無防備
「なんか暑い、、うーん、、、、朝、、、?」
気づいたら深い眠りについていた青嶋は、異常な暑さに目を覚ました。
「あー、、、?夏なのに、、なんでこんな毛布被ってるんだ、、?」
その暑さの原因として、青嶋は寝る時に大きな毛布を被っていたようだ。その毛布を「引き剥がそう」としたが、違和感を感じた。
「んー、、、なんか、、、重い、、?」
「う〜ん、、ちょっと〜重いは失礼じゃな〜い、、?」
「、、、、、は!?!?」
その瞬間青嶋の目は一気に冴え始めた。
「な、なんでお前俺の布団にいるんだよ!!」
青嶋にくっついていた布団はなんと綿谷であった。
「青嶋くんが寝ちゃったからちゃんと布団に入れてあげたんだよ〜?」
「だからってなんでお前もここで寝てんだよ!別の場所で寝ろよ!」
「だって場所聞く前に青嶋くん寝ちゃったんだも〜ん」
「だからって、、、てか起こして聞けばいいだろうが」
「青嶋くんの可愛い寝顔眺めてたらなんか起こしずらくって〜」
「人の寝顔勝手に眺めんな!」
暑いからなのか恥ずかしいからなのか、綿谷に寝顔を眺められていたことを知ると顔が赤くなる青嶋である。
「だって〜離れようとしたら青嶋くんが離してくれなかったんだも〜ん」
「んなわけねえだろ、変な嘘つくな」
「え〜」
日頃の行いのせいか、綿谷の言うことは1ミリも信じていない青嶋である。
「見て〜朝ごはん作ってみたよ〜」
「お、ありがと、、、、ん、、?それじゃあ1回布団から離れてねえか??」
「違うよ〜1回離れて朝ごはん作ってもっかい戻ってきたんだよ〜」
「わざわざ戻ってくんな!!」
平気な顔でおかしいことを言う綿谷に困惑と怒りが芽生えてくる青嶋である。
「ったく、、、まあ朝ごはんはありがたくいただくけど、、、」
「どうぞ〜」
朝から色々とバタバタしていて気疲れした青嶋は、綿谷の朝ごはんで一息つくことにした。
「いただきます、、、まあ、、、お前が作ってるんだからそりゃ美味いか」
「ありがと〜」
綿谷が料理が得意なことを知っている青嶋は、疑う余地もなく丸の判定を出した。
「それにしても、俺の寝顔なんて眺めて何がそんなおもしれえんだよ、時間の無駄だろ」
「え〜?青嶋くんの無防備な姿を独り占めできるなんてそんな機会なかなかないよ〜?」
「勝手に人の無防備な姿見んな、てか俺の無防備な姿見て一体何になんだよ」
ニコニコしながらそう話す綿谷に、少し困惑が混じり始める青嶋である。
「ん〜普段警戒心が強いワンちゃんが無防備な姿見せてたらとっても可愛いよ〜?」
「俺は犬じゃねえんだよ」
綿谷に犬扱いされた青嶋は、かなり不服そうにガオガオと吠えていた。
「じゃあお詫びに今度私の寝顔沢山見ていいよ〜?」
「てめえの寝顔なんて意味わからん膝枕のせいで眺め飽きたわ」
「そ、そんなに眺めてたの〜!?」
「そりゃあの時にやることなんておめえの顔を眺めるか髪の毛で遊ぶぐらいしかやることねえよ」
「恥ずかしいから眺めないでよ〜!」
「いやお前のせいだろ」
今までずっと寝顔を眺められていたことを知り、その恥ずかしさで顔が赤くなる綿谷である。
「はあ、、、ご馳走様」
「わ〜食べるの早いね〜」
「お前は食事中にごちゃごちゃ喋りすぎなんだよ」
そう言いながら青嶋は食器を持ち台所に向かった。
「てか、食い終わったらとっとと帰れよ?俺今日バイトあるし」
「私もあるよ〜一緒に行こうよ〜」
「馬鹿か、一緒に行ったら変に勘付かれたりするだろ」
青嶋母は鋭いため、「え!?なんで一緒に来てるの!?もしかして私がいないうちにお泊まり!?」などの憶測をされてもおかしくないのである。それがめんどくさい青嶋は綿谷と一緒に行くことを拒否した。
「大丈夫だよ〜ここに来る前に青嶋くんのお母さんからお泊まりする許可は貰ってるし〜」
「え、、、?は!?!?」
青嶋は衝撃の事実に驚きを隠せなかった。
「ほんとは青嶋くんのお母さんもいる予定だったから許可貰えたんだけどね〜、でも私も雨で帰れないですって相談したらOK貰えたんだ〜」
「うん、全然理解ができん」
綿谷に説明をされたが、何も理解ができずに頭を抱える青嶋である。
「だから大丈夫だよ〜一緒にバイト行こ〜」
「何も大丈夫じゃねえしそれでもどっちにしろ一緒に行かねえ」
「私が勝手について行くから大丈夫だよ〜」
「だから何も大丈夫じゃねえんだってさっきから」
先程からの綿谷の言葉にやはり悩まされる青嶋である。そんなやり取りをしながら、バイトの時間になったので、結局2人は一緒にバイトに向かうことにした。
「ったく、、、お前ただでさえ目立つからあんま外一緒に出たくねえんだけど」
「え〜そんなに目立つ格好してないよ〜?」
「あのな、パン屋で着るエプロンを家から来てくるやつなんて存在しねえんだよ」
「あれ〜そうなの〜?」
家を出た時に青嶋は綿谷の姿に唖然としていた。しかしもう諦めて何も気にしないことにした。
「ったく、、、今日俺はキッチンの方に回る予定だから、接客の方ちゃんとやってくれよな?」
「え〜私もキッチンがいい〜」
「んじゃあ、、まあ俺と交代でもいいが」
「それじゃダメだよ〜青嶋くんと一緒じゃないと意味ないもん〜」
「おめえは何しにバイトに来てんだよ」
そんなこんなでバイト先のパン屋に着いた2人は、早速青嶋母とご対面した。
「あらー!2人で来ちゃったりしてー!」
「ぶっ飛ばすぞ」
青嶋母のニヤニヤした視線を、とてつもなく嫌そうな顔で睨み返す青嶋である。
「まあまあ仲良いのはいいことじゃない!それとあんた今日も売り場の方行ってていいわよ」
「は?なんで?俺今日キッチンって言われたんだけど」
「実はまた1人新しくバイトの子が入ったのよーだからその子に一旦キッチン作業教えるの」
「ったく、、、まあ別にいいけど、、んで新しいバイトの子ってのは?」
「こんちはっす!今日からバイトとして入った星藍羅っす!よろしくっす!」
「なんかまたキャラ濃そうなやつ来たんだけど」
現れたのは髪の毛が金髪のギャルっぽい女の子だった。これはまた大変なことになりそうだと悟った青嶋は、死んだような顔をしていた。
「あれ〜?あいらちゃんだ〜」
「えー!ほのちゃんじゃん!」
「え?知り合い?」
青嶋は全く知らない人であるが、どうやらこっちの2人は面識があるようだ。
「え〜?同じクラスのあいらちゃんだよ〜?」
「え?だれ?」
「え!?青嶋くん!?ここでバイトしてたの!?」
「俺のこと知ってんの?」
どうやら相手は青嶋のことを知っているらしいが、青嶋は全くわからなかった。
「そりゃクラスメイトぐらいわかるよ!逆に知られてなくてショックなんだけど!」
「すまん、興味がねえもんで」
「ひどい!でも初めて青嶋くんと話せて嬉しい!」
その喜びを表現するように、星はキラキラしたような目で青嶋を見ていた。
「でもなんでほのちゃんもここでバイトしてるの?たまたま?」
「ああ、バイトを募集してたらたまったまこいつが来ただけだ」
「実は青嶋くんと仲良しなんだ〜」
「ちげえよ」
「そうなんだ!確かにさっき仲良さそうに2人で来てたもんね!」
「だから仲良くねえよ」
「え〜そんなに仲良さそうに見えた〜?なんか恥ずかしいけど嬉しいかも〜」
「母さん俺帰っていい?」
「ダメに決まってるでしょ」
「くそが」
ただでさえ綿谷のことでいっぱいいっぱいであったこのバイトであるが、更に星も増えてキャパオーバーになってしまい、バイトが終わる頃にはシナシナに干からびそうになった青嶋であった。




