最初と今
「お風呂入っていい〜?」
「まあ、、、さすがに入らせない訳にはいかねえしな、、」
青嶋の家に泊まることになった綿谷は、ウキウキの顔をしながらお風呂へと向かっていった。
「くそ、、雨も一向に止む気配がないし、、」
雨は止むどころか強くなっていく一方で、帰らせるという選択肢も完全になくなってしまった。
「どうしたもんか、、」
「青嶋く〜ん大変だ〜はやくきて〜」
「な、なんだ?」
そう考えていると既に風呂に入っている綿谷の方から声が聞こえてきた。
「てか、、これ俺脱衣所入っていいのか、、?」
この先には風呂に入っている綿谷がいるのだ。幾ら何も気にしない青嶋といえどさすがに躊躇が勝ってしまう。
「は、入るぞー」
「あ、ちょっとまって」
「ちょ、お前!なんで出てきてんだよ!!」
脱衣所のドアを開けると、タオルを巻いてカバンの中を探している綿谷がいた。
「ご、ごめんね〜シャンプー切れちゃったんだけど替えのものがないかな〜って」
さすがの綿谷も恥ずかしそうに青嶋に対して弁明していた。
「なんでもいいからとっとと入ってくれ、、」
「一緒に入る〜?」
「この雨の中に放り出すぞ」
結局その後は何事もないまま綿谷のお風呂タイムは終わった。だが、問題はここからである。
「青嶋くんどうぞ〜」
「俺は入らん」
「ダメだよ〜汚いよ〜」
「うるさい」
いくら青嶋といえど、女の子が入ったあとのお風呂に軽々と入るのはかなり抵抗がある。
「仕方ねえ、、お湯変えるか、、」
「あ〜なんかちょっと失礼じゃな〜い?」
「別にお前を汚ねえって言ってるわけじゃねえよ」
少しお湯が勿体なくはあるが、気兼ねなくお風呂に入りたい青嶋は、綿谷の入った湯船のお湯を張り替えてお風呂に入った。
「なんか、嗅いだことねえくらいいい匂いすんだけど」
お湯を張り替えたとはいえ、綿谷の使ったシャンプーなどの匂いは残っており、ものすごく気になってしまう青嶋である。
「青嶋く〜ん」
「おい!脱衣所勝手に入ってくんな!」
くつろいでいると何事もないかのように脱衣所まで入り込んできた綿谷である。
「髪留めかなんかない〜?」
「俺がそんなの知るわけねえだろ」
「ここら辺にないのかな〜」
「母さんのところ探せばあるとは思うけど、、てか早く脱衣所から出てけよ!」
「え〜」
「後で持ってくからリビングで待ってろ」
「は〜い」
「ったく、、」
綿谷と一緒にいると一時も気を抜けない青嶋である。
「ほら、これでいいか?」
「わ〜ありがと〜」
無事にお風呂から上がった青嶋は、綿谷が欲していた髪留めを持ってきていた。
「ん、お願い〜」
「いや、自分でやれよそれは」
「む〜けち〜」
「いやてか付け方わかんねえよ」
「適当でいいよ〜」
「はあ、、早く寝たいんだけど俺、、」
「お願い〜」
「しょうがねえな、、」
もちろん髪留めなんて使ったことすらもない青嶋は、綿谷の後ろに回って言う通りに適当に付け始めた。
「お前の髪の毛ってこれ地毛なの?パーマとかかけてねえの?ふわふわすぎんだけど」
「地毛だよ〜両親どっちとも天然パーマだから多分遺伝なんだよね〜」
「んじゃ両親も雰囲気ふわふわなのか?」
「?」
「あ、いやなんでもない」
どうやら綿谷は自分の雰囲気がふわふわしていると気づいていないらしく、これが本当の天然なんだなと思った青嶋である。
「んまあでもお前の見た目だったらストレートよりこっちの方が似合ってるよな」
「そ、そう〜?」
「雰囲気にマッチしてるし、こんなに天パが似合ってる人ってあんまいねえぞ」
「あ、青嶋くん?」
「ん?どうした?なんか耳赤いけど、もしかして暑いか?」
急に少し様子がおかしくなった綿谷を心配する青嶋である。
「いやあ〜その〜、、髪の毛ぐちゃぐちゃなんだけど、、」
「だから言っただろうが、つけたことねえんだって」
「じゃあ私でもっと練習していいよ〜」
「もう、、眠いって、、、」
「わかった〜じゃああとは自分で、、!?!?」
「うーん、、、」
眠気の限界が来たのか、青嶋は綿谷の肩に顔を乗せ、後ろからもたれかかってきた。
「ごめんね〜意地悪しちゃって、でも今日は沢山構ってもらえたな〜」
綿谷はそのままもたれかかってくる青嶋
の顔をじっと眺めていた。
「青嶋くんって眠いとちょっと柔らかくなるのかな」
綿谷の感覚的に、青嶋は眠いと警戒心が薄まるのか、少し対応が柔らかくなっている気がするのだ。
「あー、、、、エビチリー、、、」
「夢でもエビチリ食べてるんだ〜」
無防備な青嶋の寝言に、ほっこりとしてしまう綿谷である。
「、、、、、、」
「こ、これもしかして起きるまでずっとこのまま、、?」
軽く30分程経過して、その間ずっと青嶋を眺めていた綿谷であるが、青嶋は一切起きる素振りを見せていなかった。
「とりあえずお布団まで持っていかなくちゃ、、!」
綿谷は時折見せる謎のパワーで青嶋を持ち上げ、何とか布団まで持っていくことに成功した。
「さすがにそろそろ私も寝なきゃ〜、でもどこで寝たらいいのかな、、」
現状布団は青嶋の部屋にしか敷かれておらず、どこで寝るかを迷っている綿谷である。
「リビングに行けば何かあるかな〜」
そう思い綿谷は立ち上がろうとした。
「うーん、、、」
「え〜!ちょっと〜!」
立ち上がろうとした瞬間に、青嶋に手を掴まれ身動きが取れなくなってしまった。
「も〜寂しがり屋さんだな〜」
そう言いつつもかなり嬉しそうにもう一度布団の方に戻る綿谷である。
「最初の方に比べたらだいぶ仲良くなれたかな〜」
初めて会った頃はとてもクラスメイトとは思えないほどの対応を取られていたが、今はかなり受け入れてくれていると感じている綿谷である。
「ん〜、、まだ離してくれないな〜、、私も眠いのに〜、、」
布団の中に入っていることで身体も暖かくなってきて、どんどん眠気に襲われ始める綿谷である。
「、、、、、私は悪くないも〜ん」
青嶋がどうしても離してくれないので、綿谷は「仕方なく」そのまま青嶋が寝ている布団で一晩眠りにつくこととなった。




