膝枕と謎の少女
「それたら怜奈ちゃんがね!」
「お前ほんと良く飽きねえな、、」
今日も今日とて綿谷に話しかける青嶋である。今日こそはフルシカトしてやろうと思っていたのだが、こんなにも無視しているのに構わず喋りかけてくるため、思わず言葉を発してしまった。
「飽きないよ!青嶋くんと話すの楽しいもん!」
「俺は話してねえよ、一方的に聞かされてるだけだ」
青嶋は一言も喋っていないため、会話は成立していないはずである。
「喋ってくれてもいいんだよ〜?その方が私も嬉しい!」
「いや知らんがな、別のやつに話にいけ」
「む〜けち〜」
「まだ寛容してる方なんだけどな」
一切として他人と関わりたくない青嶋にとって、他人の話を聞いているだけまだ許容してる方である。そこから更に自分から話すようになるなど夢のまた夢の話だ。
「一応もっかい聞くけど、なんで俺に話しかけに来るんだ?メリットもないし楽しくもないだろ」
過去にも何度か聞いているがやはり腑に落ちない。なぜ自分にそんなに話しかけにくるのか。
「ん〜、、気になるからかな!あと結構青嶋くんと話すの楽しいよ!」
「気になるって、、俺と絡んでも特になんも出ねえよ?」
「別に出なくてもいいよ〜!話してるだけで十分!」
「あっそ、じゃあもう勝手にしてくれ」
キラキラと目を輝かせる綿谷に呆れる青嶋である。
「勝手にかあ〜、、ん〜そりゃ!」
「は?」
綿谷は数秒考えたあと、青嶋の方に飛び込んできた。そしてベンチに横になり青嶋の太ももに頭を乗せ、なんと膝枕を始めた。
「風が気持ちい〜」
「いや勝手すぎだろ」
確かに勝手にしろと言った青嶋であるが、さすがに勝手すぎる綿谷に驚く青嶋である。
「かいてき〜、、、ねむたくなってきた、、」
眠気が来始めた綿谷は、気力のない声を上げ始めた。
「うわ、なんかすげえ髪の毛もふもふだなお前」
青嶋は、自分の太ももの上で風になびいている綿谷の髪の毛を少しだけ触った。
「あ!触った〜!ダメなんだよ女の子の髪の毛気軽に触ったら!」
「知らねえよそんなの、まず膝枕されに来てるのお前だろ」
プンスカと怒る綿谷に全く動じず言葉を返す青嶋である。
「もう少しドキドキしてくれてもいいのに〜、、」
「あ?なんか言ったか?風の音で聞こえなかったんだけど」
「なんでもな〜い」
そう言って綿谷は青嶋の膝の上で目をつぶり始めた。
「昼休み終わったら起こして〜、、」
「いや起きろや!人の太ももの上で寝んな!」
そのまま爆睡してしまいそうな勢いの綿谷に、呆れと怒りが同時に込み上げてくる青嶋である。
「ZZZ、、、、」
「いや俺この間なんもできねえじゃねえか!」
手も足も動かせる状況じゃない青嶋は、綿谷が寝ている間何もすることができないのである。
「とっとと教室戻りてえのに、、」
このままどかして強引に戻ることもできるが、寝ている綿谷の顔を見ると何故かその行動に出ることは選択肢にすら出てこなかった。
「怜奈ちゃん、、、それはティラノサウルスじゃないよ、、、」
「いやどんな夢だよ」
寝言でよくわからないことを言う綿谷に困惑する青嶋である。
「てかよく話題に出てくるけど怜奈って誰だよ全く知らねえぞ俺」
綿谷が話をする時こぞって出てくる謎の少女だが、未だに誰か全くわかっていない。
「妹か?でも学校での話をしてたしな、、」
綿谷の話は学校での話がほとんどだ。学校に姉妹がいる可能性があるが、友達の可能性が高いであろう。
「てかなんで俺はこいつの友達のことなんか気になってんだ?」
元々綿谷とすらも絡みたくないのに、何故か綿谷の友達のことを考えてしまった青嶋である。
「ちっ、、しょうがねえとっとと起こして戻るか、、」
正気に戻った青嶋は綿谷を叩き起こそうとした。
「あ、あんたたち何してるの!?」
「あ?誰だ?」
起こそうとした瞬間、突如小柄の女の子が現れ大声をあげていた。
「あんた、、もしかしてセクハラ野郎でしょ!!」
「てめえこの状況みてどうやってその思考になんだよ」
女子にバレずに膝枕をするというセクハラはまるで聞いたことがない。起こさないで膝に頭を乗せるなんて針に糸を通すほど難しいセクハラである。
「ほら穂乃花!こんな男から離れて!」
「ん〜、、、怜奈ちゃん、、、」
「ん?怜奈?」
綿谷は聞き覚えのある名前をその少女に放った。
「なにあんた、、私のこと知ってるの?ストーカー??」
「だからなんでそうなるんだよ」
話が先行している少女に若干イライラする青嶋である。
「どうしたの怜奈ちゃんこんな所に〜」
「ここ最近昼休みいないと思ったらこんな所にいたのね?ほら早く戻るよ!」
「やだ〜〜!もっと青嶋くんとお話したい〜!」
綿谷を引っ張る少女だが、抵抗してピクリとも動かない綿谷である。
「あんた、、穂乃花に何したのよ!危ない催眠術とかかけてないでしょうね!」
「かけてねえよ俺何者なんだよ」
先程からあらぬ疑いをかけまくられ、ため息が止まらない青嶋である。
「はあ、、俺もう行くから。あとそこのもふもふの髪のやつ、めんどくせえからもう来んな」
青嶋は全てがめんどくさくなり、綿谷に指を指して睨みつけ、拒絶した。
「やだ」
「は?」
「やだ!!もっと青嶋くんと仲良くなりたいもん!うわああん!!」
「声でけえって!!泣くな泣くな!!」
綿谷は校庭に響くほどの声で泣き始めた。
「最低!女の子泣かせるなんて!」
「お前はどっか行って欲しいのかここにいて欲しいのかどっちかにしろ!」
「私は穂乃花の意見を尊重するだけよ」
「なんなんだお前はほんとに、、」
意見がコロコロと変わる少女に呆れる青嶋である。
そしてしばらくして、何とか綿谷を説得して泣き止ませることに成功した青嶋である。
「ここにいてもいいの、、?ほんとに、、?嘘じゃない、、?」
「いいから泣くのだけはやめてくれ、、ほんとにめんどくせえから、、」
「やった〜!」
女の子を泣かせ悪者になるのは100%自分になるため、泣かせるのだけは回避したい青嶋である。
「ごめんなさい、私の勘違いだったようね」
「ああもういいよわざわざ謝んなくて」
またガミガミ何か言われるかと思ったが、意外にもすんなりと謝罪をしてきた少女である。
「私は古谷怜奈よ。風紀委員長をやっているの」
「まあなんでもいいけどめんどくせえから早くどっか行ってくんねえか?出来ればこいつも連れて」
何故かまた青嶋の太ももに頭を乗せ、膝枕をしている綿谷である。
「穂乃花は強情だから無理ね、諦めなさい」
「諦めきれるかよ」
青嶋の提案をあっさりと断った古谷である。
「あんた、どうやって穂乃花とこんなに仲良くなったの?」
「知らねえよ、勝手にこいつが引っ付いてくんだよ」
正直そこまで好かれるようなことはした覚えがない。せいぜい男に絡まれていたのを助けたくらいだが、そんなので仲良くなろうとは普通思わないだろう。
「珍しいわね、、穂乃花が男と、、」
「あ?なんか言った?」
「なんでもないわ」
「トリケラトプスの天ぷら、、、」
「なんかすごい夢見てないか?」
古谷と青嶋が話している一方、爆睡している綿谷である。
「まあいいわ。私もう戻るから」
「いやちょっと待てこいつをどうにか、、」
そう言い放った頃には古谷は足早にその場を立ち去っていった。




