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第015話 相談、そして二回戦開始

アクセス、ブクマ、評価、感想などありがとうございます。励みになっております。

本日三回目の更新分になります。

 学校で勉強に励み、体育の時間のドッジボールでは、ほぼ一人で敵全員を倒して女王になったりしていると、あっという間に土曜日になった。


 今日の試合は午後なので、午前中は軽めの練習だ。お母さんにお願いして、早めにグラウンドに到着した私は、早速コーチに話をする。


「おはようございます! ちょっとコーチに相談があるんですけど」


「おはよう。なにかな?」


 そこで私は祐一の意思と、お兄さんが怪我をした為にお父さんから止められているという話を伝えた。若いコーチはうーんと唸ってから答えてくれた。


「コーチミーティングでも宏太(こうた)のことは共有していてね。どうやらスライダーの投げ過ぎで肘を痛めたみたいなんだ」


 スライダーは便利な球種で、投げる投手も多い。指の力で変化をかけるので、ストレートと同じ腕の振りで投げやすく、比較的バッターの手元で変化する為、三振も取りやすい。


 だが、同時に危険な球種でもある。変化を大きくして空振りを狙おうとすると、腕が横振りになってしまいがちなのだ。横降りになれば肘が下がる。それでも結果は出るから使いたくなる。頼りがちになる。


 それにより崩れたフォームで投球を続けると、成長途中の身体は悲鳴を上げることになる可能性が高い。祐一のお兄さん、宏太くんも間違いなくこのパターンだろう。


 前世の私の先輩にあたる、日本人メジャーリーガーのマエカンさんや中谷(なかたに)さんも、プロ入りするまで、プロ時代ではウィニングショットとなっていたスライダーは投げていなかった。高校時代、中谷さんはスプリット、マエカンさんはカーブを主に投げていた。ストレートと同じ腕の振りから投げるスプリットやカーブは充分に脅威なのだ。


 私達はスプリットも肘に大きな負担をかけることになるから、投げないほうがいいと思うけどね。


 とにかく、スライダーは割合簡単に投げられてリターンも大きい一方で、それだけの危険性があるんだよ。それを多投するとは、コーチの教えを無視したのかな?


「シニアのコーチは止めなかったんですか?」


「紗友は手厳しいな。勿論止めたよ。でも試合になると、本人がどうしても投げてしまうんだ。そこで登板機会を減らして休養を取らせてから、フォームの修正と注意をしようとしたんだが、その前に怪我に繋がってしまってね……。我々の監督不行き届きだよ。宏太にも親御さんにも申し訳ないことをした」


「祐一のことはなんとかなりませんか?」


 コーチは暫し考えてから言った。


「そうだね。祐一くんが本気でうちに入りたいなら、こちらとしては勿論歓迎したい。明日も試合は午後だったな。明日の午前中に私とシニアのコーチで御両親にもう一度謝罪と、祐一くんの入団についての話をしに伺ってみるよ」


「ありがとうございます! あの、祐一とは家が隣同士なので、その時に私も行っていいですか? 同じ学年の女子でも怪我せずにやれてるって知ったら、祐一の両親も安心すると思うんです!」


「そうだったのか。なら紗友も祐一くんの為に是非来てくれ。宏太の家に向かう前に、紗友も呼ぶから一緒に行こうか」


「わかりました! 本当にありがとうございます!」


 コーチに帽子を脱いできっちりと一礼して、私は練習の準備に戻った。


 そして試合に向けた練習が終わり、お昼になってお母さんが作ってくれたお弁当を食べると、コーチから今日のスタメンが発表された。私は今日も六番ショートだ。


「紗友、ちょっといいか」


 朝相談したコーチよりは年上の、マイナー部門で監督役をしているコーチに呼び止められて、返事をして駆け寄る。


「六番のままだけど、クリーンアップの後の大切な打順だ。紗友も分かってるよな! 今日もしっかり得点源になってくれ」


 そう発破を掛けられた。


「はい! 頑張って打ちます!」


 元気よく答えて、私はバスに乗り込んだ。

 バスでは相変わらず由香さんと隣同士。早くも定位置と化している感がある。後ろの席には、明日の三回戦に備えて今日は四番ライトの貴大くん。


 二番手投手が先発とはいえ、貴大くんと比べたら少しコントロールに難がある程度で、結構なスピードボールを投げるピッチャーだ。今日も勝とうね!

 車中で由香さんと貴大くんと三人で話していると、すぐに球場に着いた。


 さあ、試合だ!

 今日は私達が先攻。初回に相手の立ち上がりを捉えたいね。


 早速先頭の一番が役割を果たして出塁し、打席には由香さん。一球ストライクを見逃して球筋を見た直後、二球目を叩いて打球は一塁線を破りライトの右へ。ツーベースで二、三塁の大チャンスを迎えた。


 三番打者の深いライトフライで両ランナーがタッチアップし、先制点を取ってなおもワンアウト三塁のチャンス。貴大くんは初球をフルスイングして左中間フェンス直撃のタイムリースリーベースを打った。二点目に皆が沸く。


 しかし五番は運悪くピッチャーライナーに倒れ、ツーアウト三塁で私の打順となった。


 相手のピッチャーをここまで観察した限り、コントロールが良くストライク先攻で来るものの、スピードはそこまで速くない。というより、貴大くんと比べたら遅いのだ。


 立ち上がりに二失点、それもフェンス直撃の大きな当たりを打たれてリズムが乱れたのか、私の打席で初めてボールが先攻した。


 初球はストレートが高めに外れてワンボール。二球目はほんの僅かに腕の振りが緩み、投じられたのはチェンジアップ。しかしこれは低目にショートバウンドしてボール。キャッチャーはしっかり捕っている。


 このピッチャー、チェンジアップの投げ方は貴大くんより上手いな。初見とはいえ、僅かな違いしか感じられなかった。小学生でこの技術は凄いよ。私は考えを改めて、ストレートはセンターからライト方向へ弾き返し、チェンジアップが来たらレフト方向へ拾おうと決めた。


 ツーボールとなって三球目は、高さはやや低目でコースは外のストレート。私はこれを逆らわずに打つ。真芯で捉えた打球はライナーでセカンドの頭上を超えていって、右中間へ。


 一塁ランナーコーチはゴーの合図。全力疾走で一塁を回りながら外野を見ると、ようやく打球に追いつきそうなところだった。三塁ランナーコーチからストップの声が掛かり、二塁は余裕のセーフで、スタンディングダブル。三塁ランナーの貴大くんはホームインしている。


 コーチに言われた通り、しっかり打点を挙げたよ!


お読み頂きありがとうございました。

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