20話「置き忘れ」
「雰囲気が似てるね。」
青年はそれだけを言うと校舎の方へ歩き出す。
僕は後ろを振り返り青年を呼び止めた。
「貴方は誰ですか?」
青年は歩きを止め、後ろを振り返り優しい笑顔を僕に向ける。それはまるで「よろしく」と言っているかのようだった。
…僕の問いに答えてくれてはいないのだが!?
青年は笑顔を僕に向けるとまた、校舎の方へ歩き出してしまう。
その立ち振る舞いに思わず目を奪われ、ボッーと彼の後ろ姿を見ていると福田がその青年に話しかけている光景が目に映り、自分が青年のペースを乗ってしまったことがやっとわかり、佇むことから抜け出し、歩き出すことができた。
僕は、校舎に入りそのまま教室に行こうかと考えたが、自分のバックが生徒会室にあることを思い出し、急ぎ足で生徒会室へ向かった。
歩いている廊下の先に明かりがついたままの生徒会室が見えた。
「電気付けっぱなしだったか…」
ドアを開け、部屋をみるとやはり電気は付けたまんま。
「失敗、失敗」
と軽口を叩いてみても何と無く罪悪感が残っている。
これから気をつければいいだけなのだが、どうやら僕の性格からはそれだけを考えることはできなかった。
鞄を取りに机に向かうと部屋の隅にあるソファの所に人影がある。
鞄をとってからソファの所へ向かうとそこには、先程まで集団の中心になっていた青年が気持ち良さそうに寝ていた。
その寝顔に起こすのを躊躇わされ、起こそうか迷うが、時計の針を確認しえからもう一度青年を顔をみて決断する。
SHRまで時間が無いし起こしてしまおう!
そう思って僕は、青年の肩を軽く揺らしてみる。
「あのっ」
肩を軽く揺らし、声をかけて見ても青年は起こす気配を見せない。
もう一度、肩をゆらし声がけをして見ても反応がないため、違う方法で起こすことを決める。
彼の耳に顔を近づけ、大声を出そうと思った瞬間。
「寝てた…」
青年はゆったりと起き上がる。
眠たそうに目をこすっている姿に時間のことを忘れさせられる。
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
予鈴のチャイムがなったことでようやく目を覚まし、彼に話しかけた。
「SHRが始まってしまいます。」
かがんでいた状態から立ち上がり彼を見下ろす。
「…いかなきゃだね。ありがとう」
彼はそう言ってゆっくりとソファから離れ、歩き出した。
…悪い人ではなさそう、だな。
彼が生徒会室を出るのを確認し、急いで部屋の電気を消し教室へ向かった。
遅刻とかあり得ないから!!
その気持ちから僕の足はほぼ走っている状態になっていた。
ギリギリチャイムがなる前に席につき、ぐだぁと机に向かって上半身が倒れこむ。
「疲れたー」
「お疲れ。」
隣に座っていた橋川が僕の様子を見てか、挨拶の言葉の代わりに言ってきた。
「サンキュ」
それだけを言うと僕は正しい姿勢に戻した。
「これからSHRを始める。」
チャイムがなったあとに先生が教室に入ってきて一言目にそれを言う。
それを合図にしたのか、生徒達は寝る態勢に入る。そのことを怒る気もせずに僕はただ一つことを考えていた。
…なんであの青年は生徒会室にいたんだ?
周りの生徒や先生のことをすっかりと忘れ、それだけが僕の頭の中を支配していた。
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