19話「集団の中心」
“ガラッ”
「失礼します。」
生徒会室に挨拶をし、数秒経ってから欠伸をする。
「…おはよう。」
生徒会室のドアをゆったりと閉め、いるだろうメンバーに挨拶をする。
けれど、挨拶は返って来なく、あたりを見渡すと誰一人としてこの部屋にいなかった。
「今日打ち合わせ無かったか?」
黒板に書いてある予定表を見に行く。
そのこには、今日の日付が書かれており、“朝会議”。とまで書かれていた。
なのに、僕以外誰も集まってないとかどう考えてもおかしいだろ。
大きく肩を落として、椅子に座る。
他のメンバーを待つことにした。
…______遅い。あいつらなにやってるんだ?
時刻を確認するため時計をみる。
会議予定時刻から三十分が過ぎていた。
全員休みか?
そろそろ、ただ座って待ってるのも嫌になり、勉強道具を鞄から探っていと”ガラッ“と勢い良くドアが開いた。
「おそ…」
「大変です!」
僕が「遅い!」という前に福田が慌てた様子で言ってきた。
その様子を見て何かあったんだろうと判断し、福田に近づく。
「何かあったのか?」
「それが…」
福田の息が少し荒い。
廊下を走ってきたのだろうか。本当は廊下を走るな。と言いたいとろこだが、事業を聴いてから言うか決めることにしよう。
「副会長が…!」
副会長…?その名前を頭の中で繰り返す。
昨日、聴いた言葉を思い出した。
『生徒会のことは副会長に聞け。』
柚樹が言った言葉。
彼は、その副会長は今まで学校に登校していなかったのだろうか。
じゃあなぜ、そんなやつが副会長になるんだ?
「会長?」
福田が考え事をしている僕に気づき、反応を確かめる。
「悪りぃ。で…副会長がどうしたんだ?」
柚樹に副会長の名前を聴くことを忘れていたことに今気づく。柚樹が副会長を名乗る人物をなんて呼んでいたのか、さっぱりわからない。
「会長、聴いてないんですか?帰ってきたんですよ!パリから!」
「はぁ?」
思わず本音がこぼれてしまい、急いで口を手で覆う。
「え?」
「何でもない。」
覆っていた口を解放し、短い言葉で平然を保とうとした。
パリ留学でもしてたのか?その副会長は。
じゃあなぜ、そんなやつが副会長なんだ。会長をやればいいじゃないか。それにパリ留学をするほどこの学校はお洒落と言うか…贅沢ができたのか?ならばその前に校舎をなんとかしてくれ。
パリ留学と言う単語に悩みながらも今、一番の方法を思いつく。
とにかく、会ってみよう。でなければよくわからないままだ。
と言うことで僕は、副会長に会いに行くために福田に案内をしてもらった。
「あの、人ごみの中にいるのが副会長…です。」
「人混み…?」
靴を履き替え、玄関先に出て真っ直ぐ前を見ると、この敷地内にはいないはずの人達が校門周辺で密集している。
その後ろには桜丘生徒達が押し出された様で、敷地外に追い出される感じになっていた。
「どうなってるんだ?」
僕がその状況に困惑を通り越し、唖然としていると、福田が困り口調で言った。
「これから前みたいに…それ以上に大変になりますね。」
そして大きな溜息をつき、肩を落とした。
「大変…?」
彼の声は耳に届かなかったのか、福田は困り顔で校門周辺に集まる人混みを見ていた。
前みたいに?それ以上に?それは昨日までの学校のことだろうか。それとも柚樹が1年くらい前のことだろうか。
そのことを聴こうとして福田の顔を見てみると、とても困り果てていた表情をしていて、質問をすることを躊躇い、声をかけることをやめた代わりに僕は騒がしい校門周辺に視線を変えた。
「キャー!」
「晄杜くーん!!」
「こっち向いてー!」
「笑ってー!」
「「キャー!!」」
校門周辺から黄色い声が飛んでくる。
なにを言っているのか分からないくらい、彼方此方と黄色い声が飛び交う。
「桐生さんが帰ってくると毎回、近所の女性方や他校の生徒が校門前に集まって…校舎に入るのも精一杯になるんですよね。」
はぁ。
福田がまた大きな溜息を吐く。
校門周辺に集まっているのは…桜丘高校の生徒ではない女性方、他校の女子生徒、あと数名の男子達。
何のために集まってきたのか、数十名の人達が校門周辺を囲ってしまい、本校の生徒が敷地内に入って来れないと言う状況になっている。
「仕方ない…」
一息吐いて、校門に近寄る。
人混みなどに入りたくはないが、この状況を変えなければ遅刻もせずに来た生徒達が校舎に入れないままだ。
「会長!?」
背後から僕を呼ぶ福田の声が聞こえた。
「すみませ…」
人混みに入り、中心人物を探し出そうとしてあたりを見渡していると、裕福そうな…福谷かな体型をしたおばちゃんが僕の近くにくる。
「どけて!邪魔よっ!」
そして軽々と僕のことを突き飛ばす。
“ ドンッ”
校庭に尻餅を着く。
「いててて…」
腰をさすりながらさっきの叔母ちゃんをみる。
向こうは謝る気もせずに、平喘と中心人物がいるだろうあたりに暑い視線を送っている。
この、デブが…!!
おばちゃんの事を思いっきり睨みつけ、今度は四つん馬になって人ごみの中に入った。
手は踏まれるわ、足は蹴られるわで、僕の怒りの矛先がこの集団の原因となっている誰かも分からない人物に向く。
制服、泥だらけだろうな…。
そんなことをふと思っていると周りがさらに騒がしくなる。
「すみません…。少し良いですか?」
青年らしき声が微かに人混みの中から聞こえてきた。
その声が聞こえたと同時に人達が道を作るように二つに別れ、僕だけが取り残される状態となる。
これ…僕もどちらかによった方がいい感じ?
左右見なくとも他校生の女子達が僕のことを睨みつけてるような視線を感じる。
僕は四つん馬の状態から立とうとする。
すると左右の人達がまた、黄色い声をあげた。
何なんだよ。さっきから。
その声に聞き飽きて疲れが溜まるのを覚えながら、服についただろう砂を落とし、前を向いた。
そこには背が高くスラリとした美青年が僕の前に立っていた。
「大丈夫?」
彼の姿からは想像が出来ない声がけをされ、戸惑ってしまう。
青年は僕の顔を覗き込むように腰を屈め、目が合う。
「君は…」
青年が何かを言おうとした時、また黄色い声が僕の耳に飛ぶ。
「ねぇ!あれってもしかして或哉のユキじゃない!?」
「えっ!?あっ!確かに!!え?ユキもこの学校だったの!?」
或哉、ユキ。
その二つの単語を聴き、すぐさま逃げたくなる。
やばい!バレる!!!
そう思って思いっきり俯くと青年が本当に小さな声で、まるで僕だけに聞こえる声で言った。
「大丈夫。ばれない。」
青年が屈むのをやめ、僕から離れて周囲の人たち全員に届くような声をあげる。
「ねぇ、皆。悪いけど、今日はここら辺で終わりにしてくれないかな?」
さっきまで僕の耳に届いていた青年の声とは違く、とてもハキハキしてるような、凛々しいような声が聞こえてくる。
「「えー」」
青年の言葉に対しての批判の声が聞こえてくる。
「皆には悪い人になって欲しくないんだ。君たちは今、この学校の生徒達の登校の邪魔をしてしまっている。普段の君たちならしないだろ?俺は普段の君たちが見たいから。…ダメかな?」
最後の声はとても涙グルンでるように聞こえた。俯いたかままで顔は見ていないけれど、可愛い子犬が主人におねだりをしているかのような…そんな口調。
「そう言うことなら…ねぇ。」
一人の少女の声が聞こえる。それに続け様々な人達の声が聞こえてきた。
「しっ、仕方ないよね。」
「うん。そうだよね。私達らしくしなきゃ!」
などと言って女子たちは帰ろうとする。
「ありがとう。いつも俺を応援してくれてありがとう。」
「「…!!」」
青年は微笑んだのだろう。女子達の声にならない赤面顔が、見ていなくてもわかりその状況を説明してくれた、
「じゃあね!晄杜くん!」
そう言って、僕達を(晄杜と言う人を主に)囲っていた集団は一気に消え、学校の敷地内に入ってくる生徒を除けば、僕と晄杜と言う青年だけが取り残される感じになった。
それを気配で確認し、やっと前をみる。
一呼吸をしようと胸に手を当てようとしたら、先程まで集団の中心になっていた人物が僕の近くにいた。
「君は、柚樹の妹…だよね?」
いきなり見破られた自分の正体をどう隠そうか迷っている余裕もなく、目の前に立つ青年を見つめてしまう。
青年は優しく微笑んみ、続けてこれだけを言った。
またまた新キャラ登場でしたね。この物語はあと何人の人物が出てくるのでしょうか←←




