31話『それから』
俺は何となく迎えていた小学校生活を終え、中学生になった。
その時の入学式にあった俺と同じ境遇になっていた少年と俺はずっと一緒にいる。
彼にかけた一言は簡単なもので「お前も親来ねぇの?」そんな言葉だった気がする。中学の入学式ならほとんどの親御さんが参加していて参加していないのは俺んとことそこの彼の家族ぐらいだったから一人でいる彼に思わず声をかけた。
彼は一人でいる姿が様になっていたから少し気が引けてたはずなのにボートどこかを見てる姿を見ていたらいつの間にか声をかけていた。
彼も嫌な顔をせず反応してくれて嬉しかったのを覚えている。
一人でいるのを邪魔されて顔に出されるんじゃないかと思ったからだと思う。
それから入学式を終えてから彼から俺に話しかけてくれてそれから俺達はよく一緒にいるようになった。
俺が“桐生晄杜”について詳しく知ったのはもっと先の話だった。
……またか。
俺は最近、キラキラしたようなやつに付きまとわれるようになった。
「櫻井さん!お飲み物をどうぞ!」
「いらん」
「櫻井さん!櫻井さん!」
「うるさい」
「櫻井さん!!」
「静かにしろ!」
こんなやり取りを少なくとも二週間はした。
人に無関心な俺でも疲れる。
あぁ。ほんとにうんざりするほど疲れる。
「櫻井さ……」
「さん呼びをまずやめろ。橋川」
「櫻井さん!!」
「うっとおしい!抱きつくなっ!!」
ピシッ。橋川は餌を持ったご主人様から支持された時の犬のように静止した。
そして、またもや犬のように耳も尻尾を垂れている。
「用はなんだ?」
「櫻井さんにお供したいだけです!」
「だから、さん付けはやめろ。同い年だろ?」
どうもこのキラキラしたヤツは頭が悪いようだ。
そして今も尻尾を元気に振っている。
「いいんですか?!」
橋川は本当に犬のようだ。
今も犬のように目を潤ましている。
「あぁ。敬語もやめろ。てか、そうしてくれ」
「了解!」
どうやら、飲み込みは速いようだ。
「それで?お前がオレにつきまとう理由は何?」
「そ、それは……」
さっきまで元気に振っていた尻尾が急に大人しくなった。
「ちなみに俺はゲイとか興味ないからな?」
「ち、違う!そんなんじゃないです!」
やっぱり、阿呆な犬のようだ。
「冗談だから間に受けるな」
「からかったの?!」
「いや、真面目に聞いた」
そんなしょげんなよ。俺は、橋川の頭をクシャクシャに撫でてみた。
「櫻井。俺は君に感謝してるし、憧れたんだ」
飼い主に頭を撫でられて元気が出たのか、橋川は顔を上げ、俺の瞳を見据える。
「感謝?憧れ??」
身に覚えのない言葉に聞き返してしまう。
「君は俺を助けてくれたから」
二週間前。俺は、こいつを助けた。けど、目的はこいつを助けることじゃなかった。晄杜を助けたらついでにこいつも助かった。そんな感じなんだ。
「違う。俺は、お前を助けてなんかない」
橋川は目元を和らげこう言った。
「けど、結果はそうなんだ。それに櫻井はカッコよかった。俺を助けたのはついででも俺にとっては助けてもらったことになるんだ。だから、ありがとう」
俺は、何も言えなかった。
こいつは知っていたんだ。俺が、説明しなくても。
前言撤回。こいつは、橋川は賢いやつだ。
「それで。お前は俺につき回って何をしたいんだ?」
一泊おいてからはっきりときた声で告げられた。
「俺は、櫻井と一緒にいたい」
橋川は真剣な顔で言ってきたものだからつい笑ってしまった。
特に難しくも珍しい言葉でもない。反対にありふれて在り来りな言葉だ。
それなのに、俺の胸には響いてくる。
「分かった。いいよ」
「ほんと?!ありがとう!!」
橋川は俺の手を握り精一杯の笑顔で「これからよろしくお願いします!」と言ってきた。
どうやら俺は変なヤツらに気に入られるらしい。
久しぶりに晄杜が朝から顔を学校に出してきた。
その顔は死んでいる。
「どうした?」
「社長がモデルを始めろ。って言ってきた」
晄杜は晄杜のお父さんが経営している大手芸能事務所「アスピラシオン」に所属している。
だから、社長のコネで芸能界入りをしただとかくだらない噂が日本中を広めているが、それは晄杜の演技を知らないからだ。
彼の演技を知るものは何も言えず、ただ世界へと導かれる。
「反対に俺は、今までモデルやってなかった方が不思議だと思うけど」
晄杜は容姿端麗だ。若手芸能人の中でもトップくらいの中にいると思う。
サングラスをしてマスクをしてダサい格好をしてもかっこいいやつはどんな格好をしててもかっこよくて街を歩く女性が何人もを彼の方を向いてしまう。
だから俺はこいつと一緒に街中を歩きたくはない。
「なぁ、空我。一緒にモデルやってくれないか?」
予想外の提案に首を傾げ、我に返ってから思いっきり首を左右に振りまくる。
「空我カッコイイし、芸能界に出たら俺より人気出ると思うんだよ」
「いやいや、かっこよくねぇし。てか、そういう問題じゃない」
な!頼むよっ!
右手を両手で包まれ上目遣いで頼んできやがる。
さっきまでの死んでた顔はなんだったんだ。




