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第024話 ピンチ再び

 ノーアウト一塁で、航也くんにチャンス拡大の期待がかかったが、ライトフライに倒れてしまった。続く七、八番をまたも難なくアウトにする愛梨さん。やっぱり下位打線にはちょっと厳しいね。打順ってそういうものだし仕方ないか。


 五回表になり、貴大くんが先頭の七番をアウトにして、八番への二球目を投げた時に投球数記録員が主審に、規定の球数に達したことを告げた。当然ベンチでもカウントして把握している。貴大くんが投げられるのはこのバッターまでだ。


 最後にランナーを出すまいと力投した結果、八番をボテボテのキャッチャーゴロに打ち取った。皆から「ナイスピッチング!」と称えられてマウンドを下りる。今日の継投は明日の決勝も見据えて、チームでは三番手投手を兼任する航也くんだ。


 控えのファーストが走って守備位置につき、内野でボールを回す。私が入る前からこういう場面は何度もあったのだろう。ファーストは落ち着いているように見えた。由香さんと私は胸元の捕りやすい球を返したが、それを見たサードがわざと投げた、微妙なバウンドになる送球も難なく処理する。やっぱりうちのチームは総じてレベルが高いな、と改めて思わされる。


 投球練習が終わり、プレイが再開される。ツーアウトで九番と、楽な場面で継投させてもらった余裕か、航也くんはストレート二球でセカンドゴロに打ち取った。


 下位打線を三者凡退にして勢い付いて迎えた五回裏、私達の打順は九番から。愛梨さんはあっという間に追い込んで、最後はボールになるカーブで三振。


 ワンアウトとはいえ一番に回ったここを大事に行きたいな。私がそう思っていると、愛梨さんの投球に変化が生じた。初球からツーシームを甘めのコースに投げてきたのだ。


 一番は絶好球が来たと思い振りに行くもショートゴロ。二番、由香さんも同じ手段でセカンドゴロに倒れスリーアウトとなった。まさか球数のリミットが近付いてきたからってこんな策に出るとは! ツーシームをコーチに進言しなかった私のせいだ……。他のバッターには投げてこないと思い込んでいたし、自分が打てたことでどこか侮っていた面もあったかもしれない。


「あれはツーシームか。とんでもない子だな」


 向井コーチがそう呟くのが聞こえた。

 でも私が集中すべきは六回表の守備だ。反省は後にしよう。打順は一番からで、怖いバッターが続く。しっかりリードを守りきって勝とう。


 しかし先頭の一番が早速仕掛けてきた。初球をセーフティバント。程よく勢いを殺して三塁線へ。サードはセーフティバントの構えを見た時からチャージしたものの、絶妙な打球の具合にファーストとキャッチャーから送球を止める指示が飛んだ。


 ノーアウトランナー一塁。ファーストランナーは同点のランナーだ。二番打者はベンチのサインを受けて、送りバントの構え。勿論こちらも簡単に送らせるわけにはいかない。航也くんが初球、高目の威力あるストレートを投げた瞬間、ファーストとサードが猛チャージ。それが視界にちらついたのか、それとも単純に球威に負けたのか、小飛球が上がりサードがノーバウンドでキャッチした。一塁ランナーは飛び出してはいない。


「でかいの打ってやるからそんなへこむんじゃねーよ!」


 愛梨さんがざっくばらんな口調のまま、バント失敗した二番を励まして打席に入った。


 初球、ボールになる外のカーブを落ち着いて見送る。航也くんは左投げなんだけど、その見送り方を見るに愛梨さんはあまり左を苦にしていない気配が感じられる。


 二球目、インコースのストレートを引っ張ってライト線へ勢い良く切れていく。ファウルでワンボールワンストライクとなった。


 三球目にバッテリーはアウトローのストライクになるカーブを選んだ。航也くんは力感のあるフォームから狙い通りのコースに投げ切った。だが、愛梨さんはポイントを前にして曲がり切る前に引っ張って、打球はライト線へ。ライトが懸命に走る。その間に一塁ランナーは二塁を回って三塁へ。バッターランナーの愛梨さんが悠々二塁へ到着した所でようやくボールが内野に戻ってくる。圧巻のスタンディングダブルだった。


 ワンアウトとはいえ、またも二、三塁のピンチを迎えた私達。仕方なく四番を敬遠して満塁策を取る。二打席連続敬遠となって四番には多少申し訳ないが、勝敗が掛かっているのだからシビアにもなる。


 ワンアウト満塁となったが、六回裏、即ち最終回の攻撃もある為、私達は四回ほど極端なシフトは敷かなかった。となると、ここで絶対にやってはいけないのは、逆転の二塁ランナーを生還させてしまうことだ。頼んだよ、航也くん!


 五番への初球、カーブでタイミングを外して空振りを奪った。熱くなってるバッターに初球ストレートで入るのはやっぱり怖いよね。出会い頭の長打は最悪だよ。


 二球目の外角へのストレートを、カーブの残像が残っていたのか振り遅れてまたも空振り。ツーストライクだ。三球目は高目の釣り球で三振を狙ったが、バッターはなんとか堪えた。ハーフスイングの確認をするもノースイング。


 四球目、サインはインローへのストレート。要求よりやや甘く入ったボールをバッターが強振すると、サードへの痛烈な打球。これをサードが捕球できずに弾いてしまった。

打球は三遊間後方へ転がっていく。ショートの私がカバーに走り、レフトも猛チャージしてくる。二人生還させるわけにはいかないよ!


 これを逆転のラストチャンスと見たのか、相手の三塁ランナーコーチがセカンドランナーに回れと指示を出しているのが耳に入る。定位置からチャージするレフトより先に、転々とする打球へ追いついた私は、ボールを拾い上げながら送球モーションに入る。右足を精一杯踏ん張って、体重移動を使ってホームへ送球。ワンバウンドのストライク送球となり、スライディングしてきたランナーにキャッチャーが素早くタッチ。


「アウト!」


 審判のそのコールにホッと安堵の息が漏れた。しかしこれで追いつかれた。


 今一度タイムを取ってマウンドへ集まる。改めて状況の確認と、集中し直す為だ。

 ツーアウト一、二塁で六番。仕切り直した航也くんは、四球かけてセカンドフライに打ち取った。

 ベンチへ帰ると向井コーチが言う。


「よく守った! 三番からだしサヨナラ狙いの気持ちでな! ツーシームを投げてきてるようだから頭に入れておいてくれ」


 そこで私は進言する。


「向井コーチ、ツーシームなんですけど、サインが決まってからモーションに入るまでが他の球種よりちょっとだけ遅いんです。気付けるかどうか微妙な差なんですけど」


「なにっ! 本当か」


 貴大くんが補足してくれる。


「本当です。現に俺の第二打席はそうでした」


「ただ、貴大くんと私がツーシームを見抜けることに愛梨さんも気付いたと思います」


「そうか。皆聞いたな? あまりそこだけ意識し過ぎるのもよくないが、もし分かったら引っ掛けないようにしてくれ!」


「はいっ!」

 リトルのマイナーで、しかも試合中にいきなりツーシームの打ち方を教えられるはずもなく、コーチの指示は「引っ掛けないように」だった。仕方ないよね。あれだけの精度で投げてくる方がおかしいんだもん。


 だがこうして六回裏の攻撃が始まった。私にも回ってくるし、サヨナラ勝ち、狙うよ!


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