21話「あの青年」
晄杜と言う人物は謎だらけですね。((これからです!
昼休みになり、僕達は屋上でお昼を食べることにした。
屋上には綺麗な水色が空いっぱいに広がっていて、僕達三人以外誰もいない。
「それにしても相変わらず晄杜の人気はすごいね。」
橋川がサンドイッチを手にして苦笑しながら言う。
「あいつは何者なんだ?」
晄杜とは今朝人混みの中にいた人物で、なぜか生徒会室で寝ていた人物なのだが僕はあの青年を全くもって知らない。
「…え?」
自分の目の前で昼食を広げている橋川と櫻井が固まったように体を硬直させる。
「ぅん?え?なに?」
二人の反応に疑問を持ち聞いてみる。
僕そんな二人を驚かせるようなこと言ったか?
「柚樹…晄杜を知らないのか?」
櫻井が僕のことを確かめるように見る。
「え?しらないけど?」
その言葉を言った瞬間二人はなぜかわざとらしい溜息を吐く。
「一ノ瀬。ちょっと。」
橋川が僕のことを手で呼び、僕はそれに答える。
「ユキと晄杜は同じ事務所所属なんだよ。」
耳に囁かれた事実に目を丸くする。
「え、えぇー!!?」
そして僕は大声を出していた。
「桐生晄杜は俺達と同い年で、副会長。それは知ってるよな?」
櫻井が僕に確認するように言う。
僕はそれに頷くことしか出来ない。
…柚樹は桐生晄杜のことを知ってるらしいし、今更説明しなくてもわかるだろって櫻井は多分思ってるんだよね。だから僕は余計なことは、あまり挟まないようにした。でも、あの青年が副会長だと言うことを、今始めて知った。だからか櫻井に聴きたくなってしまう。
それでも柚樹が知っていると分かっていても説明してくれる櫻井から優しさを感じて、聞くはなんとなくできなかった。
櫻井って、本当にあの"血の知らない空竜”なのかな?なんか、普段の生活を見ててそんな感じはしないし、櫻井の優しさが分かってくるだけなんだけどな…。空を見ながら呆然と思い当たることを考える。
口数は少ない方だし、無表情で何考えてるのかよくわからないけど、確実に柚樹よりは優しいよ。
「おーい、一ノ瀬?」
櫻井のことを考えてた僕を現実に戻すように橋川が呼ぶ。
「ご、ごめん。」
橋川達に視線を戻してから櫻井が僕に説明していたのに上の空になっていたことを謝る。
「それにしても晄杜を知らない人っているんだね。彼結構有名人だよ?ドラマには引っ張りだこだし、モデルやってるし、それに……」
「それに……?」
「櫻井に並ぶ実力派剣士だしね。」
「は?」
橋川から予想外の言葉が出て間抜けた声が出る。
「桐生が一年の頃三年で一番の強いとされていた先輩を一瞬で倒したって噂が流れているんだ。」
櫻井がさらりと言ってのける。
「そうそう。あくまで噂だけどね。それにこのことは桜丘高校の生徒しか知らないけどね。確か去年の桜闘の時だから…ちょうど一年前かな。」
「じゃあなんでそいつは受賞してないんだ?」
「うーん、なんか二回戦前に仕事の話がきて早退したらしいよ。」
「結局桐生の戦いを見たのはその三年の先輩だけで誰もあいつの実力は知らない。少なくとも“今のあいつ”のは。」
櫻井の言い方に少し気になることがあった。今のあいつ。と彼は言った。と言うことは前の…昔の彼のことを知っているのだろうか。
それに、芸能活動しているような人が商売道具の顔を傷つけるようなことを平気でするのだろうか。(柚樹は馬鹿だから良いとして。)
それとも、それほどのことを心配する必要も無いぐらいに桐生晄杜と言う人物は実力を持っているのだろうか。
喧嘩なのか、僕や柚樹みたいな武道家は分からないが…そうだとすれば只者では無いかもしれない。マイペースでよくわからない人だと思っていたけど要注意するべき人物かもしれない。
「…ねぇ、櫻井。晄杜ってさ変わってはないんだよね。」
「…あぁ。」
橋川の独り言のような呟きに櫻井は小さく答える。
僕はそんな二人の会話をさりげなく聞いていた。
変わった?櫻井だけではなく橋川も知っているのだろうか。桐生晄杜を。
確か二人は中学時代一緒に喧嘩をした仲だと言っていた。もしかしたら、あの青年も…この二人と一緒に喧嘩をしていたのかもしれない。
あの青年は櫻井の“血を知らない空竜”と言う異名に何か関係しているのかもしれない。
直接じゃなくても…間接的には。
僕はそう思って二人に聞いて見た。
「二人は彼と高校前から知り合いなの?」
二人は顔を見合わせてから僕に視線を向け、二人同時に…それも静かに、小さく頷いた。




