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第032話 クラスのトレンドと練習試合開始

 土曜日の練習試合に向けて意気込んでいた私だが、それまで平日はしっかり学校でお勉強だ。

 月曜の朝から元気良く挨拶。小学生には流石にブルーマンデーとかあまりないよね。皆も挨拶を返してくれる。勿論隣の席の真美ちゃんもだ。


「おはよう紗友ちゃん。週末はどうだった? 私はピアノの発表会があるから練習漬けだったよぅ」


「本番の為にも練習は大事だからね、頑張って! 私は新チームのエースになったよ!」


 若干声量が大きかったのか、クラス中の注目が私に集まる。


「えっ、マジで!」


「紗友がエース? すげー!」


「祐一、本当?」


 男子の反応は案外肯定的なものが多い。日頃から体育の授業でコテンパンにしてきた成果かな!

 一人から真偽を尋ねられた祐一が呆れたように答える。


「本当だよ。多分四番も紗友が打つんじゃないかな」


 その言葉に今度は女子が色めく。


「エースで四番って、紗友かっこいいね!」


「流石紗友じゃん!」


「いや、まだ四番かどうかはわからないからね!」


 そう返したところで、思いもよらぬ発言が。


「そういえば夏休みにお母さんと吉祥寺行った時に見かけたんだけど、紗友っぽい子がめっちゃ可愛い格好してたんだよねー。あれって紗友なの?」


 もしかしてそれは由香さんと愛梨さんとの女子会の時では。私がどう答えようか迷っていると、真美ちゃんからとんでもない援護射撃が飛んできた。


「紗友ちゃん、普段はかっこいいけど可愛い服着たら凄く似合うんだよ! 私の家にも可愛い服着て遊びに来てくれたんだから!」


 そう言われては、素直に認めた方がいいだろう。


「三人組でいたなら多分私だと思うよ。うちの学校の五年生と他の学校の四年生と、三人でパンケーキ食べたりしたんだ」


「ええっ、いいな!」


「紗友、オトナだねー」


「羨ましいー。ちなみにどこのお店行ったの?」


「駅の近くのファッションビルの一階のとこだよ」


「そこ雑誌にも載ってた! 結構並んだ?」


 まさかこんなに食いつかれるとは思ってなかったよ。


「早目の時間に行ったから、少し並んだだけで入れたよ。パンケーキ、すっごく美味しかった!」


 笑顔でそう言うと、更に口々に羨ましがられた。愛梨さんのお姉さんのおかげで、私はクラス内で流行の先端をいっているみたいだ。実際、お店に小学生の姿はなかったから、彼女達にとってはあくまで憧れであって、本当に叶う類の望みではないのかもしれない。そんな憧れのイベントを済ませてしまった私は、すっかり羨望の眼差しを向けられることとなったのだった。


 そこで予鈴が鳴り、各自席につく。隣の真美ちゃんに「さっきはありがとう」と小声で伝えると、真美ちゃんは照れていた。


 そうして他愛ないお喋りをしたり、授業に励んだりしているうちに平日は過ぎていき、待ちに待った土曜日になった。


 祐一の予想は当たっていて、私は四番ピッチャーと告げられた。更に向井コーチは私と祐一を組ませる件をどうやら本気で考えていたようで、祐一は六番キャッチャーに抜擢された。本来レギュラーのキャッチャーはといえば、この日は経験の無いレフトでの出場となった。祐一の活躍次第じゃ本当にコンバートされるかもね。


 今日の練習試合は春日野東のグラウンドで行われるので、武蔵北のチームバスがこちらにやってくる。バスが停まると一番に愛梨さんが降りてきて、私を見つけると駆け寄ってくる。


「紗友~、電話でも話したけど、頑張って良い試合にしようねぇ~」


「うん、全力で行くからね!」


 まだ試合前なので愛梨さんは相変わらずぽやっとした口調で言って、私は普段通りそれに答えた。


 武蔵北の準備が済んで試合が始まる。すると相手ベンチから早速、愛梨さんの普段とは違う声が飛ぶ。


「初回誰でもいいから出ろよ! 私まで回せ!」


 コーチに訊いて確認すると、どうやら愛梨さんも四番ピッチャーみたいだ。要注意だね。他のメンバーは、あちらも主力が入れ替わっていて未知数だ。


 初回の一番から三番を、私はストレートを主体に縦と斜めのカーブを織り交ぜて三者凡退に打ち取った。まずは順調な立ち上がりだね。


 そして一回裏、こちらの攻撃が始まる。とはいえ相手ピッチャーは、五年生が主力だった夏でも三点を奪うのがやっとだった愛梨さん。上位打線とはいえ過度の期待は禁物だ。そう考えていると、夏よりスピードが上がったのではないかと思えるストレートと、カーブ、チェンジアップを巧みに組み合わせてこちらも三人でスリーアウトチェンジとなった。


 二回の先頭は四番の愛梨さんだ。ギアを上げていかなきゃね!


 初球、左打ちの愛梨さんに対して投じたのは、プロ仕込みの握りで縫い目に良く掛かったツーシーム。インコースのボールからストライクになるフロントドアに、愛梨さんは若干腰を引いた。祐一がしっかりゾーンの外から内へのキャッチングをして、球審のコールはストライク。それに驚いた表情を見せる愛梨さん。一瞬でコースを判断して、避けないと身体に当たると思ったのだろう。だが、これは愛梨さんの選球眼が良い証拠でもある。


 だから私は初回にツーシームとカットボールを投げなかったのだ。愛梨さんの後の打席を考えるとカットボールもまだ見せない方が良さそうだね。


 二球目は外からストライクになる斜めのカーブ。愛梨さんはこれを果敢にスイングするも、三塁側へのボテボテのファウルボールになる。


 三球目に高目の釣り球を試してみるも、愛梨さんはギリギリのところで堪えた。次に祐一が出したサインに私は頷く。アウトローへのチェンジアップ。一切緩むことのない全力の腕の振りに騙されて、愛梨さんは三振に倒れた。


「とんでもねー球投げてきやがって!」


 ベンチへの帰り際、愛梨さんが吠える。その変貌ぶりにも慣れてきた私は、爽やかな笑顔を返した。

 続く五番、六番をあっさり打ち取ってベンチに戻ると、打席に立つ準備を素早く済ませる。


 私が打ってチームに勢いをつけるよ!


お読み頂きありがとうございます。

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