第022話 大ピンチ
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本日21時頃、前話にあたる第021話のミスの修正を行いました。
展開が少々変わっておりますので、まだの方はそちらからご覧頂ければ幸いです。
航也くんへの初球はインハイの厳しいストレートだった。
動じることなく右足を踏み込んでタイミングを取っていたのが頼もしい。
これでまだワンボールとはいえ、初めてボールが先行した。カウントを取りに来たらチャンスだよ!
二球目、リリースされた瞬間には身体に当たりそうに思えたボールは、どろんと斜めに割れてストライクゾーンへ向かう。愛梨さんはカーブの種類を使い分けてるんだ!
しかし航也くんは充分にタメを作り、身体が突っ込まないよう意識したスイングでこれを捉えた。右方向へのゴロだった為、私は当たった瞬間にスタートして三塁へ走る。三塁ランナーコーチは「回れ回れ!」と続けながら腕をぶんぶん回している。一二塁間を緩く抜けたんだろうか?
とにかく私は三塁を最短で回ってホームへ。七番打者がホームの奥から指示をくれる。真っ直ぐスライディングすべきみたいだ。私は懸命に走ってから最後の一歩で伸びるようにスライディング。指示通りに真っ直ぐ、最短距離を最速で行った。
キャッチャーが送球を捕球するも、一塁側ファウルグラウンドに逸れていて、私はタッチされる前にホームインした。貴重な先制点が入る。思わず立ち上がってガッツポーズをしてしちゃったよ。まあ自然に出ちゃうのは仕方ないよね!
ベンチに戻る途中から、「ナイスラン!」と私に声が掛けられる。
由香さんにどんな打球だったのか訊くと、芯を若干外したようだが緩いゴロが一二塁間を抜けて、ライトが懸命に前進して来てバックホームしたものの、逸れてしまったようだった。
「でも送球がきっちり来てても、タイミングはギリギリセーフだったね! ナイスランだったよ」
そこに貴大くんも加わる。
「航也の打球がかなり渋かったのと紗友の走塁のおかげだな!」
私はともかく航也くんは褒められてるのかな、それって。
ともあれ、一点は一点だ。両投手の出来がいいだけにより価値がある。
ワンアウト一塁となってからは、愛梨さんが持ち直して七、八番を素早くアウトにして二回裏が終わった。
さあ、一点リードして相手は八番からの下位打線。しまっていこう!
貴大くんは下位打線にも気を抜くこと無く投球し、僅か五球で八、九番を抑えた。少ない球数で打たせて取る良いピッチングだね。
二巡目の一番打者は一二塁間へのゴロを放ったが、航也くんが判断良く飛び出してショートバウンドをキャッチ。しっかりベースカバーに走っていた貴大くんに送球してスリーアウトとなった。
三回裏の私達の攻撃は、先頭の九番がピッチャーゴロに倒れて二巡目の一番打者に回った。その間に私は貴大くんに言う。
「あのね、さっき貴大くんが打ち取られたツーシームなんだけど」
「あれってツーシームだったのか! 珍しくストレートが指に掛からなくてお辞儀したのかと思ってたぜ」
「うん。それで、私はツーシームを打ったし、他のバッターはストレートとカーブ、チェンジアップで抑えられてるから、この後投げてくるのは貴大くんにだけだと思う」
「お、おう」
「サインが決まってからモーションに入るまで、握るのにちょっとだけ他の球種より時間が掛かるから、よく見てみて。もしかしたら、もう相手のコーチが気付いて教えてるかもしれないけど」
「わかった! でも紗友、よくそんなとこまで気付くな」
「初回の先頭からずっと私なりに観察してたんだよ! 偉いでしょ!」
「おう、しかもそれをちゃんと俺に教えるんだから偉いぞ。次は絶対打ってやるからな!」
会話の間に一番も凡退してしまった。ツーアウトで由香さんに回る。
第二打席は配球にある程度ヤマを張っていたのか、初球のアウトローのストレートをレフト前へ流し打って出塁した。愛梨さんは得意とする由香さんに打たれたのが悔しかったようで「くそっ!」とマウンド上で派手に悪態をついている。ツーアウトながらランナー一塁でクリーンアップ。三番が繋いでくれれば貴大くんにチャンスで回るよ!
だが、残念ながら三番はレフト正面へのライナーでアウトになってしまった。飛んだ場所が悪かったね。やはり追加点を取るのはなかなか難しそうだ。私達はそれぞれの守備位置へ走る。
四回表は二番からと好打順だ。気を付けないとね。皆が声を張り上げる。
しかし、ワンボールワンストライクの並行カウントからチェンジアップが甘く入り、センター前に運ばれてしまった。
「ドンマイドンマイ!」
「次取ろう!」
励ましの声が掛けられて三番の愛梨さんを打席に迎える。第一打席は良い当たりのセンターフライだった。タイミングはばっちり合っているから、気を付けないとね。
バッテリーは初球にチェンジアップを選択した。アウトローに決まる。愛梨さんはストレート狙いだったようで、振りに行って引っ掛けないよう必死でバットを止めていた。
二球目、キャッチャーは同じボールを要求したが、やや低目に外れて見送られてしまう。
三球目はインローのストレート。いいコースに行ったと思うのだが、愛梨さんはまだストレートを待っていたようで、フルスイングして打球は右中間へ飛ぶ。ライトがなんとか追いついて、深めの位置ではあるが右中間を破られずに止めた。一塁ランナーが三塁へ進み、バッターランナーの愛梨さんは二塁へ。
四番を迎える前にキャッチャーがタイムを取って内野陣がマウンドに集まる。
「ドンマイ貴大、良いコースに来てたぞ」
まずキャッチャーが声を掛ける。
「私もあのコースを打たれたら仕方ないと思うよ。満塁策だろうし、切り替えて次のアウト取るのに集中しよう!」
続いて私。
「愛梨はヤマ張るタイプだからね。紗友ちゃんの言う通りこの後しっかり取ろう!」
愛梨さんをよく知る由香さんが言う。
「確かに今のはしょうがねえな! 守備がっちり頼むぜ!」
開き直った表情の貴大くんが気合いを入れた声で言って、それを合図に私達は守備位置へ戻った。
ノーアウト二、三塁で、第一打席には粘ってフォアボールを選んだ四番を迎える大ピンチ。
当然ベンチからのサインは敬遠だ。一点が重たいこの試合、わざわざ二、三塁で勝負することはない。セオリー通りと言えるだろう。
キャッチャーが立ち上がり、貴大くんが四球続けて外すと、四番は悔しそうな表情で続く五番に「打ってくれよ!」と言って一塁へ向かった。
ノーアウト満塁で五番という場面で、ベンチの指示は内野前進だった。絶対に同点にされるなということだろう。ヒットゾーンが広がるリスキーな守備だが仕方ない。その分だけ本塁フォースアウトのチャンスは増えるのだから。
もしここで五番から三振を奪えれば理想だけど、前の打席の内容も良かったのでそれは欲張り過ぎというものだね。
皆でなんとか三塁ランナーを刺そう!
お読み頂きありがとうございました。




