49話「久々の我が校」
あれから撮影を繰り返し月日は流れ、何話分か取り溜めることに成功した。
撮影が遅れたなどの理由で放送できないなんてことは言語道断らしく取り貯められる分は取り溜めるのが田村監督の方針らしい。
まぁ、僕は田村監督以外の監督にはお世話になっていないのでほかのことはよく分からないが、取り溜めることについて僕は反論はない。
「柚葉ー! おはようっ!」
「うわっ?! 愛美じゃん。おはよー」
「相変わらずつれないなぁー。まぁ、私はそんな所も好きだけどね!」
相変わらずベタベタとくっついてくる梶野愛美は中学からの友達である。それも凄いことに5年連続同じクラスで出席番号も近いことから話す回数が段々と多くなりこんな状況となった。
「愛美あのさ、申し訳ないけど私が休んでた分のノート見せてくれない?」
「うん! 全然大丈夫だよ! てか、柚葉なんで休んでたの?」
最後はぷくと頬を膨らませられた。ふわふわ雰囲気の可愛らしい容姿からこんな態度を取られることも何となく慣れてきた。彼女のことをぶりっ子だとかいう奴らは結構いるけれど本人はそんなこと気にしていない様子だ。無自覚だし、そこら辺は肝が怖いほど座っている。
「理由はまぁ……言わないでおく」
「むぅ。いいもん。私、柚葉が休んでた理由知ってるし!」
「え、何で休んだと思ってるの?」
「それはねぇ〜」
ニヤニヤ顔が似合わないほど愛美は可愛らしい顔をしている。芸能人とかの可愛いとはまた違う、周囲から反発を買いやすい可愛らしい顔だ。
そのニヤニヤ顔を少し眺めてから僕の視線は彼女のスマホへと写った。
……そう言えば愛美も或哉のファンだっけ。
「このドラマに柚葉が出演していたから!」
愛美は嬉しそうに言った。僕は全然嬉しくはないのだが、彼女は僕に反してウキウキとしている。何故そんなに欲しかった玩具を買ってもらった子供のような顔をしているのかは僕には謎だ。
「よく私だってわかったね」
「そりゃあ分かるよ〜。確かに現実の柚葉からは想像しにくい格好だったけれど可愛かったよ!」
「想像しにくいも何もあんな格好したことがないよ」
「勿体ない! 柚葉本当に似合ってるのに! これを機にあぁいう系の服も着ていこうよ!」
「いや、遠慮する」
えーと撫で声で言われても僕の気は変わらない。眉を下げて悲しそうな顔をする彼女はほっといて僕は校舎へと止めていた歩を進める。久々に来た我が校までの道のり。そして我が校の校舎。
桜丘を見慣れすぎたせいか前よりも綺麗になったように感じる。植物も前回来た時とは違ってしまっている。そんなに長くあっちで滞在していたのだと実感した。
ちなみに今日は柚樹が桜丘に通っている。たまにツアーの間にこっちに戻れて学校に通える日があるらしく今日がその日だったのだ。
教室に入るとソウと目が合った。相変わらず茶色っぽい短髪でタレ目に加え二重で女顔(軽蔑ではない)には不釣り合いに感じるいらずらっぽい笑顔は何も変わっていない。
「柚葉、おはよう」
「おはよ」
「お前何してたんだよ。いきなり剣道部やるとか言いやがって。あ、けどお前剣道部辞めてることになってないからよろしくな」
「は?」
「誰が全国レベルのやつをゆうゆうと辞めさせると思うか? 思わないだろ。俺は少なくとも思わない。てことで、先生から相談を受けた俺は『それは一ノ瀬さんの気の迷いの結果なのでほっといでやってください』と言ってやった」
「おいおいおい、意味わかんないし、てかなんでソウに僕の退部を止める権力があるわけ?!」
「それは俺が剣道部の部長だからだろ」
「……正直部長だからと言ってそこまで権力があるとは思えない」
細かいことは気にすんな、とりあえずそういう事だから。彼はそう言ってまた僕に話しかける前に話していた男子と話し始めた。
彼、天宮総一朗は剣道繋がりの小学校からの知り合いだ。最初は大人しめで可愛らしい女の子だと思っていた僕が馬鹿だった。あぁ、認める。僕が馬鹿だったのだ。
「柚葉ー酷いよ、先行くんなんて」
「あのね、誰が友達の告白現場にいたいと思う? 普通いたくないでしょ」
「あ……バレた?」
「愛美が私に挨拶した時から男の子がソワソワしてるなと思ったから。愛美も気づいてたんでしょ?」
「気づいてたけど、柚葉かなーなんて」
「嬉しくもないしありえない勘違いをどうも」
「有り得なくないよ! 柚葉を好きな男子なんて本当はいっぱいいるんだから! ただ柚葉が怖くて告白できないだけらしいけど……」
それは僕を好きだと言えないんじゃないかと言おうと思ったがやめた。そう言えばそういう類の好きがあるのだと愛美に言われたことがあった気がしたからだ。なんだっけ……あ、そうだ。ドSとかドMとかヤンデレとかツンデレ? 今回の場合はドMの方だろうか。___もし居たとしてもそういうヤツらではないことを願おう。
「柚葉ー、おはよー!」
「ひっさしぶりじゃん!」
「元気してたのー?」
「おはよ。あぁ、まぁ元気にしてたよ」
「相変わらず柚葉はそのら辺の男子と違ってカッコイイわ」
「総一朗くんと性別反対だったらよかったのにぃ」
「嘘に聞こえないから辞めとこうか」
僕が正すとクラスメイトの三四人の女子はえーと笑いながら言った。
彼女らの間からソウがこちらを向いているのがわかる。ソウの話しをしていたからだろうか。彼は女の子になって欲しいと言われて嬉しいと思うやつでないことは知ってるつもりだ。反対に彼は男らしくなりたいと幼少の頃から思っていて剣道を始めたらしい。そのわりに幼少期はその愛くるしい顔で何人の大人を騙してきたか……思い出すだけで胸焼けを起こす。今もあまり変わらない気がするが、その笑顔の下に隠れてる思案がなんとなくは分かるようになってからは、面白くなってきたというのはまだ彼にも伝えていない。
ソウと目が合うと彼はすぐ男子の方へと視線を流した。
悪口でも言われたと思ったのだろうか? いや、そんなことを気にするやつではないか。とりあえず後で聞いてみようと心の内で思った。




