50話「生徒会長2」
「ねぇ、恵美。ここ、わからないところあるんだけど教えてくれない?」
「うん! いいよー! 流石に柚葉でもあれだけ休んでればついていけないよね〜」
「一応家では予習していたつもりだったけどやっぱり1人だと分からないことあって。助かるよ」
全然大丈夫っ!気にしないでー。明るく振舞ってくれる恵美を見るとたまに落ち着く。なんだかんだ彼女に頼ってしまう。
「あら、お久しいお顔がありますこと」
うわぁ、めんどくさーい。恵美の心の声が聞こえてくる。
僕らに話しかけてきた子は同じクラスの女子で恵美曰く関わりたくないランキング上位らしい。だが、僕は彼女の名前を知らない。
……なんて言う名前だっけ?
「えっと、久しぶり……?」
「一ノ瀬さんという方がズル休みですか? らしくないですわ」
「ズル休みというか、薮用?」
「そんなことをするからこんな子から教えてお貰う羽目になるのですわ」
こんな子、恵美のことらしい。だが、恵美は学年上位の優等生だ。彼女は何かを勘違いしている。
それに噂で聞いたのだが、彼女はどうやら僕を好いているらしいが、実際は反対だ。毎回鋭い目付きでこちらを振り返って貰う身にもなって欲しい。だが、肝心な名前が思い出せない。名前、なんだっけ。
もう、聞いた方が速いか。
「あの……名前、なんだっけ?」
「早乙女ですわ! 話しかける度忘れるのやめて貰えません?!」
「あー! 顔と性格は合うのに名前は合わないんだなーって思った子だ」
「貴方、かなり酷いことを言っているのは自覚してます?」
隣で恵美がくすくす笑っている。
そう言えば、早乙女とは何度か話したことがある気がする。そして毎度僕が彼女の名前を忘れている気がするがまぁ、そんな細かいことはいいだろう。
「それで僕になんの用?」
「……相変わらずですわね。 立花会長があなたをお呼びでしたわ」
「立花会長が? はぁ、僕生徒会じゃないんだけど、他の生徒会員仕事してないんじゃないの?」
「失礼ですわね! 貴方に言われなくともこちらはしっかりと仕事をこなしておりますわ!」
「じゃあなんで毎度毎度会会長は僕を呼ぶんのさ」
「それは……とりあえず昼休みには会長の所に行ってくださいね! 失礼します」
早乙女が自分の席へと戻っていく。
しょうがない、お昼休み会員のところへ行くか。
「恵美、悪いけど昼別で」
「了解! 柚葉帰ってからそうそう大変だね」
「僕、生徒会長に好かれるようなことしてないんだけどなぁ」
「確かに柚葉って毎日のように会長に呼ばれるよね。叱られてるの?」
「……僕がというより、逆?」
「失礼します」
どよーんとした室内はカーテンが閉まっているからかこの部屋の主がぐったりと倒れ部屋が汚いからか、原因は探るまでもないが僕は返事を待たず生徒会室にズカズカとはいる。
もう何十回と来ているこの部屋に遠慮というものは無い。それに付け加え僕は好きで来たのではない。呼び出されてきたのだから。
「立花会長、なんですか?」
用なんて聞かずともわかっているが毎度毎度聞かなければ話しが進まないような気がするのでやらずにはいられない。
「___この声は、一ノ瀬?」
「そうですよ。早乙女に言われた通り来たんですから起きてください」
のっそりと会長が起き上がる。
あぁ、どんだけ不生活な生活してたんですか。てか、やつれ過ぎではありません?
「本物だぁ」
「あんた、どんだけ食べてないんですか?」
「え? あー、どんぐらいだろう……。一ノ瀬に会えない日が続いてだんだん食用がなくなって、固形物なんてもってのほか液状しか口に入れなかったからなぁ」
「あのですね、会長は入園をただこねる園児ですか。僕がいなくとも私生活ぐらいちゃんとしてくださいよ。そんな様子だと皆さんにも迷惑かけたんじゃないですか?」
「迷惑……? 家の者からは食べてくださいと聞き飽きるぐらい言われたけど迷惑なんてかけてないよ」
あぁ、執事さんとメイドさんが可哀想だ。
彼、立花生徒会長はこの学校を建てた理事長の孫息子で立派な家系に育てられたお坊ちゃまだ。その彼についている執事さん達はさぞかし大変だろう。オマケに彼は眉目秀麗・文武両道と学校で評されているが実際はこの有様だ。これは僕の自意識過剰や慢心だけではないと思うが確信に近くこの男は僕がいないとどうしようもないダメ男になる。
いない、という表現を可笑しいか。僕の存在を確認し、会えないと。と言った方が正しいのかもしれない。
何故なら僕が学校に普通に登校していれば彼は立派な眉目秀麗のいう名の着いた生徒会長で学校を上手く回しているのだから。
「なんで僕、会長に好かれてるんだろう」
「知りたい?」
「こんな時ばかり元気にならないでくださいよ。そう言えばお昼はあるんですか?」
「あーないよ。君が今日来るとは思わなかったしね」
思った通りだ。きっと早乙女には僕が学校に来たら生徒会室に来るようにと言うようにでも言っておいたのだろう。彼女の立場を考えたらなんか悲惨だ。
「だと思いました。はい、これ会長にあげます」
「いいのかい?! あ、でもそれでは一ノ瀬の昼食が」
「僕は購買でパン買ったので大丈夫です。そんな何日間もろくに食べていなかった人に菓子パンは毒ですから」
「そうなのか? でもこれは有難くいただくよ。ありがとう」
「……どういたしまして。味の補償はしませんが」
「もしかして君が手作りか?!」
「いえ、母のです。会長のことだから舌超えてるんだろうなーと思って」
「超えてたとしても美味しいものは美味しいさ。じゃあ早速、いただきます」
会長が箸をもっておかずを口へ運ぶ。いつ見てもこの人の動作は美しい。流石お坊ちゃまだけはある。
「美味い!」
「それは良かったです。けど、無理はしないでくださいね。かっこみすぎて胃がおかしくなると聞きますから」
「あぁ、気をつけるよ」
と言いながら会長はスピードを上げ掻っ込むように食べていた。久しぶりのご飯だと聞くし相当お腹が減っていたのだろう。それに例え栄養を考えられた液状物でも限度と言うものがあるし、それに比べればこの弁当の方が身体にはいいだろううからまぁいいか。




