第020話 ライバル左腕登場
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本日二回目の更新分となります。
西出コーチの車に乗って再びグラウンドへ戻り、少し練習してから昼食。
それが終わると、マイナーの監督役である向井コーチからスタメンが発表された。
私は今回打順が五番に上がり、喜びを感じていた。
「紗友があれだけ打つんだから、入れ替えられる覚悟はしてたよ」
とは前の試合まで五番を務めていた渡辺航也くんに掛けられた言葉だ。
お互い打順が入れ替わっても頑張ろう! と誓い合ってバスに乗り込んだのだった。
バスに乗り込むと恒例となった座席の並びで、後ろの貴大くんに言われた。
「紗友と航也は今日も絶対打てよ! そうやってチーム内で競争してれば相手に負けるはずねーんだ!」
「言われてみれば確かにそうかも」
納得した様子の航也くん。実は貴大くんの隣に座っているのだった。
「打順に関係なく私は絶対に打つよ!」
「流石紗友ちゃん、自信満々だね」
「由香さんは上手いのにそういうのあまり表に出さないよね。控え目な女子はモテるらしいよ!」
「実際由香はモテてるぞ、紗友。お前はどうなの?」
「私はまだ三年生だからね。そういう面倒なことはないよ!」
「面倒って、紗友ちゃん……」
由香さんに可哀想な人を見る目を向けられた。貴大くんは何がおかしいのか、爆笑していた。航也くんは笑いを堪えている。不思議だなあ。
そんなリラックスムードはバスを降りる際にしっかり切り替えて、私達は試合に臨んだ。
打線が機能し、貴大くんが相手打線をシャットアウトすると、五回終了時に八点差がついてコールドゲームが成立した。
私は三打席二打数二安打三打点の成績を残した。守備機会は三度あり、どれもエラーすること無くアウトを取った。
試合後のミーティングで、向井コーチが今日の勝利を褒めてくれた後に「次の準決勝で当たる武蔵北は今までとは段違いに強いぞ」と警告するように言った。
続けて西出コーチが詳しく言う。
「何度も対戦したことがあるので知っている子も多いけど、エースの女の子のピッチングが良い。スピードも速いがコントロールが抜群に良くて、変化球の精度も高い。今まではコールドで勝ち抜いてきたけど、次はフルイニング戦うことになると思ってくれ。打線も一、二番コンビとクリーンアップは要注意だ」
相手のエースは女の子なんだ! 対戦が楽しみだなあ。何年生だろう。私よりは上だろうな。
ミーティングが終わった後、由香さんに訊いてみた。
「由香さんは相手チームのエースの女の子、知ってる?」
「うん、知ってるよ。私より一つ下の杉崎愛梨ちゃんっていう子だよ。もうこれで何度目の対戦かなぁ。あんまり打ててないんだよね、私。別に左ピッチャーが苦手って訳じゃないのに」
へえ、左ピッチャーなんだね。
「えっ、由香さんでも打てないの? 西出コーチはとにかく絶賛してたけど、変化球は何を投げてくるの?」
「カーブとチェンジアップだね。ストレートとほとんど同じ腕の振りで投げてくるんだよ。でも紗友ちゃんなら見分けられるかもね?」
「うん、見切っちゃうよ! ストレートはどれくらい速いの?」
「うーん、うちのチームで言えば貴大くらいかな? かなり速いよ」
「やっぱりコーチの言った通り苦戦しそうだね。でも勝とうね!」
「うん、私も打って守って、貢献して勝ちたいな。紗友ちゃんっていうスーパールーキーもいることだしね」
「いや、私はそんなんじゃないよ」
由香さんは私のことを素直に心から褒めてくれるから、なんとなく後ろめたくなる部分がある。永嶺紗友、小学三年生。前世を足したら四十手前、なんだか複雑な気持ちです。
不思議そうに首を傾げる由香さんに「やっぱ今の無し! 気にしないで!」と言って、私達はそれぞれ迎えの車に乗って返った。
そして迎えた次の週末。親同士が相談し合った結果、祐一のお父さんの車がうちの車の後についてきて、私と祐一は朝のグラウンドに現れた。
「朝イチで集合した時に時間くれるから、挨拶きっちりね! それとは別に、特にコーチ達には出会ったら即挨拶だよ!」
「う、うん。わかった」
もしかすると落ち着いて大人しくなった祐一の性格がマイナスに働くかもしれない、と思った私はきっちり先達として教えていく。
他にも口頭で、グラウンドの整備方法や用具の取り扱い方などを説明しているうちに、選手が続々集まってコーチもやってきて、祐一が走ってコーチに挨拶をしに行くと、それが済んでから集合が掛けられた。
「今日は午前の試合だけど、その前に新しい仲間を紹介するからね」
西出コーチがそう言って祐一を呼ぶ。
皆の前に祐一が立ち、自己紹介する。
「相原祐一、三年生です。先週まで春日野第二小でキャッチャーをやっていました。よろしくお願いします!」
私は率先して「よろしくお願いします!」と言って拍手。皆もそれに続いてくれる。やっぱり良いチームだな。
その後は、朝の軽いアップとランニングを済ませて、チームバスで球場へ向かう。
球場脇の広場のような場所で再びアップをする。今度は本格的なアップだ。祐一がおろおろしていたので、由香さんにごめん、と言って祐一と組む。二人一組のアップを私が由香さんに教わったように、祐一に教えながら行った。
祐一はまだ選手登録が済んでいないので、今日は絶対に出番が無いが、明日以降もアップでおろおろしていたら可哀想だ。一度で覚えてくれるといいな。
準備が整ったが、前の試合が長引いていて私達の第二試合まで時間が少しある、と聞かされた。するとその時、ユニフォーム姿で長いポニーテールをキャップの隙間から出した女の子がやってきた。
もしや、と思ったら案の定由香さんが声を上げた。
「愛梨、また来ちゃったの?」
「あ、由香さんだぁ~。おはよう~」
「おはよう。今日も宣戦布告?」
「うん~。悪いけど由香さんには打たせないよぅ~。ごめんね?」
そう言って可愛らしく笑う愛梨さん。
「あの、はじめまして。杉崎愛梨さんですよね? 私、由香さんの後輩の永嶺紗友です!」
「女の子入ったって本当だったんだねぇ~。紗友ちゃんって呼んでいい~? よろしくねぇ~」
外見はキリッとした美人なのに、性格、というか口調はぽやぁっとした人だなと思った。
すると由香さんが私に忠告する。
「紗友ちゃん、愛梨は試合中だけ別人みたいになるから、今の状態に騙されちゃダメだよ!」
「えっ、そうなの? って言われても、いつも通り野球するだけだよね! 今日はいい試合にしましょう!」
「うん~。頑張ろうねぇ~」
「紗友ちゃんが野球バカで良かった……」
由香さん、小さく呟いてるけど聞こえてるからねっ。
そこに貴大くんが来て声を掛けた。
「おう、愛梨じゃん! 今日も打ってやるからな!」
するとその声に驚いたかのように、愛梨さんが由香さんの後ろに隠れる。
私が頭上にはてなマークを浮かべていると、由香さんが説明してくれた。
「愛梨は貴大と相性が悪いんだよ。野球でもそれ以外でもね」
「うぅ~、山西怖い。悔しいよぅ~」
愛梨さんは由香さんに隠れたまま低く唸っていた。
そこでコーチから集合の声が掛けられた。
「愛梨も自分のチームの所に戻った方がいいよ」
由香さんに言われ引き返していく愛梨さん。
うーん、あの人が凄いピッチャーか。なんだか違和感があるけど打って勝たなきゃね!
お読み頂きありがとうございました。




