第014話 学校生活と祐一の悩み
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本日二度目の更新分です。
ちなみにリトルリーグにはベンチ入りメンバー全員出場義務などがありますが、そのあたりは物語の進行上採用していません。
土日がいつも野球漬けで充実している為、月曜日に登校すると中二日しか空いていないのに、学校が結構久し振りな気分になる。
前世で長く在籍した日本のプロ野球は、基本的に月曜日は試合のない日だったので、こうして月曜日にやるべきこと、行くべき所があるのは三年生になっても未だに少し新鮮だ。別に月曜日が完全に休日だった訳じゃないけど、野球選手にとっての試合と小学生にとっての学校は同じ感じがするんだよ。
勉強も運動も出来る私はクラスのちょっとした人気者だしね。
主観で最後の学生生活といえば、前世の特待生で入った高校生活を思い出す。高校自体は共学だったが野球部員は寮生活で実質隔離された上に、校内でも女子との会話が禁じられていた。よく思い返せば男子との会話も、相手はほぼ同じ野球部員だった気がする。
そんな純朴野球部員が甲子園近くの宿舎では、同世代から年上の綺麗な女性達に囲まれて、隙あらば一方的に連絡先を渡されたりするんだから、危険極まりない。校内で女性に対する免疫を付けさせて欲しいと思ったものだ。
おっと、話が逸れちゃったね。要するに私は小学校生活を十二分に楽しんでいるってことだよ!
今日も家を出るとすぐに、ほぼ同じタイミングで祐一が玄関から出てくる。当然一緒に登校するのだけれど、男女とは言えまだ小学校三年生だし、幼いながらも野球バカ二人が同じ場所にいるのだから、いつも土日の練習や試合の話をすることになる。
祐一は学年が上がったタイミングで三、四年生チームのキャプテンに任命された。一つ年上のキャッチャーを追い抜いて上達し、レギュラーの座と共に勝ち取ったみたいだ。
うちと違ってお父さんが元より大の野球好きで、年の離れたお兄さんも本格的に野球をやっているから、野球への理解度も深くて、正直ただの小三とは思えないレベルだ。でも次男で祐一の一の字が付くって珍しいよね。
「紗友、おはよう」
「おはよう祐一」
「昨日、試合だったんでしょ。どうだった?」
「大活躍して褒められたよ! ランニングホームラン打ったし、守備で由香さんとゲッツー取ったんだから!」
「やっぱり紗友は凄いね! 由香さんって五年生の佐村さんだよね。ゲッツーも凄いなあ! こっちじゃ練習でもそんなことしてないよ」
「でも出塁した時に、盗塁したいなぁって場面があってね。やっぱりリード取れないと、いくら塁間が短くてもほぼアウトになっちゃうからさ」
「そうだね。でも俺はキャッチャーだからさ、盗塁刺せなくて怒られることも多いからちょっと羨ましい」
「盗塁刺せないなんて私達くらいの年齢で、学童野球のルールなら当たり前なのにね。でもその変わりにリトルはマウンドからホームまでの距離も短くて、バッターとキャッチャーの体感スピードかなり違うと思うよ?」
「それは苦労しそう。あと俺、変化球ってバッティングセンターのカーブマシンくらいしか打ったこと無いや」
「祐一もどうせこの先ずっと野球続けるんでしょ? それなら早くうちのチーム入ればいいんだよ!」
「うん、せめて体験入団行きたいなって思ってるんだけど……。兄ちゃんがシニアで肘怪我してから、父さんが硬式は高校生になってからにしろってうるさくて」
「えーっ! 怪我なんて軟式でも硬式でもする時はするし、アメリカじゃ軟式野球はほぼないから、皆子供の頃から硬球使ってるのに」
「え、そうなの? 俺そういうの全然知らなかった」
「そうなんだよ。それに私でも怪我しないで楽しんでるんだよ。祐一も出来るって!」
「父さんさえ説得出来ればなあ」
「祐一さえ良ければ今度コーチに、体験入団したいけど止められてるっていう話をして、お兄さんの怪我の詳しいこと訊いてみるよ?」
「え、いいの? じゃあお願いするよ」
そこまで話したところで学校に到着した。
会話の通り、祐一は小学校に入って野球をやるにつれて、すっかり落ち着いた子になっていた。このまま高学年くらいになったら女子にモテそうだね。
昇降口で会った子達とも挨拶を交わして、教室に入る。
「みんなおはよう!」
「おはよう。紗友ちゃんっていつも元気だよね。やっぱり野球やってるから?」
「それもあるし、挨拶って大事だからね!」
「そっかあ。私、先週も二日休んじゃったし、元気を分けて欲しいよぅ」
そう言って私に抱きついてくるのは、クラスメイトの真美ちゃんだ。軽い喘息持ちで、しばしば学校を休まざるを得ない日がある。名前の通り綺麗な子で、同じ公立の小学校に通う身なのに、彼女からは病弱な深窓の令嬢オーラが出ている。
一方の私はと言えば、クラスの女子で三番目に高い身長に、日焼けした肌、勝ち気な大きい瞳と、元気っ子の印象を拭い去る方が無理な感じだ。ちなみにクラスの女子で私より背が高い二人はバレーボールをやっている。やっぱり膝への適度な刺激が身長の伸びに影響するのかな。
「じゃあ昨日私が大活躍した話、聞いてくれる?」
「紗友ちゃん、試合出たんだ! しかも大活躍? 凄いよぉ、流石私のヒーロー!」
ヒーローって、あはは。私も女子なんだから、せめてヒロインにしてくれないかな?
一時間目が始まるまでの間、私は昨日の試合を私目線で整理して、真美ちゃんに語った。
「上級生に混じって活躍するなんて、流石紗友ちゃんだね!」
そう言った彼女の頬は、スポーツの話を聞いた興奮からか紅潮していた。
あんまり興奮して発作がでないといいんだけどな。
その後はお昼まで真面目に授業を受けて、給食の時間になった。机を移動させて六人一班になってランチタイムだ。しっかり栄養を取るべく、私は栄養士さんと調理員さん達に感謝の「いただきます」を、しっかりと心を込めて言ってから食べ始め、たくさん咀嚼する。よく噛まないと身体に悪いからね!
完食した後はおかわり争奪戦だ。幸い、と言っていいのかわからないが、今日の献立は栄養価が高いものの子供には不人気な材料が多い。おかわりの名乗りを上げたのは私と祐一、それにバレーボール女子二人組の四人だけで、全員に行き渡った。
多分私以外の三人は指導者や保護者に栄養をしっかり取る必要性を教わっているのだろう。私は前世の高校とプロでの寮生活と、球団が開いてくれた、スポーツ栄養士さんによる講習で詳細に教わった。
「ごちそうさまでした」とこれまた心を込めて感謝して、昼休みがやってくる。教室で待っていると、いつも通り由香さんがやって来た。
「紗友ちゃん、行こう」
片手にはチューブが握られている。
「うん!」
私も机からチューブを出して、一緒に校庭へ行く。
昼休み、私と由香さんは少し食後の休憩をした後に、アイソメトリックトレーニングとチューブトレーニングをしているのだ。
子供でも無理なく出来て、必要な筋肉は身に付く。両方共、リトルのコーチに正しいやり方をしっかりと教わっているので、怪我の心配もかなり低いだろう。
今日もいつも通りにじっくりこなして、ちょっとお喋りするとすぐに昼休みも終わりに近付いた。片付けをして、校舎に戻る。階段でまたね、と言い合って別れた。
五時間目は図工で絵を描く授業だった。私ははっきり言って画伯系の絵しか描けない。勿論悪い意味の画伯だ。
一方、真美ちゃんは芸術分野に秀でており、今日もコンクールにでも出すのかと思うほど上手な絵を描いていた。更にはピアノとヴァイオリンまで習っているのだから、本当にお嬢様みたいだ。
六時間目は国語。前世でプロ入りした後、高卒ルーキーの寮生活などを支えてくれるスタッフさんに勧められて、読書を趣味にしておいてよかったと思う。おかげで今日の小テストも満点だった。
「紗友ちゃん相変わらず頭良いね~」
真美ちゃんが尊敬の眼差しで私を見てくる。ごめんね、前世の知識のおかげなんだよ。でも授業も真面目に受けているけどね!
今日の午前中にあった、社会とか理科になると、私は本当に真面目に勉強している。だって前世の知識でカバー出来ないんだよ。社会では全都道府県の県庁所在地を覚えている最中で、先生に「永嶺さん、島根県の県庁所在地は?」と名指しされ、私は「松江市です」と覚えたての知識で即答した。
前世の私はそんなことすら全く覚えずに中学生になって、U―15日本代表としてアメリカをはじめとした海外に行ったりしていたのだが、よくよく考えてみると空恐ろしい話だ。
そして学校が終わり、真美ちゃんと別れの挨拶をして、祐一と一緒にまた野球の話をしながら帰る。
土曜日になったらちゃんとコーチに祐一の意思を伝えて、お兄さんの怪我のことを尋ねてみよう。
お読み頂きありがとうございました。




