第021話 準決勝開始 (本文修正済)
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本日三回目の更新分になります。
※10月9日8時追記 感想でご指摘頂いたのですが、相手チームの打順に矛盾が生じております。平たく言えば三番が二人います。一回表に三番で終わって二回表も三番から始まるという……。しかも三番は主要キャラ。
完全に私のミスです。夜には対処いたしますので、お待ち下さいますようお願いします。
※10月9日21時追記 本文を差し替えました。うっかりミスでお待ち頂くことになって申し訳ありません。
私達の後攻で試合が始まると、一回表の先頭打者の打席で相手ベンチから声が飛んだ。
「おら、先頭絶対出ろよ! 先制点取るぞ!」
高い声と口調のギャップに驚いて目をやると、言ったのは愛梨さんだった。
本当に性格変わってるよ……。なんだか凄いものを見ている気がするね。
思わず由香さんの方を見ると苦笑していた。
さて、プレイに集中しないとだね。気合いを入れて声を出す。
「ばっちこーい!」
一番は貴大くんの球を捉えたものの、セカンドライナーに倒れた。
その打球の質の良さに私は驚かされた。ほぼ正面だったから由香さんが捕球出来たが、鋭い当たりだった。
由香さん曰く、愛梨さんも貴大くんと同じくらい速い球を投げるらしいし、それで練習をしているなら打撃が良いのも頷ける。
西出コーチも一、二番とクリーンアップには注意しろって言ってくれてたしね。一つ一つ、しっかり守っていきたいな。
私のそんな思いをよそに、貴大くんは絶好調なようで、二番を三振に切って取った。続く三番の愛梨さんをセンターフライに打ち取って、守備位置からベンチへ帰る。これも当たりは良かったが、辛うじてセンターの守備範囲内だった。
今日先発ということは、貴大くんは明日の決勝にはまず球数制限で出られない。それだけコーチは決勝で当たる相手より武蔵北を脅威に感じているのだろう。貴大くんもそれに発奮しているようだ。
でも、規定の球数ではフルイニングの六回は投げられないだろう。途中で控え投手に継投する必要があるが、それがどのタイミングになるか、どこまで通用するかが試合の鍵を握りそうだ。とはいえそれは相手も同じである。
一回裏の攻撃が始まり、打席には先頭の一番。私はベンチから愛梨さんの投球フォームとボールをじっくり観察している。一番はファウルで粘った末にショートゴロでアウト。
次は愛梨さんを苦手にしていると言っていた由香さんだ。初球、珍しく打ち気に逸る由香さんを弄ぶようなカーブで空振り。二球目はインローにズバッとクロスファイアのストレートが決まる。
そこから由香さんは二球続けてカットしてファウルに。明らかなボール球が一切来ないので、バッターは苦しい。やはりコーチの言った通りコントロールは抜群のようだ。
最後はストライクゾーンギリギリに落ちるチェンジアップで、タイミングを外された由香さんはなんとか当ててピッチャーゴロにするのが精一杯だった。
ピッチャーゴロを処理してアウトにした愛梨さんは「よっしゃ!」と叫ぶ。度が過ぎると審判に注意されかねないけど、それ……。
しかし性格の変化はともかく「私より一つ上なだけの四年生でこんな凄いピッチャーがいるなんて!」と感動すると同時に「私も夏季大会が終わったらエースになってやる!」と決意した。でもこの夏はまだまだ終わらせたくはないよ。今日もなんとか勝とうね。
ツーアウトで回ってきた三番は、なんと三球三振を奪われてしまった。チームに動揺が走る。
そんなタイミングですかさず向井コーチが言う。
「出られなかったけど、一、二番は良い粘りだったぞ! 球数投げさせればチャンスは来るから、また守備しっかり頑張って戻ってこい!」
「はい!」と全員で答えてから、私は再び声を上げる。
「投手戦になりそうだし、辛抱強く守っていこう!」
「おう! ピッチングは任せろ。それに俺は愛梨から結構打ってるんだぜ!」
貴大くんが頼もしい返答をしてくれる。皆もそれに続いて声を出して守備位置についた。
貴大くんが打つ可能性が高いってことは、その後を打つ五番の私が重要だね! 今日もチームに貢献する打点をあげよう。
二回表、貴大くんは四番こそ粘られてフォアボールで塁に出したものの、五番をレフトフライ、六番をファーストファウルフライに打ち取った。最後は七番がショートゴロを打って、私がきっちり打球を捌いてスリーアウトチェンジ。
五番のレフトフライもアウトになったとはいえ良い打球だったし、気を抜けない緊迫した試合だ。
そして二回裏の攻撃は愛梨さんを得意と言い切る貴大くんからだ。期待しちゃうよ!
初球の難しいインコースのストレートを、引っ張って大飛球にするも切れていってファウル。二球目のボールになるカーブはなんとか見逃した。確かに得意と言うだけあって打てそうな雰囲気がある。
しかし、そんな思いは三球目で裏切られることとなった。サイン交換の後、ちょっとだけ普段より間が空いて、真ん中低目にストレートが来たと私は思った。打席の貴大くんも甘めのボールだと思って強振しにいった。しかし結果はサードゴロ。貴大くんには何が起きたかわからなかっただろう。「よーし!」と愛梨さんはまた吠えている。
ネクストから観察していた私にははっきり見えた。バッターの手元で利き腕方向にスッと沈んでいった。ツーシームだ。まさかリトルの、それもマイナーで投げる投手がいるとは思わなかったよ。
速いストレートと、縦に割れるカーブ、タイミングを外すチェンジアップに加えてツーシームまであるとなると、流石に全てをケアすることは難しい。それにここまでベンチやネクストから見た限りでは、球種による腕の振りの変化もほとんど見られなかった。しかしツーシームだけは違う。握り変えにちょっとだけ長く時間が掛かっていた。覚えたてで慣れていないんだろうね。
でも考えるに、然程負担にならないとはいえ、ツーシームを多投はしないだろう。苦手にしていた貴大くんを打ち取る為に覚えてきた球種の可能性が高い。ストライク先行で来るし、こちらも早いカウントで狙いを絞って勝負すればいいかな。そうシンプルに決めて打席に入った。
初球、ストレートを待っていた私に投じられたのはチェンジアップ。腕の振りが全力だから、狙いを絞らずに打ち気に逸っていたら、絶対に振ってしまっていただろう。これがストライクゾーンギリギリに決まってワンストライク。
二球目、ストレートがアウトロー際どい所に来る。左足を思いっきり踏み込んで打ちにいったが、ライナーがライト線ファウルゾーンに落ちる。
おそらく見逃してもストライクなのに、ボールが遠く感じられた。プレートの一塁側から投げてくるから、より角度がついているのだ。
うーん、追い込まれちゃったね。これは不味いよ。そう思った私だが、運が味方した。三球目のサイン交換が終わってから、モーションに入るまでの間が少しだけ長かった。どうやら五番を打つ初対戦の私を、貴大くんと同程度に脅威と思ってくれているみたいだ。
ツーシームが来ると分かっている今なら、打てる。本来ツーシームは、フォーシームのストレートや他の変化球がバッターの意識にあってこそ機能する球だ。バックドアやフロントドアですらそう。プロやトップアマレベルだとやや大きな変化のツーシームやカットボールを決め球にする人もいるけれど、それは高いレベルですら通用するコントロールとキレの良さがあってこそだ。
幸い愛梨さんが投げるのは大きく曲がるツーシームではない。追い込まれている今、打席では初見になる縦のカーブで攻められた方が厄介だったよ。
真っ直ぐの軌道で真ん中低目に来るが、これがややアウトローに沈むはず。最初からその意識でスイングすると、まるで振ったバットにボールが当たりに来るような形で芯に当たった。
打球は右中間へライナーで飛び、ベンチが活気付く。私は二塁にスライディングで到達した。
愛梨さんは私のスイングを見たからか、不思議そうにしているが、理由にまでは思い至らないようだ。
ワンアウト二塁で打席には六番の航也くん。シングルヒットでも当たり次第では一気にホームを狙う覚悟を済ませてある。
さあ、期待してるよ!
お読み頂きありがとうございました。
三連休を無事に一日三話のペースで投稿できて良かったです。
※10月9日21時追記 無事じゃなかったですね。申し訳ありませんでした。




