公国の君主……つまり、公子とも言える身分を持っていたのだろう。


「まあ……大変でしたわね」


 サブリナは素直にそう思ったのだが、ルーファスは彼女を見て、面白そうに微笑んだ。


「ああ。そして、小さな公国は幾度もの襲撃を受け、ついには滅びてしまった。僕は忠誠心の高い騎士たちに守られて、命からがら逃げ出してね。そして、逃走している時に気がついたんだ。魔物が狙っていたのは、あの国にある何かではない。僕のこの身体なのだとね」


「……えっ? その……ルーファスが、狙われていたのですか?」


 淡々とした口調で語られる、ルーファスの過去は壮絶だった。


 滅んでしまった故郷、そして、それは自らが原因で起きたことだと知った彼の気持ちを。


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