第045話 会見翌日の野球女子達
不定期更新第一弾です。
翌日の火曜日、登校の道中から私と菜月、瑞季ちゃんはその話題で持ち切りだった。朝最初に顔を合わせた時に互いに「昨日の会見見た?」と尋ねたくらいだ。
「あの二人ってまだ三十三歳と三十二歳なんだってねっ。まだまだ活躍出来そうなのになー。私、実は南城選手に憧れて野球始めたんだよ。打撃フォームも参考にしてるしっ!」
「本人達が納得いかないなら引退するしかないんじゃないかな? あと菜月の打撃フォームは全然南城選手に似てないよ……」
「わ、私も似てないと思います……」
「えーっ、絶対似てる! 似てるはずっ!」
「まあ強いて言うなら、ゆったり構えてるとこは似てるね」
「紗友が辛口だよっ! ていうかなんかドライだね紗友は。もっと何か言うかと思ってた」
「だって南城選手と菜月って足のスタンスからして違うんじゃないかな。周りと比べて長身なのは同じだけどね。あと私はドライなんじゃなくて、選手本人の意思を尊重してるんだよ。でも白石選手のピッチングはもうちょっと見たかったなあ」
「紗友のピッチングって少し似てるよね、白石選手に」
祐一が指摘する。
「確かにっ! 球種もその使い方も似てるしコントロールが良いとこも一緒だねっ」
「言われてみればそうかもね。でも別に意識してるわけじゃないんだけど」
私が投げる球は前世の鳴沢恵吾としての経験を活かした球だ。もしかしたら白石選手が鳴沢恵吾のピッチングに何か影響されたのかもしれないが、それは私の与り知るところではない。
「私らがまだちっちゃい頃だけど、リーグ最多投球回で零点台の最優秀防御率、それで無敗のシーズンがあったんでしょ? それ以来マウンドの女帝って呼ばれたとか。まさにレジェンドだよねーっ」
「昨日、ネットで成績と記録見たんですけど、凄まじかったです」
「そうだろうね。あの二人がいなかったら女子プロ野球がどうなってたかなんて考えたくないよ」
「昔は今みたいに人気じゃなかったらしいね、女子プロ野球」
この中で唯一、女子プロとはあまり関係がないので冷静な発言をする祐一だ。
「そうそうっ! あの二人がスターになって一気に人気が出たんだってねー」
「二人のおかげで女子プロ全体のレベルも大きく上がったからね。人気も実力も上がってお給料も良くなったみたいだし。私みたいに女子プロを目指す子供にとっては嬉しい話だよ!」
「あー、紗友ってやっぱもうプロ志向なんだねっ」
「えっ、二人は違うの?」
「いやー、私も目指してはいたんだけど、紗友を見てからちょっと自信無くなったかな」
「わ、私も同じです」
「菜月も瑞季ちゃんも上手いんだからなれるよ! だから一緒に頑張ろう?」
「うん、紗友にそこまで言われるなら頑張るっ!」
「頑張ります!」
言ってから気付いたけど、今の遣り取りはこの先も一緒にっていう意味に取ってもらえたのかな? いや、それでいいんだけどね!
教室に着いてからも、やはりスポーツ好きの生徒達の間では昨日の記者会見が話題になっていた。そんな中で、大人しい女の子達と違う話題に興じている真美ちゃんを見つけて私は少しホッとした。真美ちゃんもこちらに気付いて、私の席へとやってくる。
「昨日はごめんね。体調が良くなくて休んじゃった」
「全然気にすることないよ! 一日で良くなってよかった」
「それで、紗友ちゃん達勝てた?」
「うん、ちゃんと勝ち進んだよ! でも日曜日も体調良くなかったら無理しないでね?」
「ありがとう。しっかり調子整えておくね」
私は真美ちゃんに球場の場所と試合開始時間を書いたメモを渡した。
「紗友ちゃんが投げるんだよね? 私精一杯応援するから!」
「そうだよ。じゃあ応援を力に変えて投げるね!」
「勝てるように頑張ってね。それにしても、今朝は女子野球の話をしてる人が多いね?」
「ああ。昨日引退を発表した女子プロが二人いるんだよ。二人共凄い選手だから、ニュースにもなってるしね」
「そうだったんだぁ。じゃあ紗友ちゃんもショックだったり?」
「いや、私はそうでもないんだけどね。残念だとは思うけどさ」
そこで予鈴が鳴って、真美ちゃんは改めて日曜日のことを口にしてから席に戻っていった。
午前の授業と給食を終えて昼休みには、由香さんともその話題になった。というか菜月が積極的にその話を振った。しかし由香さんの反応は菜月が期待したものではなかった。
「紗友と同じで残念だなとは思うけど、元々私がああいう選手になれるとも思ってないからね。私は私なりに努力するだけかな」
「由香さんかっこいいーっ!」
一緒に頑張ろうって二人に言った私は格好良くなかったのかな……?
多少個人的な疑問が残るものの、私達野球女子にとって話題に事欠かない日となったのだった。
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