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第013話 ゲームセット

アクセス、ブクマ、評価などありがとうございます。励みになっております。

三連休中の更新第一弾となります。

初出の名前にルビを振って欲しい、との御意見を頂いたので付けさせて頂きました。

最新話まで読んで下さっている方々の為にここにも記しておきます。

現時点ですと、鳴沢恵吾→なるさわけいご、紗友→さゆ、祐一→ゆういち、由香→ゆか、貴大→たかひろ、となっております。

 二回には一時沈黙した打線が大爆発し、またもチャンスで迎えた第三打席。毎度お膳立てしてくれるチームメイトに感謝だね!


 今の私は、チャンスをとてもポジティブな気持ちで迎えられるし、ピンチは絶対に抑えてやるという前向きな精神が強い。前世を体験したあの日以来ずっとそうだ。

 というわけで、今回もランナーを返しちゃうよ!


 出来ればこのままこのイニングでコールドを決めたいので、私も得点圏へ進むバッティングをしたい。投手交代は無いようだし、長打狙いでいっちゃうよ。


 とはいえ私がこのピッチャーから長打を打つには、カーブを狙ってはいけないことは前の打席でわかった。前の打席とは逆に、あえてカーブに手を出してファウルにして、ストレートを誘おう。

 そう思考をまとめて打席に入った。


「さぁこーい!」


 気合を乗せた一声を発し、いつも通りリラックスしたフォームをとる。バッティングにはそんなに細かいルーティンを必要としないんだよね、私って。それは感覚で打つ雑なタイプだからなんだけど。


 その反面、ピッチングにはとても細かいルーティンがある。あれは学生のうちはスピードアップを審判に指摘されかねないから、今のうちに意識して直していこうっと。


 バッテリー間でサインが決まり、初球が投じられる。やっぱりカーブ。徹底してるなあ。

 第二打席の初球ほど絶妙ではないものの、アウトローに決まるカーブを私は右方向へファウルにする。


 二球目もカーブ。身体に当たりそうな軌道からインコースに落ちるカーブを、私は今度は引っ張ってファウルにする。


 このファウル二つは、カーブ一本に絞ってるよ、というバッテリーへのメッセージだ。それに気付いてくれるかどうか。


 初めてノーボールツーストライクと追い込まれた私に、ベンチから必死の声援が届く。


「際どいとこ手出してけ!」


「リラックスリラックス!」


 三球目、ピッチャーの腕が振れてる。ストレートがインハイに来る。高めのボールの下側を打ってしまわないように、最短距離で上からバットを走らせ、インパクトの瞬間にはレベルスイングで弾き返した。


 打球は痛烈なライナーでレフト線へ。レフトは前を向いて打球を止めることを既に諦め、斜め後ろに走っている。ツーベースは確実だね!


 二塁まで走る途中、十四点目のランナーがホームインしたことへの歓声が聞こえた。そんな中でも私は隙あらば三塁を狙う為に、スピードはそのままで二塁を少し回る。勿論、レフトがしっかりと処理した際には、即座に二塁へ戻れるタイミングと位置。


 しかしワンサイドゲームで集中が切れていたのだろう。レフトはクッションボールの処理を誤った。


「ゴー!ゴー!」


 三塁ランナーコーチも行けると判断したよう。私も同意見だ。ギリギリまで観察していて落としかけたスピードを、即座に再加速して三塁を狙う。私の出せる最高速からその勢いを殺さず、むしろスピードを利用して一瞬更に速度が伸びるかのような素早いスライディング。


 これは前世で同じチームにいた代走のスペシャリストから半分遊びで教わったものだが、ここで活きた。


 送球が返ってきてタッチプレイになるが、私の足が先にベースへタッチ。そのままスライディングの勢いを利用してスッと三塁ベース上で立ち上がる。


「セーフ!」


 審判のコールに、ちょっと誇らしげな表情でベンチを見て小さく拳を上げる私。


「ナイスバッティング!」


「紗友ちゃん、ナイスラン!」


 ベンチからも大いに褒められる。

 特に由香さんに走塁を褒めてもらったのは嬉しいな!


 ランナー二塁とランナー三塁では得点パターンの多さが段違いだ。特にノーアウトだしね。この後私がホームインしての三回コールドの可能性が随分と高まったことになる。


「次で決めちゃおう!」


 私は打席に向かう七番打者に言う。彼はこちらに目をやり、空いている右手で軽くサムズアップしてくれた。


 前の打席でもストレートとカーブのコンビネーションをあっさり打ち返していたし、自信がついたのだろう。頼もしいね!


 そんな七番は、初球のストレートをあっさりと叩いて一二塁間を鋭く破っていった。私が悠々ホームインしたところで、審判がコールドゲームを告げる。


 全員が整列して、試合終了の挨拶。


「ありがとうございましたっ!」


 その後は各自が道具類をまとめ、ベンチを片付けて綺麗にしてから撤収。次の試合の為に素早くベンチを空ける。


 祝勝ムードながらもキビキビと引き上げると、チームバスに乗り込みいつもの専用グラウンドへと帰る。バスではまた由香さんと隣同士の席だ。


「紗友ちゃん大活躍だったね! しかもデビュー戦なのに!」


「たくさん打てて楽しかった! 由香さんのカーブ打ちも凄かったよ! あんなに綺麗に引っ張るなんて!」


 そこに後ろの席から貴大くんが会話に参加してきた。


「紗友は打撃も走塁も守備も良かったな! ゲッツー、サンキュな。助かった」


 貴大くん自身、あそこでリズムを崩しかけていたのを自覚しているのだろう。お礼を言われた。


「チームメイトなんだから当然だよ! 貴大くんこそナイスピッチング! 完封だね」


「三回コールドならそりゃ完封するだろ。紗友こそ自分の打撃成績わかってんのか?」


「えっと、三打数三安打で、一本塁打五打点だよ!」


 満面の笑みで言う私に、半ば呆れたような表情で貴大くんが言う。


「なあ由香、紗友って天然なのか?」


「うん、私も今ちょっと思った」


 ええっ、それは酷くない、二人共?


「紗友一人で五打点だぞ? チーム得点の三分の一じゃねーか。三回コールドは紗友のおかげだよ」


「本当に凄いことなんだけどね。まあまだわからなくても仕方ないかも」


 わかってるよぅ。わかってるけど、私の無邪気な部分がついつい出ちゃうんだもん。

 そう思って俯いていると、フォローされた。


「まあ、活躍したことには変わりねーしな!」


「うん、この後のミーティングでも褒められると思うよ」


 実際に由香さんの言った通り、ミーティングではコーチに真っ先に名指しで、走攻守全てを褒められた。

 反省点は二回の攻撃くらいで、コーチはチーム全員が打撃好調なことにも上機嫌だった。


 この調子で来週の試合も勝とうね! あ、その前に学校だよ。


お読み頂きありがとうございました。

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